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実は深刻中国経済

三橋貴明

第3回 中国共産党政府の誤算

実は深刻中国経済 第3回 中国共産党政府の誤算 1
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19950609.html

実は深刻中国経済 第3回 中国共産党政府の誤算 2
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19979147.html

実は深刻中国経済 第3回 中国共産党政府の誤算 3
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/20065456.html

政府支出と保護主義

 08年11月に大々的に「景気対策57兆円!」
と宣言した際の中国共産党政府は、
おそらく中期的には以下の戦略をもっていたのではないだろうか。

【政府支出を拡大する】
⇒【フロー(GDP)の乗数効果により、個人消費を拡大する】
⇒【内需に向けた企業の設備投資を回復させる】

 国内インフラが不充分で、
国民所得も3300ドル(一人当たりGDP、IMFによる)水準にすぎない中国では、
政府支出の乗数効果は他国よりも相対的に高まるはずだ。
元々、個人消費がGDPに占める割合が小さく(極端に小さい)、
さらに対GDPのシェアが年々縮小している以上、
逆に中国の個人消費の拡大余地は広いと考えられる。

【図3-2 中国の名目GDP支出項目 百分比の変遷】
 イメージ 1 
乗数効果とは、何らかの手段で有効需要を増加させた際に、
元々投入した金額よりも国民所得(GDP)が拡大する現象である。

 例えば、定額給付金を受け取った人が、その全額を使うと、
GDPの民間最終消費支出(いわゆる個人消費)が増えることになる。
そのときに使われたお金は、
当然ながらそれを受け取った「誰か」の所得になるわけだ。
1回目の「誰か」の消費行動により所得が増えた人が、
新たに受け取ったお金で物やサービスを購入すると、
再びGDPの個人消費が増える。

 このように、
最初に投入したお金が何度も人々(及び企業)の間を行き交い、
ぐるぐると回転していくことで、
国家経済のフロー(GDP)は成長していくわけだ。

 個人消費についていえば、相対的に貧しい人にお金を投入したほうが、
乗数効果を高めることができるといわれている。
日々の生活に困窮している人であれば、
渡されたお金を全額使ってしまう可能性が高いのである。
GDPにとってみれば、供給したお金を貯め込まれるよりも、
全額を消費に使ってもらうほうが有難いわけである。

 中国の場合は国民所得が低いため、公共投資を拡大し、
人民の所得が増えれば、
消費に費やされる割合(経済学的に消費性向と呼ぶ)は高まるはずなのだ。
すなわち、
公共投資から個人消費へのフロー上の波及効果が大きいと考えられていたのである。

 だが、現実には、中国当局が目論んだ「公共投資から個人消費への波及」は、
いまひとつ巧くいっていないようである。日本のマスメディアは、やたら、
「中国の小売売上高、対前年比何パーセント増加!」
 などの見出しで記事を書くのが好きだが、
全体的に見ると、同国の個人消費は予想ほど火が付いていない。
それは中国当局も認めているれっきとした事実であり、
中国共産党の誤算の一つだ。

 中国人民銀行の周小川総裁は、7月3日の講演において、
中国経済の「内需主導への転換」に関連し、以下のように語っている。

「個人消費の拡大が最良の選択だが、口で言うほど易しくはない。
次善の選択として投資を維持、拡大するしかない」

 欧米では、中国の個人消費に火が付かない理由として、
貯蓄率の高さを指摘する声が多い。
実際、中国の2008年における一般の家庭の貯蓄率は28.8%と、
過去最高に達した。
中国は元々貯蓄率が極端に高いことで有名だが、
2008年はそれがさらに高まったのである。

 また、中国人民銀行が6月12日に発表した同国の消費者意識調査によると、
収入の使い道について、
「より多くを貯蓄に回す」
 と答えた人の割合が47%にも達した。
中国人民の将来への不安がまったく払拭できていない以上、
同国で個人消費に火が付かないのは、むしろ当たり前ともいえる。

