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神奈川こどもNICUの豊島です。昨日のフォローアップ外来の御写真です。
けんちゃんは出生前診断され、生まれつきのいくつかのご病気がとともにお生まれになりました。そして、NICUで様々な集中治療をさせて頂きました。
横隔膜弛緩症(有嚢性横隔膜ヘルニア)という病気もありましたが、人工呼吸管理も終了でき、横隔膜の手術はしないで、経管栄養などの在宅医療に移行しました。
でも、数ヶ月後に重症肺炎となり、命に関わるような状況で小児科病棟に緊急入院しました。
NICU入院中もそうだったのですが、お口や顎が小さくて、息も絶え絶えなのに気管内挿管が難しく、みんなで協力しても気管に管がなかなか入りませんでした。約40分かかって極めて細い気管チューブをやっと挿入できて人工呼吸管理を開始できました。再度抜けたらもう入らないかもしれないから医療チーム内では緊急で気管切開をしたほうがいいという意見が大部分を占めました。
しかし、母様はその場で
「<気管切開>はしてほしくない、肺炎の前の状態に戻して欲しい。」とご希望されました。
今でも覚えているが、私が「気管切開した方が呼吸状態は安定するかもしれない。在宅医療も今よりは大変でなくなるかもしれない、、、」と話した時に
母様は私に「この子は生まれたときから、ずっとこうだった。大変なんて思ったことはない。。。気管切開というさらなる医療は今はして欲しくない。他の方法を考えて欲しい」とお話し下さったと記憶しています。その<表情と言葉>が今でも胸に残っています。
小児科病棟で細過ぎる気管チューブで完全筋弛緩で高い設定の人工呼吸管理を続けること
に無理があるのでは。。。という意見がでました。NICUには再入院は原則禁止です。<気管切開をしないのは診療拒否なんだからどこまで徹底的な集中治療を差し控える>という選択はないのかという意見もでました。
私の中では<気管切開を希望しない>と<こどもを大切に考えていない>のは必ずしも同じでないということをこの時に御家族の姿に気づかせてくれたと思いました。
肺炎になるとこんなに悪くなるとわかったからには横隔膜挙上症の手術をしてあげたいと思いました。でも,それほど手術効果も期待できかもしれないし、大きな体で2mmチューブしか入らず、気管切開はしないという状況での手術はどうなんだ?という意見も出ました。
御家族の想いと医療チーム内での意見に担当医としてどうしていくかいいか悩んだ日々でした。
最終的には様々な医療スタッフに個別に話にいき、賛同してくれるスタッフに協力して貰い、危険はあるかもしれないけど細いチューブのままで横隔膜挙上症の手術をなんとか外科と麻酔科の先生にしてもらった上で、人工呼吸管理をやめられるかを試して、駄目なら気管切開を再度御家族に問いかけるという方針に意思統一してもらった当時でした。
手術後は医療者の予想以上に呼吸状態は改善し、肺炎をおこすことなく、人工呼吸管理なるようなこともない人生です。
あのとき、気管切開しなくてよかった、治療の差し控えもしなくてよかった、あきらめなくてよかったと思える術後経過でした。 当時の御家族や医療者と話し合った様々な言葉や会話はその後の自分の医療者としての考えにも変化させて貰ったと思える経験になりました。
退院後も、けんちゃんは地域の小児科や当院に何度となく入院しました。療育、養護教育にもお世話になってきました。多くの様々な職種の皆様がけんちゃんに寄り添ってきたと想います。カルテは辞典のように厚く、この子や御家族や関わった多くの医療者の願いや頑張りを実感します。
けんちゃんは、不思議に何処に行ってもみんなに好かれます。みんなに可愛がられます。そこはかとない愛嬌があり、癒される雰囲気があります。<人を優しくする才能>をもって生まれてきたと想います。
けんちゃんには
「病気をもって生まれてきて良かったねとはいえないけど、いい御家族の基に天が授けてもらえて良かったね」といってあげたいです。
小さなうちはこの母様だからこそ、乗り越えられたかなと思える日々でした。
