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黄金色に染まる林内のあちらこちらで、落枝を踏みしめる音が聞こえてくる。 時々、奇妙な叫び声が混じる。 そう、ニホンザルの群れが移動中なのである。30頭はいるだろうか。 林道を先回りして、カメラを構える。 最初に姿を現したのは、メスの成獣だった。 ボクの姿に驚いて警戒声を発したかと思うと、駆け足で遠ざかってゆく。 その音に呼応するように、林内の足音は一斉に遠ざかった。 ところが、ワンテンポ遅れて大きなオスの成獣がすぐ近くにのっそりと姿を現した。 今はちょうど繁殖期、顔と尻の紅色が一際目立って見える。 他の個体と比較してもその体躯はずば抜けて大きい。 おそらく、こいつがこの群れのリーダーなのだろう。 若い個体は外敵を見かけると警戒や威嚇の声を発することが多い。 しかし、このリーダー、慌ても騒ぎもせず、目の前にどっかりと腰を下ろした。 時折こちらに視線を投げかけるが、その表情には警戒も敵意もなく、余裕すら感じられる。 きっと群れの異常を感じ取って、敢えてしんがりに出てきたに違いない。 彼は群れが十分に遠ざかったことを確認した後、ゆっくりと腰を上げるとまた群れの足音が去った林内へと姿を消したのだった。 群れの信頼を勝ち取るには、力だけではない何かが必要なのだろうと思う。 これがリーダーたる者の所作ってヤツなのかぁ・・・、と妙に感心した。 |
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