 同調査では、収入を「より多く消費に回す」と答えた人の割合が15.1%と、
前回調査時(29.7%)と比べ、14.6%もの低下になってしまった。

 2008年に貯蓄率を史上最高に高めた中国の一般家庭は、09年に入って以降、
「貯蓄志向」を却って強めていっているのである。

 ところで、前述の講演において、中国人民銀行の周総裁は、
「貯蓄率が大幅に上昇しているのは、家計部門ではなく企業部門である」
 と主張し、
家庭の貯蓄率上昇が個人消費拡大のボトルネックになっているという指摘に
反論している。そして、この反論は「ある意味」で正しい。

 何しろ、中国の家庭の貯蓄率が上昇しているのは確かなのだが、
企業部門の貯蓄率は、それに輪をかけて高まってしまっているのである。

 中国国家統計局によると、
2008年の同国の「国民貯蓄率(国全体の貯蓄率)」は、
じつに51.3%にも達した。
中国の1992年における国民貯蓄率は36.3%であったため、
16年間でおよそ15ポイントも増加した計算になる。

 現在、中国では確かに家計の貯蓄率が高止まりしている。
だが、それ以外の部門(企業や政府など)の貯蓄率は、
さらに上昇してしまっているわけだ。

 特に、中国の「企業貯蓄率」の上昇は、
各企業が利益を内部留保として滞留させ、
家計部門へ充分にお金を回していないことを意味している。
企業がお金を抱え込んでしまった結果、
消費の力不足に繋がっているというのが、周総裁の反論であった。

 個人消費への波及が予想を下回るなか、
2007年まで中国の高度成長を支えてきた外需部門は、
いまやほとんど崩壊状態に至っている。

 図3-2の通り、中国はGDPにおける外需(純輸出)のシェアを
2007年にかけて増やしていった。
07年における中国の純輸出対GDP比率は、
9%を上回る水準にまで高まったが、
恐ろしいことに、このうち約八割がアメリカからの貿易黒字なのである。
すなわち、対米貿易黒字は中国のGDPの7%超を占めていたということになる。

 サブプライム危機勃発からリーマンショックを経て、
アメリカの消費は寒気がするほどの勢いで縮小していっている。
不動産バブル崩壊を受け、アメリカの貯蓄率は、
08年までは考えられなかった水準にまで上昇してしまった。

 まったく異なる環境下に置かれながら、
米中両国の国民は同じように貯蓄率を高めているわけだ。

「『日本経済新聞』2009年7月5日『米貯蓄率、15年ぶりの高水準 消費になお慎重』
 景気底入れの兆しが出始めたにもかかわらず、
米家計は消費になお慎重姿勢を続けている。
雇用情勢が悪化しているうえ、
住宅バブル期に膨らんだ借金が重しになっているためだ。
5月の貯蓄率は6.9%と約15年ぶりの水準に上昇。
景気対策の柱である所得税減税が消費を押し上げるまでには至っていない。
 貯蓄率は個人が可処分所得のうちどれだけを貯蓄に回したかを示す。
ブッシュ前政権の所得税還付で手取りが一時的に増えた2008年5月近辺を除くと、
05年からおおむねゼロ%台にとどまっていた」

 家計の貯蓄率は、可処分所得から消費された分を控除し、
年金基金準備金の変動を加えたうえで、
「家計の可処分所得+年金準備金変動」で割ったものである。

 とくにこの説明を覚えてほしいわけでなく、
要は「消費が増えれば貯蓄率は下がり、消費が減れば貯蓄率が高まる」
という原則を理解してほしいだけだ。
すなわち、アメリカの家計の貯蓄率が高まっているのは、
アメリカ人が消費を減らしている結果なのである。
http://voiceplus-php.jp/web_serialization/china_economy/003/index04.html

実は深刻中国経済

三橋貴明

第3回 中国共産党政府の誤算

実は深刻中国経済 第3回 中国共産党政府の誤算 1
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19950609.html

実は深刻中国経済 第3回 中国共産党政府の誤算 2の続き
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19979147.html

