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その場所になかなか辿りつけなかったのは、小生が方向音痴であり、レンタカーのナビの使い方もよくわからん機械音痴だからという理由だけではない。
そこは、ごく普通の民家に見えたのだ。
午後三時を回ったころだった。
南国の広い空には、十月半ばというのに強い日差しが広がっていた。指宿駅前の市街地からすこし北に離れた静かな場所にその酒蔵はある、そう聞いていた。
二度その家の前を通過したときに、一人のご婦人がその家の前でこちらに気づいてくださった。教えていただくままに、蔵の裏庭にまわり、車を停めた。
指宿市十二町高之原にある「吉永酒造」は、午後からの造りの作業が一段落したところだった。蔵には緩やかな空気が充ちていた。
ここは年間400石の芋焼酎を造る。ほんとうに小さな蔵だ。
明治38年創業、長く「さつま白雪」という芋焼酎を造り続けてきた。その酒は商標の問題から、平成15年に廃止され、あたらしい代表銘柄の名は「利八」となった。
蔵の二代目、利八氏にちなむ銘柄名だ。
利八について書いておく。
彼は、ひとことで言えば、不撓不屈の人だった。
戦前、韓国大邱でも製造を始めた利八は脳梗塞で半身不随となる。昭和20年の大空襲で、もう片方の腕も切断した。さつま白雪の銘柄変更に際して、若くして半身不随になったにも関わらず家業を死守し後世に繋いでくれたその魂に敬意を表して「利八」と命名したという。
五代目、章一氏(26歳)が蔵の仕事を継ごうと決心したのには父親の病気という理由があった。
大阪のIT関連企業でプログラマーとして働いていた章一氏は、平成21年に蔵にはいった。今年が二回目の造りだ。
病で声を失った父親、四代目の俊公氏が若い当主に造りを教える。
それを支えるのは母親のひろみさんと長い間蔵仕事を手伝ってきた熟練の蔵人。
しっかりと継承されてきた造りで、ファンも多い。鑑評会では優等賞を連続受賞している。
工場の横にある事務所で章一氏とご母堂に話を聞いた。
実は小生、「さつま白雪」のファンだった。
穏やかな香味、豊かな甘い余韻。飲み飽きすることなく、お湯割りで日常に楽しむ芋焼酎だった。銘柄名が消えるという折に買い求めた一升瓶は、そのまま開封せずに置いてある。
「ことしは営業的なことも考えてゆきたいです」と章一氏。
昨年は造りだけで精一杯だった。
造りの課題は多く深いけれど、一方では蔵の経営についても考えてゆかなくてはならないのは当然だ。
「ホームページを作りまして」と章一氏が笑顔で言った。「まだ作り始めたばかりで・・・」と苦笑い。
しかし、あとで拝見して驚いた。
杜氏が自分で作ったサイトとは思えない。さすがにIT企業出身だけのことはある、そうメールで感想を送ったら、プログラミングをやっていたけれど、ホームページについては全く門外漢だったので、参考書をみながらなんとか作ったのだとか。
サイトの構成もしっかりしているし、必要なコンテンツは網羅してある。
感心したのは「焼酎造りの工程」というコーナー。
写真の見せ方にも閲覧する人の目を釘付けにする工夫があった。きっちりとした内容、見る人の目線に沿って整理されたコンテンツ…小生の乱雑きわまる焼酎サイトとはレベルが違う。いや、人種がちがうのかもしれん。
五代目杜氏章一氏26才、新しい世代の登龍を見るような気がした。
蔵の中を案内してもらった。
ドラム、三角棚、芋蒸し機そして蒸留機とコンパクトに配置されている。蔵の奥の溶暗のなかに黒々としたカメが静かに並んでいた。
「カメは二十個あるんですね?」
「いつぞやの水害で二つ割れてしまってですね、いま一次仕込みに使えるのは18個なんですよ」
カメは割れる。
割れて使い物にならなくなったカメは、蔵の看板や飾りや道標に使うしかない。
いまや和カメは貴重だ。あらたに補給する事は簡単ではない。大事に使っていっていただきたいと思った。
「章一杜氏にとって、焼酎造りのおもしろいところって何ですか?」
そう聞いたら、すぐに答えが帰ってきた。
「造りの全部がおもしろいです。おなじ工程で造っても毎回変化があります。生き物を相手にして仕事しているという実感が毎日あります」
家業の焼酎造りを自分の天職と決めて、父親、そしてそのずっと前から継続してきた技を自分のものにしようという覚悟が、章一氏のことばに浮かび、弾んだ。
「利八」はいぜんの「さつま白雪」と比較して骨格が太く、味わいが豊かに太ったという小生の感想を章一氏に話した。
「お湯割りはもちろん、ロックや水割りでも味わいがしっかりしていると皆さんに言われます。嬉しい事です」
そう言った若き杜氏の笑顔がこの蔵のこれからを示しているような気持ちになったのだった。
吉永酒造有限会社
住所 鹿児島県指宿市十二町645
電話 0993-22-3015 FAX 0993-22-3029
ホームページ
http://www1.ocn.ne.jp/~rihachi/index.html
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先日は大変御世話になりました
毎日、監査で忙しいです
いまレポートを書き方ですが、一向に行が進みません
「利八」よかですね、
造り手の気持ちが伝わってくるようです
2010/10/21(木) 午前 3:22 [ fuusan ]
めにっおやっとさあです。
利八の蔵も酒もよかですね。
こげんな小さいのに個性的にきばっちょいやっとこいはまだほかにもあっかんなあち思いましたよ。
2010/10/21(木) 午前 7:49 [ nig*r*i ]
私もカーナビ無しでは吉永酒造には行っがないもはん・・・。(-ー;)
若き後継者が居るちこちゃ将来に希望が大きいちこっじゃっで章一さあには気張って欲しかですね。
2010/10/21(木) 午前 9:44 [ nishi_dc ]
ほんのこて、そげん思います。
きっときばいつけてくいやっちおももした。
ナビがあってん、最後はわかいもはんじゃしたがを^^;
2010/10/21(木) 午後 9:13 [ nig*r*i ]