がんばれ!!小さき生命(いのち)たちよ

9年間ありがとうございました。2019/8/31に https://nicu25.blog.fc2.com/ に移行しました。

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このブログにもたびたび登場してもらっている
現在、森臨太郎先生(国立成育医療研究センター成育政策科学研究部長)
の出版した本の感想を書かせて頂きます。

森先生と友人という部分を差し引いても大変素晴らしい本に思い、
2回繰り返して読んでみました。

日本の医療を俯瞰的に、そして、<世界の中での日本>という
視点も込めて、数値的な分析を込めて言及されているように思え
ます。最近のニュースなどで話題になる医療の問題などもこの
本を読んだ上で、眺めると、個々のニュース以上に構造的な
変革が必要な時期と改めて感じることになるこの本ではないかと
思います。多くの方にお読みいただければと感じています。

自分なりのレビューや感想は以下です。
興味を感じたかたに是非読んで頂ければと
思って書かせて頂きます。

【第一章:医療提供体制について】
日本は新生児医療従事者は世界的にみても
多い気がする。年に2回も盛況な学会が開催される
国は他にはなかなかないともいうそうです。そうはいっても
どこのNICUも人が足らないという悩みがあるし、人が多いと
他員に思われている当院だって、週に2回当直(36時間勤務が2回)
あるような医療の中では労働管理から考えると
是正すべき業務状況が平常化している部分があります。

この部分の矛盾などを私たち現場の人間にも
なるほどと改めて共感する形でデータを持って解説して
くれています。これは小児科、新生児医療に関わらず、
救命救急や
外科、内科、産婦人科などの本来、多くの人達が必要とする医療
分野の共通の問題であり、多くの病院にある診療科だから
こその構造的問題を改めてみんなで確認できる内容と思い
ます。

医師不足は医療の進歩に伴う業務拡大を背景に、様々な
規制などでタスクシフト(医師/看護師の職域変更や
委譲)がうまくいかない(当たり前に
なりつつある医療でも医師以外してはいけないという
状況が続き、医師の仕事が増える一方という状況)、
病院が地域などで計画的に配置されていない(警察や
消防署などと役目は似つつ、配置のされ方が異なる)
ことで病院が乱立したり、逆に配置されない場所が
あったりして、病院勤務医の長時間労働でカバーする
ことでしか効率化ができない状況になっている。
病院勤務医の福祉関連の業務や病院乱立による
医師分散による当直業務の多さなどが問題となる。
規制が多いため、他の先進国と異なり海外からの
外国人労働者の医療への参入が拒まれている。

この部分のそれぞれについての数値的な分析、
対応策などを言及されています。

【第二章:医療財源について】
他国の新生児医療者と情報交換すると
日本は患者家族も医療者も診療の値段を
気にしすぎずに、他国だとみんなにやれない
ような診療をたくさん受けていることを感じ
ます。<お金の心配をせずに、現場が医療に
向き合える環境>は日本の特徴だと思います。

医療が医学が進むと高齢者の寿命は延びる、
それに対してその医療をささええる世代は小児高齢化
が少なくなる未来に、本当に現在のような国民皆保険
がなりたつのか?と言う部分は現場にいても日々感じています。

国民皆保険は大変いい制度と思いますが、命に関わる
救命的な医療の自己負担と本来は命に関わらない個人の
希望による医療などの医療をみんなで支える国民皆保険
から支出するべきか? この部分は医療現場でも感じる部分です。
よく外来で<患者家族の皆様にも病院でもらうと安いからという
感覚でみんなが保険料を使うとこの国はつぶれてしまうという
ことをつたえているつもりの私です。>

森先生は
国民皆保険の特徴を解説、グローバルな中でみたいい点と
課題などを解説してくれています。<社会主義原理>
<市場競争的原理>などのバランスがどの国でもとろうと
するのが医療財政なのだと改めて思いました。

その上で、森先生は今後の日本の医療財政について
TPPのニュースなどで話題になる単なる
<混合診療>の導入だけでなく、違う提言をしていますね。

病気を治す、生活の質を維持するというような医療を
<ニーズ>とし、きれいなものに囲まれたい、話を聞いて
もらって安心したい、あまりに高額な医療で国民全体の
税負担から支出すべきかどうかの最先端医療などの医療
<需要>として、これまでの診療報酬制度を維持したまま、
<ニーズ部分>を公的負担分、ニーズを越えた<需要部分>を
自己負担分と考え、医療行為と対象に分けて自己負担分を変えて
いくという方法を提言しています。<ニーズ>と<需要>の
医療の分け方にはもちろん、困難な部分があるとは思いますが、
その部分については、最近、ニュースなどで話題になった、
<子宮頸癌ワクチン>を例として、科学的根拠や他の治療を
あわせた対費用効果などを踏まえて決めていくことの大切さを
語っています。<子宮頸癌ワクチン>は当初は報道も賛同、
現在はどうして導入した?というような批判に晒されていますが、
この本に書かれているような経緯を振り返り、決め方の部分に
日本全体が<根拠><対費用効果>を無視して決めてしまう
部分にも大きな課題があるという部分が多くの人にもわかると
思うので、医療行政、医療報道に関わる人達、医療報道を
効く側の人にも話し合いのたたき台としてみんなでこういうことを
知ることができたらと感じました。