バブルは進む

 さて、中国の中小企業が相変わらずの苦境から抜けられないなか、
不動産と株式のバブルのほうは、予想通り順調に拡大を続けている。

 まずは不動産であるが、
中国国家発展改革委員会が発表した5月の主要70都市における不動産販売価格は、
前月比で0.6%上昇し、3ヵ月連続のプラスになった。
前年同月比で見た数値は、いまだに0.6%の下落であるが、
マイナス幅は4月の1.1%よりも縮小した。

 指標を見るかぎり、
中国の不動産価格はすでに底入れをした可能性があるわけだ。
というよりも、この世界的な不動産バブル崩壊局面において、
不動産価格が「下落しない」というだけでも凄い話だ。
相当な額の資金が、不動産市況につぎ込まれている証である。

 面白いと思うのは、最近はわが国のマスメディアまでもが、
中国経済の記事を書く際に、
「中国人民銀行が、景気刺激策の一環として銀行に融資増大を指導した結果」
 などの枕詞をつけ加え、銀行の融資増大をきっかけに
株式や不動産バブルが再燃したと、きちんと説明しているのである。
それほどまでに、今回の中国のバブルは
「中国人民銀行主導」の色が濃いのであろう。

 以前ならば、国内大手紙は、
「中国経済絶好調! 不動産価格も鰻上りに!」
 などの、いい加減な見出しで、日本人の中国投資を煽ったところである。
今回のバブル局面において、
日本の大手紙が比較的冷静な論調を保っているのは、
大変好ましいことだと思う
(しかし、前回も書いたように、テレビのほうは相変わらず大変無責任な論調で、
日本の中国投資熱を高めようとしている)。

 中国人民銀行の「指導」を受け、
融資拡大を再開した中国の銀行は、2009年の最初の四半期だけで、
年間融資目標金額の九割を達成してしまった。

 その後も、同国の銀行の「融資熱」はまったく衰えを見せていない。
09年5月の銀行融資増加額は、対前年同月比で108.6%もの増加になった。
一年前の同じ月と比べ、二倍以上もの金額を融資したということになる。

 一年前の二倍ものお金が銀行から流れ出ている以上
、不動産価格が底入れし、株価が上昇していっても当然だ。
ロックアップ期間の終了を迎え、
中国株売却の機会をうかがっている外資系金融機関も、
さぞや安堵の息をついたことだろう。

 六月後半以降、中国の株式バブルは再びアクセルを踏み込んだ様子である。
七月に入るや否や、上海総合株価指数が、
およそ13ヵ月ぶりに3000ポイントの大台を回復した。
特に、不動産株などの高騰が目立っているため、「いかにも」という感じである。

 2009年1月から5月までの融資増加額は、累計で5兆8000億元に達し、
前年(08年)の年間実績4兆9100億元を軽々と上回っている。
09年6月の融資増加額は1兆2000億元程度になった模様で、
09年通年では10兆元(およそ135兆円)を突破する可能性が濃厚になってきた。

 中国の国務院発展研究センターの魏加寧マクロ経済研究部副部長は、
「銀行融資の半分は株式市場などに流れ込んでおり、実体経済に入っていない」
 と、指摘している。

 中国の国内株式市場は、上海と深センの二大市場を合わせても、
時価総額が20兆元(約270兆円)規模である(09年6月30日時点)。
そこに、6月までに3.5兆元〔(5兆8000億元+1兆2000億元)÷2〕
すなわち約47兆円もの資金が流れ込んだのだ。
この状況で、株価が高騰していかなければ、かえって異様というものだろう。

 もちろん、不動産市場にも相当額の資金が流れ込んでおり、
6月末の北京中心部における公開入札で、
1平方メートル当たりの落札価格が史上最高値を更新した。

 すでに中国政府は6月の時点から、【銀行】⇒【大企業】⇒【株式市場】への
資金の流れについて危惧を表明している。

 6月25日には、中国の銀行業監督管理委員会が国内の銀行に対し、
企業などへの融資審査を厳格化するよう指示する「緊急通知」を出した。
半年前には、銀行に融資拡大を促す行政指導を行なったにも関わらず、
今度は一転、引き締めの通知を出したわけだ。

