|
実は深刻中国経済
三橋貴明
第3回 中国共産党政府の誤算
政府支出と保護主義
08年11月に大々的に「景気対策57兆円!」
と宣言した際の中国共産党政府は、
おそらく中期的には以下の戦略をもっていたのではないだろうか。
【政府支出を拡大する】
⇒【フロー(GDP)の乗数効果により、個人消費を拡大する】
⇒【内需に向けた企業の設備投資を回復させる】
国内インフラが不充分で、
国民所得も3300ドル(一人当たりGDP、IMFによる)水準にすぎない中国では、
政府支出の乗数効果は他国よりも相対的に高まるはずだ。
元々、個人消費がGDPに占める割合が小さく(極端に小さい)、
さらに対GDPのシェアが年々縮小している以上、
逆に中国の個人消費の拡大余地は広いと考えられる。
【図3-2 中国の名目GDP支出項目 百分比の変遷】
乗数効果とは、何らかの手段で有効需要を増加させた際に、
元々投入した金額よりも国民所得(GDP)が拡大する現象である。
例えば、定額給付金を受け取った人が、その全額を使うと、
GDPの民間最終消費支出(いわゆる個人消費)が増えることになる。
そのときに使われたお金は、
当然ながらそれを受け取った「誰か」の所得になるわけだ。
1回目の「誰か」の消費行動により所得が増えた人が、
新たに受け取ったお金で物やサービスを購入すると、
再びGDPの個人消費が増える。
このように、
最初に投入したお金が何度も人々(及び企業)の間を行き交い、
ぐるぐると回転していくことで、
国家経済のフロー(GDP)は成長していくわけだ。
個人消費についていえば、相対的に貧しい人にお金を投入したほうが、
乗数効果を高めることができるといわれている。
日々の生活に困窮している人であれば、
渡されたお金を全額使ってしまう可能性が高いのである。
GDPにとってみれば、供給したお金を貯め込まれるよりも、
全額を消費に使ってもらうほうが有難いわけである。
中国の場合は国民所得が低いため、公共投資を拡大し、
人民の所得が増えれば、
消費に費やされる割合(経済学的に消費性向と呼ぶ)は高まるはずなのだ。
すなわち、
公共投資から個人消費へのフロー上の波及効果が大きいと考えられていたのである。
だが、現実には、中国当局が目論んだ「公共投資から個人消費への波及」は、
いまひとつ巧くいっていないようである。日本のマスメディアは、やたら、
「中国の小売売上高、対前年比何パーセント増加!」
などの見出しで記事を書くのが好きだが、
全体的に見ると、同国の個人消費は予想ほど火が付いていない。
それは中国当局も認めているれっきとした事実であり、
中国共産党の誤算の一つだ。
中国人民銀行の周小川総裁は、7月3日の講演において、
中国経済の「内需主導への転換」に関連し、以下のように語っている。
「個人消費の拡大が最良の選択だが、口で言うほど易しくはない。
次善の選択として投資を維持、拡大するしかない」
欧米では、中国の個人消費に火が付かない理由として、
貯蓄率の高さを指摘する声が多い。
実際、中国の2008年における一般の家庭の貯蓄率は28.8%と、
過去最高に達した。
中国は元々貯蓄率が極端に高いことで有名だが、
2008年はそれがさらに高まったのである。
また、中国人民銀行が6月12日に発表した同国の消費者意識調査によると、
収入の使い道について、
「より多くを貯蓄に回す」
と答えた人の割合が47%にも達した。
中国人民の将来への不安がまったく払拭できていない以上、
同国で個人消費に火が付かないのは、むしろ当たり前ともいえる。
同調査では、収入を「より多く消費に回す」と答えた人の割合が15.1%と、
前回調査時(29.7%)と比べ、14.6%もの低下になってしまった。
2008年に貯蓄率を史上最高に高めた中国の一般家庭は、09年に入って以降、
「貯蓄志向」を却って強めていっているのである。
ところで、前述の講演において、中国人民銀行の周総裁は、
「貯蓄率が大幅に上昇しているのは、家計部門ではなく企業部門である」
と主張し、
家庭の貯蓄率上昇が個人消費拡大のボトルネックになっているという指摘に
反論している。そして、この反論は「ある意味」で正しい。
何しろ、中国の家庭の貯蓄率が上昇しているのは確かなのだが、
企業部門の貯蓄率は、それに輪をかけて高まってしまっているのである。
中国国家統計局によると、
2008年の同国の「国民貯蓄率(国全体の貯蓄率)」は、
じつに51.3%にも達した。
中国の1992年における国民貯蓄率は36.3%であったため、
16年間でおよそ15ポイントも増加した計算になる。
現在、中国では確かに家計の貯蓄率が高止まりしている。
だが、それ以外の部門(企業や政府など)の貯蓄率は、
さらに上昇してしまっているわけだ。
特に、中国の「企業貯蓄率」の上昇は、
各企業が利益を内部留保として滞留させ、
家計部門へ充分にお金を回していないことを意味している。
企業がお金を抱え込んでしまった結果、
消費の力不足に繋がっているというのが、周総裁の反論であった。
個人消費への波及が予想を下回るなか、
2007年まで中国の高度成長を支えてきた外需部門は、
いまやほとんど崩壊状態に至っている。
図3-2の通り、中国はGDPにおける外需(純輸出)のシェアを
2007年にかけて増やしていった。
07年における中国の純輸出対GDP比率は、
9%を上回る水準にまで高まったが、
恐ろしいことに、このうち約八割がアメリカからの貿易黒字なのである。
すなわち、対米貿易黒字は中国のGDPの7%超を占めていたということになる。
サブプライム危機勃発からリーマンショックを経て、
アメリカの消費は寒気がするほどの勢いで縮小していっている。
不動産バブル崩壊を受け、アメリカの貯蓄率は、
08年までは考えられなかった水準にまで上昇してしまった。
まったく異なる環境下に置かれながら、
米中両国の国民は同じように貯蓄率を高めているわけだ。
「『日本経済新聞』2009年7月5日『米貯蓄率、15年ぶりの高水準 消費になお慎重』
景気底入れの兆しが出始めたにもかかわらず、
米家計は消費になお慎重姿勢を続けている。
雇用情勢が悪化しているうえ、
住宅バブル期に膨らんだ借金が重しになっているためだ。
5月の貯蓄率は6.9%と約15年ぶりの水準に上昇。
景気対策の柱である所得税減税が消費を押し上げるまでには至っていない。
貯蓄率は個人が可処分所得のうちどれだけを貯蓄に回したかを示す。
ブッシュ前政権の所得税還付で手取りが一時的に増えた2008年5月近辺を除くと、
05年からおおむねゼロ%台にとどまっていた」
家計の貯蓄率は、可処分所得から消費された分を控除し、
年金基金準備金の変動を加えたうえで、
「家計の可処分所得+年金準備金変動」で割ったものである。
とくにこの説明を覚えてほしいわけでなく、
要は「消費が増えれば貯蓄率は下がり、消費が減れば貯蓄率が高まる」
という原則を理解してほしいだけだ。
すなわち、アメリカの家計の貯蓄率が高まっているのは、
アメリカ人が消費を減らしている結果なのである。
http://voiceplus-php.jp/web_serialization/china_economy/003/index04.html
|
旧日本軍が中国や朝鮮におこなった仕打ちを考えれば、日本人は何も言えないような気がする。
2009/8/1(土) 午前 8:45 [ nanking_atrocities ]