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昨日はドイツ人老夫婦と、ネパリのガイドとともに団欒をしながら食事をした。あいかわらず風呂には入れずじまいだったが、しっかりと眠ることができた。出発する際、昨日食事をともにしたメンバーと写真を撮影した。トレッキングを始めてからこのようなことは初めてで、少し嬉しく感じた。
今日の目的は、さらに下りを続けてタトパニという町までいくことだった。このタトパニは、川沿いに温泉が湧き出ているとのことだったので、早く到着して4日以上ぶりの風呂に早くはいりたいと思っていた。
くだりを続けているうちにすでに標高1000Mあたりまで降りてきた。周りの山々を見ても、緑がかっていたため、これまでの風景とは明らかに違うことがわかる。木にも赤々とした実がなっていたりして、ジョムソン近辺がどれだけ痩せた土地だったかというのが改めてよくわかる。
落ちる滝にそって急な下り坂をおりる。降りた地点にはロッジがあったので、そこで休憩をとりながら滝を眺めていた。しばらく休んでいると、日本人の女性らしき人が、俺が降りた道を登っていくのが見えた。ロッジには立ち寄らなかったので、ただ通り過ぎるのを眺めるだけだったが、彼女はきっとこれからガーサに向かい、トゥクチェに行き、マルファに行き、ジョムソンに行き、カグベニに行き、ジャルコットに行き、ムクティナートに行き、それから折り返すかアンナプルナを周遊するのだろうなあ、とぼんやり考えていた。
旅人を客観的に見ると、あらためて旅は良いなと感じた。一人旅は孤独で、何か素晴らしいことがあってもそれを100%他人と共有することは出来ないけれども、体験するのは自分しかいないからそれを自分自身で咀嚼して、自分の糧に出来るからだ。きっと彼女もそういう経験をこれからするのだろうと、かなりおせっかいな思いを抱きながら、旅路の安全を祈った。
ロッジからは平坦な道をゆっくり歩いた。あぜ道には田んぼが青々として綺麗だったし、集落も村らしくなって、随分と生活感のある地域になってきた。すれ違う人は笑顔でナマステと言ってくれるし、気持ちよかった。
やがてタトパニに到着し、ロッジにチェックインした。俺が泊まった部屋は2階で、鍵がろくにしまらない部屋だったが、南京錠を持っていたので何とか鍵をかけ、早速川の温泉に向かった。
タトパニの温泉は、本当に河沿いの温泉だった。一応温泉の横に簡易脱衣所のようなものがあったが、俺は水着をもっていなかったのでトランクスのまま入浴した。山間のためかなり気温は冷えていた。そのため、風呂に入った時の気持ちよさはすごかった。まわりは皆白人だったが、「君たちに温泉のよさがわかるのかね??」といいたくなるような、日本風のつかり方をしてしまった。それは頭にタオルを乗せ、「ンァーー…」と親父臭いため息をつくことだった。(日本ではそんな風に入らないのだが)
長い間の垢を落とし、若干ぬるめの風呂に1時間弱はつかっていた。時折ネパリの子供がはしゃぎながら入ってくる。その後、彼らの親がおずおずとはいってきて、子供たちを連れて風呂の端の方にいく。そして、チラリチラリと我々旅行者の顔を見る。こちらがニコリと笑うと、向こうの親がはにかむように笑う。子供は無駄な愛想は振りまかないという感じで、笑わない。そんな、無言のコミュニケーションのおかげで長風呂してしまった。
それでも飽きたらず、また夜に風呂に行ってしまった。今度は星空を眺めてビールを飲みながら入ろうと決めた。風呂に入り、空を見上げると星が見事だった。この川は、谷あいにあったため、両側に高い山が走っている。そのため夜空も縦長に切り取られていた。その切り取られたわずかな空の中で、おびただしい星が輝いていた。一方で山の影はこれでもかというくらいに黒ずんでいた。
コントラストが素敵だなと思いつつ、ビンビールをラッパのみしていると、白人旅行者2人が入浴してきた。俺がビールを飲んでいるのを見て、いいなと思ったのか、タオルを巻いてビールを買いにいき、すぐ戻ってきて「さぶいさぶい!」という感じで入浴していた。疲れと緊張感がほぐれていく、とても良い夜だった。
写真1「ガーサロッジの食事仲間」
写真2「タトパニへ降る途中の滝」
写真3「タトパニ近辺の田園」
写真4「タトパニの赤い木の実」
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