 観測筋の一部には、今度は中国人民銀行が、
融資抑制の行政指導を開始するのではないかという憶測までもが流れている。

 金融緩和にせよ、金融抑制にせよ、
とにかく「共産独裁国」である中国当局の政策は、
ドラスティックである。
別の言い方をすると「行き当たりばったり」になるわけだが、
政府が民間企業に「指示命令」が可能な分、
中国当局には長期的な視点が欠如しているように思えてならない。

 日米などの資本主義国では、政府が民間企業に、
「企業融資を、いくらいくら増やせ」
 などと「命令」することはできない。
資本主義国の政府は、せいぜい政策金利の引き下げや量的緩和により、
銀行に融資拡大を「促す」ことができるだけである。
とはいえ、銀行は直接的には政府に説明責任を負っているわけではない
(少なくとも「護送船団方式」が終焉を迎えた以降の日本では)。
銀行が政府の指示に従い、融資を拡大した結果、
不良債権を増やしてしまった場合、
経営者が株主から経営責任を追及される羽目になる。

 もちろん国家経済全体を思えば、
各銀行の経営陣が自行の先行きなど気にせず、
企業融資を拡大したほうが、フロー(GDP)は成長するわけだ。
逆に、各銀行が自分たちの経営のことだけを考え、
企業融資を絞り込んでしまうと、貸し剥しや貸し渋りにより、
企業倒産が増加する可能性が生じる。

 ミクロ(各銀行)の視点で正しい行動が選択されても、
それが合成されたマクロ(国家経済)の世界では、
意図しない結果が生じてしまう。まさに、合成の誤謬である。

 中国の場合は各銀行が不良債権増加を恐れ、中小企業への融資を絞り込み、
大企業や不動産業への融資を拡大している。
それ自体は、各銀行にとっては正しい選択なのかもしれない。
だが、各銀行の行動が合成された国家経済の視点で見ると、
中小企業の危機拡大や株式・不動産のバブル化を引き起こしてしまっているわけだ。

 政府が企業に命令することが可能な中国においてさえ、
合成の誤謬からは自由にならないわけである。
そう考えると、なかなかに興味深い事例に思える。

 この「中国式合成の誤謬」は、中国共産党政府にとっては、
間違いなく誤算の一つである。
そしてもちろん、中国共産党の誤算は本件だけに限らない。

 6月末の銀行業監督管理委員会による緊急通達以降も、
中国の株価上昇ペースは、特に緩んではいない。
上海総合指数は7月6日に3124ポイントに達し、1年1ヵ月ぶりの高値を更新した。

 07年後半以降のバブル崩壊で痛い目を見た中国政府にとって、
株式バブルの再来は避けたいところだろう。
先にも書いたように、
中国人民銀行が融資抑制の指導を始める可能性も否定できない。

 中国当局が金融引き締めに走れば、
前回同様に同国の株式や不動産のバブル膨張は回避できるだろう。
上海総合株価指数が3000ポイント前半の水準であれば、
金融引き締め後の株価下落も、それほど大規模にはならない可能性が高い
(07年10月の引き締め時の上海総合株価指数は、6000ポイントを超えていた)。

 とはいえ、中国当局は証券市場や不動産市場のバブル化に加え、
実体経済面の悪化という問題も抱えてしまっている。
現在の公共投資頼みの景気回復をいつまで続けられるかについては、
さすがの中国共産党にも予想をつけられない。

 万が一、金融引締めによるバブル崩壊に、公共支出拡大の息切れが重なると、
07年を上回るハードランディングが避けられなくなる。
国内の暴動や異民族との衝突という問題を抱える中国当局は、
この状況で経済の急速な悪化は、絶対に回避しなければならないわけだ。
http://voiceplus-php.jp/web_serialization/china_economy/003/index03.html

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実は深刻中国経済

三橋貴明

第3回 中国共産党政府の誤算

実は深刻中国経済 第3回 中国共産党政府の誤算 1の続き
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19950609.html

