ひるね蔵ダイヤメ日記

芋焼酎すきな飲んべえの徒然です。

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カラ芋から始まった。

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西麻布の交差点からすこしはいった路地際に、「かぶいて候」という居酒屋がある。
もうずいぶん前になるが、六本木のオフィスで仕事していた時分に通った店だ。お父さんと娘さんでやっていた。お父さんが亡くなってのちは娘さんがひとりできりまわしていると聞いた。仕事場が新橋に移ってからは、もうずいぶん長い時間行っていない。
そこで初めて飲んだのが芋焼酎「森の妖精」だった。

名前に惹かれたのか、一緒にいた焼酎のん兵衛に勧められたからなのか、判然としない。
だが、「森の妖精」をお湯割りでひとくち飲んだときの印象はよく覚えている。
味覚の記憶は強いものだなあと思う。
湯気の立つガラスコップを持ち上げると、豊かな芋の香りがまず立ち上がり鼻孔を包みこんだ。
口に含むと優しさがまるで染み出すように広がった。
蒸留酒だから、そんなことはないのだが「ここちよい粘度」とでもいったほうがいい濃醇な味わいを感じたのだった。こんな酒は初めてだ、そういったら娘さんが「焼き芋焼酎なんですよ」とにっこりと笑顔で教えてくれたのだった。

焼き芋焼酎といえば、田崎酒造の「鬼火」とか、鹿児島酒造の「さつま諸白」「黒瀬」とかを連想するが、そのどれとも違う味わいだった。

「それは、焼き芋の造り方が違うからね」と、太久保酒造の会長、中山信一さんが言った。
焼き芋の製造方法を簡単に説明していただいたがやはり実際に見てみないとわからない。要は太久保酒造の独得の方法で原料芋を作っているからということだったのだろう。芋の卸業を長年やっている中山さんならではのこだわりがあるのだろうと思った。

よく晴れた日の午前中、鹿児島県志布志市松山町の太久保酒造本社をお訪ねしたのだった。
志布志の海岸ちかくの宿から、車でご案内いただいたのは中山江里子さん、会長の娘さんだ。
「会長(お父さん)は、とにかくサツマイモにこだわるんですよ、芋でずっとやってきて、焼酎はあとからですからね」と江里子さん。
久保醸造から経営を引き継ぎ、太久保酒造として再出発したのは平成2年のことだ。

「ということは、やっぱり芋焼酎、でしょうか?」
「そうそう、やはり薩摩芋の焼酎が香りも味わいの細かさも、なんちゅわならんからね(なんとも言えず良いからね)」
芋の話をするとき、中山会長の笑顔は一段と輝く。

本社工場を案内していただいた。
広大な敷地の半分ほどは、芋の処理工場だ。新鮮なうちに下ごしらえをして保存するライン、連続式の蒸し器で蒸しあげて冷凍するライン、下ごしらえまでで、ほかの蔵からの依頼にこたえて出荷するライン、そして自社の製造工場で使用するためのライン。
芋を知りつくした蔵ならではの操業が続いていた。

本社のほかのスペースは、居並ぶ貯蔵タンクから和水タンクを介して瓶に詰める作業に使われている。従業員の方々が十時の休憩時間にもかかわらず立ち上がって挨拶してくださるのには恐縮した。
さまざまな焼酎蔵を廻って思うことだが、とにかく蔵の人々は気持ちのいい人ばかりだ。薩摩の中学生や高校生は蔵で一定期間を修行させるのが良いと思うけれど、どうだろう?

公用で外出するという中山会長に挨拶した。
会長は鹿児島県の県議でもあるのだ。

「製造工場に行ってみますか?」と江里子さん。
太久保酒造の造りは、本社からちょっと離れた曽於郡大崎町にある工場で行われている。さっそく連れて行ってもらうことにした。
蔵は田んぼと畑に囲まれた静かな場所にあった。
すぐそばに大分の麦焼酎を委託製造している巨大で立派な蔵があったので、うっかり「ここですか?」と言うところだった。危ない危ない。

太久保酒造製造蔵のまん前には前方後円墳があった。
「丘や濠から畿内地方の土器が出土したことや、長さが124メートルと、大型の畿内的古墳であることから、被葬者は中央政権から派遣された相当の権力者と思われる(大崎町HPより)」という。
もともとこの地は宮崎県諸県郡の一部だった。天孫降臨の地、霧島にも近い。古代神話の魅力がぎっしり詰まっているエリアだ。酒造りには絶好の場、そんな印象だ。

この蔵で、志布志に本社のある「天味世(あませあじ)酒販」の前畑社長と合流した。
前畑さんは白玉米を復活栽培し、米麹用への使用を太久保酒造に依頼した人。そして生まれたのが「侍士の門」である。

蔵では昨日から造りが始まったところだった。
「華奴です、白麹です」と、杜氏の小池田さん。
製麹ドラムから三角棚に移し、麹の破精込みが進んでいる。この蔵の代表銘柄である「華奴」から造りがスタートするのだ。小池田さんはまだ若いけれど、黒瀬の杜氏に徹底的に仕込まれた人だ。