母様が今思うと「このお父さんがいたから、自分は頑張れた、、、」と感謝を問わず語りでのべていらっしゃいました。父様は消防士さんで、そのせいか<生命に優しい男性>に感じます。
今は養護学校のPTAの役職もしているそうですが、「在宅医療で母様が頑張れている、離婚などをせずに仲良くやれているご家庭は,どこも仕事の忙しさに関わらず、父が子どもや母様をよくみている、理解していようとしている、子ども達のおかげで家族の絆が強まったと思っている男性が多いような気がする」とお話し下さいました。
昔は外来に一緒に付いてきていたけんちゃんのご兄姉は、医療者を目指して受験勉強しているそうです。神奈川こどものNICUで働きたい!といってくださっています。楽しみにしています。
私の影響が大きいといってくださるご両親ですが、私の視点では、病気と共に力強く生きてきたけんちゃん、けんちゃんを優しく見守るご両親の背中をみて育ったことが大きい様に思えます。小さなときから病院の医療者に接したり、病気や障害に差別の気持ちが沸かず、困った人に自然と支えの気持ちをもてる優しくて頼もしい若者に成長しつつあるようにも思えます。
けんちゃんが生まれたことが御家族(私のような医療者),それぞれの人生において様々な影響をくれているのだと思います。そして,けんちゃんと生きてきたこの家族だからこそ、かもしだせる<素敵な笑顔>や<人間としての優しさや強さ>があると感じています。知り合えたことを天に感謝するような<幸せな御家族>と思っておつきあいしてきました。
NICUの患者さん達のフォローアップをさせて頂いて感じることは、早産であろうと、病気であろうと、何らかの後遺症と共に生きるのであろうと、<悩み>や<大変さ>だけのご家族の日々ではなく、<成長の喜びや楽しみ>が通常と変わることなくあるのだと思います。また、それ以上に、この子ども達の存在によって、大人達にも気づかせてくれる<人生の意味>などもあるのかなと思います。
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子供が病気を持ち生まれてきたことで、学んだこと、
そして、考えたことは、今の私に必要な事だったと思いますし
そのことによってもたらされた御縁に驚かされます。
子供の成長には、喜びや楽しみがたくさんあります。
私には難なく生まれてきた息子もおりますが、
病気を持っていた娘の前向きさは、家族の中で一番です。
診療方針といいますか、これからどうやって育てていけばいいか
病気とどう付き合っていけばいいかということは
主治医の先生と出来るだけ同じ方向性でやっていきたいと
常々思ってきました。
それは、日常の子育てに、私の子育て方針を持つことでもありました。
そのことによって、幼稚園へ入園できなかったことや、
小学校の授業への参加に条件が付いたことなどがありましたが、
それも、親子夫婦で話し合うきっかけだったと思います。
今、思春期を迎え、病気を理解してもらって人間関係を築く事に
娘は悩んでいます。
けんちゃんのようのお子さんと、ご家族との出会いを大事にされている先生も
素晴らしいと思います。これからもお励み下さいね。
2011/6/11(土) 午前 8:22 [ そうらのん ]
上記のメッセージくださった方,読んでくださりありがとうございます。上記のメッセージ公開するとメールアドレスでてしまうので<承認せず>にさせていただきますね。多くの方が様々な状況の中で心寄せてくださっているこのブログだと思うのですが,<内緒のメッセージ>への返事や,メールやお電話番号をお伝えいただいて個別のご相談などはしないようにしています。ご容赦いただければと思います。上記のようなメッセージは迷惑とは全く感じていません。<悩み>に心寄せさせていただきたいとは思いますが,今後ともメッセージなど寄せくださればこのコメント欄で答えられる範囲でお返事はさせていただきます。メッセージおよせくださりありがとうございました。
2015/3/25(水) 午後 2:42 [ NICUサポートプロジェクト ]