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8月25日(土)に第74回大会を開催します。

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第74回大会の要旨

第74回大会の発表要旨をご紹介します。まず最初の発表から。

『更級日記』における短連歌の記事についてー嵯峨野の花見ー
          早稲田大学大学院教育学研究科修士課程修了 西村亜希子
 
『更級日記』作品中の、男車の主と作者との短連歌「花見に行くと君を見るかな」「千ぐさなる心ならひに秋の野の」の贈答が太秦参詣の途次に行われている意味については、従来触れられることがなかった。しかし、当該記事の季節や場所が、「八月」「一条より詣づる道」に設定されていることに注目すると、二つの記事の関連性が見えてくる。
八月、つまり「秋の花見」は、嵯峨野での花見を指すことがある。また、作者が男車と出会ったのが「一条より詣づる道」であったことについて、従来は作者の居住地との関係から理解されてきた。しかし、作中に通りの名が記される例は少なく、本文の読みの面からも考察が必要であろう。平安時代後期には、一条大路末から西へ向かう道が嵯峨野や広沢池への道として整備されていた。一条大路から嵯峨野へ花見に行こうとしていた男車の主は、同じく一条大路を西へ向かう作者を見て、作者も嵯峨野へ向かっていると考えたのではないか。当該記事における「一条」という通りの名は、嵯峨野の花見のイメージを喚起する仕掛けとなっていると考えられる。当該記事は、作者が一条大路を太秦に向かって西行していることを契機として、連想的に嵯峨野に花見に行く貴人のイメージが引き出される記され方となっているのではないか。
本発表では、従来注目されることの少なかった短連歌の記事に着目し、当該記事と太秦参籠記事との嵯峨野を介した連想性について考察したい。

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