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体の48箇所を魔物に奪われた百鬼丸が、魔物退治の旅を続けるという内容の話で、もともと「少年サンデー」に連載をされていました。しかし、連載が打ち切りになったため、未完のまま終わっています。 その後、テレビアニメ化にともない「冒険王」に連載が再開され、いちおうの完結を見ることが出来ました。 この作品、手塚氏自身が「作品の雰囲気の変化とモチベーション、さらには他の仕事との兼ね合いで、乱暴に終わらせてしまった」と公言しています。 たしかに終わり方は中途半端で、どうも不完全燃焼に陥ってしまいます。 '69年に放映されたアニメの視聴率もいまひとつでおわったようで、「不遇の手塚作品」と言われます。 しかしながら、私はこの作品が好きです。海外でも「最高の手塚コミック」との声が高かったようです。 その独特の世界観、さまざまな妖怪たち。そして何より過酷な運命を背負った百鬼丸というキャラクターの魅力。 連載当初は水木しげる氏の『ゲゲゲの鬼太郎』が流行していたこともあり、妖怪漫画として見られていたようですが、手塚プロの解説にもあるように、むしろ「貴種流離譚」と見ることができるでしょう。 貴種流離譚というのは、身分の高い主人公がやむを得ず流浪し、数々の苦難をのりこえて英雄になるという物語の一類型のことで、たとえば『源氏物語』もそうであると言えます。 物語の設定は、魔物を一体倒すごとに奪われた体の一部を取り戻すことが出来る、というものですが、連載途中で設定が一部変更されているそうです。主人公・百鬼丸の相棒・どろろは、魔物が百鬼丸から奪った体を使って作った人間、ということになっているのです。 これによって、百鬼丸はどろろを殺せば瞬時にして体を取り戻せることになり、物語の重要なアクセントになっています。 この設定のもと、百鬼丸はどろろを殺すかどうかの葛藤を続けながら魔物を退治していきますが、考えてみれば魔物を退治して体の部位を取り戻したら、そのぶんどろろが体を失うことになるハズ… まぁ、私は秋田書店の文庫版で読んだので、この設定変更後の「どろろ」は読んでいません。なので、この辺の設定についての言及はさけておきましょう。 どろろの設定では、最初に「応仁の乱」と思しき乱について語られています。戦火によって盗賊になったどろろの父・火袋は、どろろを育てながら武士勢力に抵抗しています。 したがって、この話は少なくとも応仁の乱が勃発した応仁元年(1467)以降の話でしょう。 そして主人公・百鬼丸の父は、戦国武将に仕える醍醐景光という人物。この景光は「富樫」という大名に仕える武将という設定です。 「富樫」とは、室町幕府の加賀守護家のことです。 「応仁の乱」において、富樫家は東西に二分し富樫政親とその弟・富樫幸千代が家督をめぐって争いました。 富樫家は富樫政親が一向一揆勢力を味方につけて幸千代を破り、統一されました。しかしやがて政親と 一向一揆とは対立を深め、長享2年(1488)、政親はついに一向一揆によって居城・高尾城を包囲され、滅ぼされます。 これに近い話がどろろの終末部分のエピソードとして描かれています。 民衆の反乱によって醍醐景光がその地位を追われる、というものです。 この景光の追放劇はなんだか唐突に描かれていて、とても納得できる形ではありません。 そしてこの追放後、百鬼丸はどろろに対し、民衆の力になって武士を倒せと言い残して去り、物語は完結しています。この終わり方も唐突です。 しかし、おそらく手塚氏はこの「民衆=一向一揆と守護・武士勢力との戦い」を基軸にして物語を構築したかったのではないだろうか、と思うのです。 「民衆の代表」としてのどろろと、「武士勢力の代表」醍醐景光、そしてその中間に位置するのが百鬼丸。こういう構図で、百鬼丸は魔物との戦いを通じて民衆、一向一揆の勢力を糾合していき、最後に魔物と通じた父・醍醐景光、そしてその主である大名・富樫政親を打倒する… まぁ、実際にはそうはなっていないので本当のところはわかりませんが、完成した「どろろ」をぜひ読んでみたい、実におしい作品であると思います。 「どろろ」(1)〜(3)
著者:手塚治虫 出版:秋田書店(秋田文庫) 発行:1994年4月30日 |
MOVIE&BOOKレビュー
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実は手塚マンガ、大好きです。『ブラックジャック』『火の鳥』も好きなのですが、一番好きなのは『ブッダ』ですね〜。この頃、並行して遠藤周作が好きだったので、宗教ものにえらく影響を受けておりました。『どろろ』は読んだことないのですが、面白そうですね♪今度、読んでみます。(歴史は苦手であります(^ー^;) )
2005/10/2(日) 午後 11:40
手塚治虫は尊敬してます。ブラックジャックが一番好きかな・・・伝説の漫画ですね。完結しなかったけど火の鳥も伝説ですね。どろろははじめて聞きました^^見てみたい!!!見つけられそうにないけど><
2005/10/3(月) 午前 1:54
アニメ版は、スタートは「どろろ」でしたが、途中でタイトルが「どろろと百鬼丸」に変わりました(^^)結構怖かった印象が残っています。
2005/10/3(月) 午前 8:12
>nasuさん あ〜、歴史関係の話は、断片的な記述から私が勝手に想像して書いたものですヨ^^; そんなこと知らなくてもぜんぜん楽しめます! ぜひ読んでみてください〜。
2005/10/3(月) 午後 0:04
>ロクさん 「どろろ」は秋田書店刊の文庫版で発売されているので、比較的手に入りやすいと思いますよ〜。「火の鳥」も好きでした^^ とくに「太陽編」が好きでしたね…
2005/10/3(月) 午後 0:06
>のこっ太さん そうなんですねぇ…初めて知りました。アニメは見ていないのでなんとも言えませんが、当時は怪奇漫画ブームだったと聞きますので、おそらくアニメ版は怪奇漫画的側面をクローズアップした作品だったのでは?
2005/10/3(月) 午後 0:08
私もどろろ大好きです。富樫家といえば、一向一揆で滅ぼされたあの富樫ですから、かなり史実を踏まえた作品といえますね。さすが手塚先生だなあ・・・
2005/10/3(月) 午後 4:50
>KOROKOROさん そうそう、ほんのチョイとした設定ですが、さりげなく史実を織り込んでいるところがすごいところですね。私の妄想では、やはりこの設定はもっと深く掘り下げるつもりだったんだと思いますが…
2005/10/3(月) 午後 6:46
やはり手塚作品は奥が深かったんですね。どろろはコドモの時アニメを見たような記憶があります。コドモ百鬼丸の美形さが気に入っていた模様ですが,今まで戦国時代のお話何打後しか背景は思ってませんでした。 眼からうろこさせていただきありがとうございます。こりゃあ読み直し要と見た。
2005/10/4(火) 午前 8:48
>ぴあしさん 戦国時代を舞台にはしていますが、ほんの断片的にしかかかれていないので、ストーリーにはあまり反映されていないですね^^; 「ばんもん」の話は、案外、富樫政親と富樫幸千代の争いを描きたかったのかも知れませんが…
2005/10/4(火) 午前 9:04