【第3章:<医療の質と安全の担保のために>】
日本は病院などが多いけど、患者さん側としては病院間で
<質と安全>に差があることは望ましくないと感じるし、
<質と安全>に著しく劣る病院などがあるならばそこの
診療は受けたくないというのも願いだと思います。

上記の記事にも出ていますが
救命率は世界有数といわれる新生児医療であってもどの
NICUに入院するかで10倍以上救命率に差があることを
言及しています。森先生が発案して、楠田教授の基で全国43施設の
NICUで取り組んできた、
このブログでも経過を
NICU質向上プロジェクトというタイトルでずっと紹介してきた
実際に新生児医療が取り組んでいることを実例にして、<現場の力>
を大切にしつつ<日本の医療全体の質改善>について森先生が
提言していますね。情報の共有化や透明性を出していくことなど
この大切さをプロジェクトに関わった人間としても多くの日本人の
皆様にしってもらえたらと思えました。

【第4章:<医療政策の意思決定>】
<医学界>は科学的根拠のこだわる部分がありますが、
<科学的根拠>の原理主義になりすぎても医療は改善して
いかないということもつたえてくれている著者です。
利権構造などで政策が歪まないようにするにはどうしたら
いいか、少子高齢化のなかではどうしても有権者が当事者で
ある高齢者の医療が優遇され、社会をこれから支えていく
小児や若者の医療がなおざりになりがちな部分をどうしていくか?

医学者の科学的根拠だけでなく、患者側の意見、価値観
様々な現場の医療の意見や価値感
などを踏まえた総意形成などをしていくか?
などの大切さを英国で診療ガイドラインに関わった経験などを踏まえて
解説しています。

未熟児動脈管開存症の治療ガイドラインで
のように報道されたことがある日本の新生児医療で実際に
導入した民主的で、根拠にそった総意形成会議(デルフィー会議)
話も出てきて、私は体験者としてこういう話し合いの仕方は、病院でも
医療行政でも、そして、医療を越えて政治の分野でも必要なことでは
ないだろうかという部分を改めて、感じ多くの人に想像してもらえたら
と思いました。

議論しているだけでは改善に向かわない、いかに総意形成して
行動に移すか?これは医療を含めた日本全体の課題と思い、
それについての処方箋にも感じました。

【第5章:<日本が進むべき道>】
1から4章の話をまとめて、
<グローバル化の中の日本の医療><生活圏の拡大と医療提供体制>
<ニーズと需要と保険財政><医療のおける質と安全の担保>
<医療政策における意思決定><共生できる社会実現のために>
という部分について森先生なりの<八つの提言>をしてこの本が
終わります。

<八つの提言内容>は是非、本を読んで多くの方にその是非を考えて
もらえたらと思います。

論理的でかつ、今の日本の現状を踏まえての現実的な解決策に感じ
感動しました。

もちろん、これまでの医療を維持することが目標に
なってしまえば暴論と思える提言もあるかもしれませんが、医療
の現場で働いているものとしてこのままでは医療は立ち行かなくなる、
変わっていく必要を感じるからこそ、実現性を多くの人達と考えたら
と思いました。

医療のみならず、TTP問題などで感じることですが、じゃあ
<日本はどうしていきたいのか?>というビジョンを私たち
日本人は持ち得ているかと不安になる気もします。

国家予算の2倍も借金を抱えている日本の社会全体の
処方箋のヒントもこの本の中にあるのではないかと思いました。
政治に関わるかたがたにも是非、読んでくださればと感じています。
多くのかたとこの本を読みつつ、話し合いのたたき台として
話し合っていけたらと思いました。

新生児医療は森先生の存在やそれを支持する諸先輩形の存在や
賛同する医療者の協力でこういうことを少しずつ考えたり、
実行しながら考え続けてきたと思います。

今後とも小さな医療分野かもしれませんが、その分、まとまり
はあるし、やる気のある医療者も多い分野だと思っています。
この本に書かれているようなことを
実践する<モデル>的な医療分野になるつもりで行動しながら
みんなで考えていけたらと改めて思いました。自分たちの医療
への改善思考や行動が日本の医療の未来にもつながっていると
信じていけたらとも思いました。

新生児医療に関わる人達には、医療者であれ、患者家族であれ、
是非、読んでこの本についても意見交換していけたらと思いました。
 皆様、ご意見ご感想などどなたでもお待ちしています。


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