十兵衛のすずめがえし

私こと十兵衛は、隻眼は同じでも柳生十兵衛とは違い鈍(なまくら)武士、雀相手に修行中

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  どこから得たのかわからない 情報を正しいかどうか確かめもしないで、したり顔で右から左に流す。それが侮蔑や差別につながりかねないものであれば、悪辣だ。
 
 たとえば、次のような文章である。
 「学費の捻出が困難で進学を諦める日本人も少なくないのに、外国人留学生への返還不要な生活費の援助や給付型奨学金制度(うち八割が中韓の留学生)中国人留学生の非課税制度はおかしい。
ちなみに日本人学生には奨学金の返還義務がある。日本人学生に対する逆差別?だいたい皆さんこの事を知ってました? 」
 
 これはフィフィとかいう人のツィッターの文である。タレント(らしい)が右翼っぽい発言をするので、ネトウヨ族には人気らしくフォロワーが多い。この発言には8千人もの人が「いいね」を付けている。
 
 ここには、外国人留学生に対する奨学金制度の趣旨や内容にはふれず(意図的にか、知らない、知ろうともしないのか)、給付型奨学金であること、非課税制度であることをあげ、逆差別だと指摘する皮相な見解がある。
 
 実は、これには元ネタがある。ZAKZAK(夕刊フジ:http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130422/dms1304221534003-n2.htmの記事である。
 「例えば、2012年度予算で187億円が計上された「国費留学生」制度。1人あたり修士課程で月額15万2000円、博士課程だと15万3000円が支給される。国立大学なら学費免除、渡航費も日本政府負担だ。
 このほか、私費留学生に67億円、短期留学生に22億円など、計280億円以上の国民の税金が外国人留学生に使われている」
そのタイトルは中韓留学生の超厚遇はおかしくないか?」というものである。
 
 だが、この記事も意図的にか一部の事実だけをとりあげ、税金問題に転化させて偏見と差別を煽っている。
 
 こんなものは、少し調べればいい加減な情報だと分かるはずである。文科省および日本学生支援機構のサイトを覗いてみれば次のような情報が得られる。
 
 ZAKZAKの記事は2013年4月22日に書かれたものでありながら、2012年度の予算である。にも拘らず金額が高い。以下に掲げた文科省の資料では月額14万3000〜14万8000 円である。これはなぜであろうか。推察するに予算案段階では12年度から引き上げを予定していたが、国会審議で未了となり、現行のままとなったものであろう。ここは文科省に聞いてみないと分からない。しかし、ジャーナリストとしては、現状を確認すべきであり、取材が不十分である。したがって、総額等も違っているのではないかと思われる。
 
 次に指摘すべきは故意に外している対象範囲である。フィフィやZAKZAKの記事は対象人数に言及していないので、いかにも全留学生が対象になっている印象を与えている。しかし、研究留学生(修士課程・博士過程)と教員研修留学生を合わせても4100人程度である。全大学院留学生が約4万人(下の資料)なので、僅かに1割でしかない。むしろ、少ないし、博士課程でも2年間と限定されている。多くの留学生は学部生も大学院生もアルバイトしながら勉強に励んでいるのである。その向学心は日本人学生が見習うべきものである。
 
 さらに指摘すべきは、「八割が中韓の留学生」というフィフィの発言は正確さを欠くという点だ。中韓の在籍留学生比率が高いことは事実である。2012年度でいえば在籍留学生数137756人に対し、中韓のそれが102975人なので74.8%である。しかし、奨学金の門戸は168か国に開かれている。奨学金受給者が中韓に偏っているという事実はない。文科省、日本学生支援機構のサイトをみてもそんなデータは出していないからである。
 
 フィフィやZAKZAKの最大の問題は国費留学生の意義を分かっていないことだ。どの国も数に差はあれ留学生を奨学金を出して迎え入れている。通常、給付型である。日本人学生が米国に留学する際にお世話になるフルブライト奨学金も給付型である。
 