「あす、出麹ですか…」
「そうです、今年初めての仕込みです」

製造担当の岩切さんがそう答えてくれた。
ふたりは造りの期間は交替で蔵に泊まり込むのだという。

「これは、何?」と小生。
一時仕込みに使用する甕のうえに、ホースが垂らしてある。え、こんなの見たことないぞ。
「電子イオンをモロミに流すのです。仕込み水にも流しています」と岩切さん。
聞くと、食品業界やスーパーなどで提供される飲料水にはかなり応用されている方法だという。焼酎蔵ではもう一社が水の浄化に使用しているだけで、太久保酒造さんのように徹底したシステムを構築している蔵はほかにはないそうな。

「この二つ、飲み比べてみてください」と、岩切さんがコップを差し出した。
「仕込みはまったく同じ華奴です。システムを通したものと、普通のものです」悪戯っ子のような岩切さんの笑顔を見ながら、さっそくテイスティングしてみた。
一口含んでノドに通す。……う〜む、これは、別の酒だ。
従来のものに比べて、くちあたりはまろやか、のどごしもまたスムーズ。アルコールの刺激が少ない分だけ味わいのバランスの良さがきわだつ。うまみは全く損なわれていない。

ただ、やや心配になった。
「これじゃあ、これまでの酒になれたファンがとまどうのでは?」
「そうなんです。このシステムは、あたらしい造りの酒に応用するつもりです」
うん、官能商品である焼酎のファンの心理をちゃんと考えているんだと安心したのだった。
小ぶりの蒸留機がふたつ。
そういえば、ドラムも三角棚もふたつづつあった。
うまくレイアウトしてあるので場所の狭さを感じない。とても効率のいい作業場だ。

工場入り口の左側に、黒い甕のならぶ貯蔵庫があった。
「侍士の門」の古酒への挑戦が進んでいた。
貯蔵庫の横にも甕が並んでいる。
この甕、一個もらっていきたいものだ。そう顔に書いてあったのだろう、岩切さんが笑って言った。
「割れてるんですよ、こちらのは。それにメチャ重いので移動が大変なんです」
「……(断念)」

蔵の方々に別れをつげて志布志に向かう車中で考えた。
広い空、鮮やかな緑、原料芋にこだわり、新しい製法にチャレンジする明るい蔵人たち。失敗をおそれずに造りの工夫に挑戦せよという蔵元。
ここで醸される芋焼酎には米麹、芋、水のほかに目に見えない何か大事なものが入っている。彼らの造る焼酎が美味いのはなんだか当たり前という気持ちになったのだった。

「太久保酒造」
住所 本社 鹿児島県志布志市松山町尾野見1319-83
   蔵  鹿児島県曽於郡大崎町横瀬1252-2
TEL本社(099)487-8282 FAX(099)487-8383
ホームーページ http://ookuboshuzo.com/

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からいもトリ。。。

母が少しばかり植えていたので
日曜日にヒト袋の収穫がありました。

あの紫カライモは殊のほか不評です
煮ても美味しくない
焼いても美味しくない
天ぷらも駄目
もーう、来年は植えないそうです。

2010/10/27(水) 午前 1:44 [ fuusan ]

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からいもは、40種類以上あるそうです。なかには食用にむかないのもあるんでしょうね。

2010/10/28(木) 午後 7:57 [ nig*r*i ]

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あの紫カライモは、お菓子屋が使用するようで、高価なカライモです。また焼酎もあるようですが、どうも一般家庭向きではないようです。加工されると、見た目も良いのですが、年寄り、もとい高齢者には不評です。焼き芋は安納イモが甘くて良いですが、煮たら美味しくありません。やり方もあるのでしょうけれども、、、。40種ですかぁー、たくさんあるのですね。

2010/10/28(木) 午後 10:32 [ fuusan ]

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当地は、雨です。。。

本日は隣の母が、味噌づくりをするようです。
小麦を20キロに、大豆が5キロに、味噌麹
で、約4000円ぐらい。。。

これだけで、3家族の1年分の味噌ができます。
塩分を控えめに造るらしいので、知り合いに少しおすそわけも
するらしい。

買えば高いですが、造れば安くて簡単らしいです。

2010/10/31(日) 午前 11:26 [ fuusan ]

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カライモは、100種以上あるようです。
鹿屋の郷原さんがイベントで、無料で提供されているテレビ放送がありました。

それから味噌は小麦ではなく、大麦でした。。。 ^^)

2010/10/31(日) 午後 10:47 [ fuusan ]

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からいもは、奥がふかかですね。
大隅をくいまで走っちょったら、やっぱい薩摩は芋の国ちかんじが実感しもした。たもっとも、のんとも^^

2010/11/5(金) 午後 3:19 [ nig*r*i ]

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