 なぜか。それは留学先の国(日本)を理解してもらい、母国に帰って文化交流を始めとする国交関係の柱になってもらいたいと願っているからだ。あわせて、日本の技術を学び母国の発展に活かしてもらいたいと思っているからである。留学生は両国の懸け橋になるし、そのことで、国どうしの未来が開ける。アメリカがフルブライト他、留学生支援に熱心なのは世界に米国のサポーターを増やしたいからである。
 
 だから、どこの国も返還義務がない。留学期間がすぎれば帰国する学生に返還義務を課しても返還のあてがないことも理由の一つであるし、将来その国を担うであろうエリートに奨学金で絆が深めれば安いものである。
 
 フィフィみたいなタレントはともかく、フジの記者や編集者がそのことを理解していないとすれば、記者・編集者失格である。欠陥記事に乗ってツィッターがお気楽なガセネタを発信し、フォロワーが無批判に追随する。日本の若者の思考回路は危ない。
 
 もっと一次ソースに当たって自分で検証せよといいたい。ネットで自分の都合のいい情報(ジャンク)だけを摘み食いしていると、思考停止になり、権力や周囲に流されるだけの人間になる。自立した思考力を鍛えてほしい。そして、留学生を見習って、国費留学生になるくらい真剣に勉強して多様な国に行ってほしい。
 
 なお、学資に充てるため給付される金品は、給与その他対価の性質を有するものを除き、非課税とされている(所得税法第9条第1項第15号)。日本人学生も留学生も同じである。これに関してもフィフィ氏はガセネタを流している。
  

国費外国人留学生とその待遇(2012年度)
研究留学生 教員研修留学生 学部留学生
レベル大学院レベル学部レベル
資 格大学(学部)卒業以上の者大学(学部)卒業以上程度の者高等学校卒業程度の者
年齢制限
(採用時)
35歳未満17歳以上22歳未満
期 間日本語教育を含め2年以内日本語教育を含め1年6ヶ月以内日本語教育を含め5年間(医・歯・薬・獣医:7 年間)
日本語予備教育半年(北海道大学等54大学)
日本語能力の十分な者は直接入学
1年
(東京外国語大学、大阪大学)
専門教育大学院で専門分野を 専攻教員養成学部で特別研修学部教育を受ける
募集対象国(地域を含む)
世界各国(168ヶ国・地域)
開発途上国等(64ヶ国・地域)
世界各国(100ヶ国・地域)
新規受入予定数
4,042人
89人
460人
奨学金
月額143,000円〜148,000円
月額117,000円〜120,000円
授業料国立大学法人及び高等専門学校機構は不徴収、公私立は文部科学省負担
渡航旅費往復渡航費(航空券)支給
大使館推薦
大学推薦
(海外採用)
×
×
国内採用
×
○(最終年次のみ)
募集要項等
必要書類
こちら
こちら
こちら
学科試験問題
こちら
こちら

日本語・日本文化研修留学生 高等専門学校留学生 専修学校留学生
レベル学部レベル
資格大学(学部)に在学中の者高等学校卒業程度の者高等学校卒業程度の者
年齢制限
(採用時)
18歳以上30歳未満17歳以上22歳未満17歳以上22歳未満
期間1学年間日本語教育を含め4年
(商船学専攻4年6ヶ月)
日本語教育を含め3年
日本語予備教育なし1年((独)日本学生支援機構東京日本語教育センター)1年
(文化外国語専門学校、(独)日本学生支援機構大阪日本語教育センター)
専門教育日本語又は日本事情の特別研修高専3年次に編入学し教育を受ける専修学校の専門課程の授業を受ける
募集対象国(地域を含む)
世界各国(74ヶ国・地域)
開発途上国(40ヶ国・地域)
開発途上国等(49ヶ国・地域)
新規受入予定数
190人
86人
90人
奨学金
月額117,000円〜120,000円
授業料
国立大学法人及び高等専門学校機構は不徴収、公私立は文部科学省負担
渡航旅費
往復渡航費(航空券)支給

大学院
39,749人
(652人(1.7%)増)
大学(学部)・短大・高専
71,244人
(▲1,421人(▲2.0%)減)
専修学校(専門課程)
25,463人
(▲2,409人(▲8.6%)減)
準備教育課程
1,619人
(▲521人(▲24.3%)減)


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