中小企業の8割が危機に直面

 前回、中国人民銀行の「命令」により
融資拡大に乗り出した中国の銀行が暴走し、
株式市場や不動産市場がバブル化していると書いた。その後、
「融資拡大を命じられた中国の銀行が、不良債権化を恐れ、
資金を切実に必要としている中小企業ではなく、
大企業や建設会社に向けた融資を極端に拡大した。
大企業は金融子会社経由で資金を証券市場に流し、結果、
不動産と株式のバブルが再燃している」
 という、現在の中国国内経済に関する説明を裏付ける報道が、
次々に出てくるようになった。

 まずは、中国の中小企業の状況から見てみたい。
09年6月28日に、中国中央テレビの経済番組「経済反小時」が伝えた、
同国における中小企業の状況は、かなりショッキングなものだった。

 中国社会科学院の調査結果によると、
中国に存在する4200万社以上の中小企業のうち、すでに四割が倒産し、
さらに四割が倒産の危機に直面しているという。
同国の中小企業のじつに八割が、
経営危機に陥っている(もしくは倒産)というわけである。

 特に、同国の中小企業が経営危機に陥ってしまうのは、
ほとんどのケースが「資金繰り困難」が主因とのことで、
筆者は思わず唸り声を上げてしまった。
中国の銀行が、融資相手を大企業に偏重させている弊害が、
露骨なまでに出ているわけだ。

 しかし中国において、
2008年末時点の中小企業の不良債権率が11.6%と、
一割を上回っている事実を考えると、
同国の銀行が中小企業相手の融資に二の足を踏んでいるのも、
無理もない気がする。
中国の銀行の全体的な不良債権率は2%前後であるため、
中小企業への融資が不良債権化する確率は、確かに極端に高い。

 じつは、中国の国内銀行が中小企業相手の融資を嫌がっているのは、
何も最近に始まった傾向ではないのである。
2005年7月の時点で、すでに中国銀行業監督管理委員会が、
全国の銀行に対し、
中小企業への融資を優先させるよう通達を出しているのだ。
しかし、同委員会の通達から四年が経過しているにも関わらず、
状況はまったく改善していない。

 中国の中小企業は、銀行の貸し渋りに苦しめられている最中に、
世界的な外需縮小局面を迎えてしまったわけである。
これは、なかなかに厳しい経営環境である。

「経済反小時」によると、中国の企業の99%は中小企業とのことである。
中小企業の割合が99%と聞くと、驚かれる方が多いかもしれない。
だが、日本も似たようなもの(中小企業の割合が99%超)なので、
特に中国が目立って中小企業の数が多いというわけでもない。

 中国の中小企業は企業数が多いのみならず、
同国のGDPの六割に貢献している国内経済の大黒柱だ。
GDPの六割を稼ぎ出す中小企業のうち、
八割が危機に直面しているというのが、現在の中国経済の姿なのである。

 しかも、同国の中小企業が経営危機に陥るケースのほとんどは、
資金繰り面の問題が理由なわけだ。それにも関わらず、同国の銀行は、
「不良債権化する確率が高い(確かに高いようだが)」
 という理由で、中小企業への融資に二の足を踏んでいる。
結果、資金繰りが悪化した中小企業は、次々に倒産していく。
企業倒産が増えると、
中国の銀行はますます中小企業への融資に躊躇するようになる。

 ものの見事な悪循環になっているわけだ。

 中小企業の八割が危機に瀕している国が、
よくもまあ6%を上回る経済成長を達成できる
(注:厳密には「発表できる」)ものである。
しかも、
実質的な失業率が日本の二倍近くに達している状況下においてである。

 とはいえ、
世界銀行が6月18日に発表した中国のGDP成長率予測を読むと、
何となく納得させられた気分になったのも確かだ。
何しろ世界銀行は、2009年を通した中国の予想成長率7.2%のうち、
6%分が「政府の支出」によるものと予測しているのである。
要するに、中国政府の公共投資拡大が、
2009年における予想経済成長率の八割以上を占めるということである。

 逆の言い方をすれば、いまや政府支出以外に、
中国には目ぼしい成長要素は残っていないというわけだ。
同国の中小企業の多くは消費財を生産する製造業で、
標的市場は国内と海外の消費者だ。
特に、世界最大の消費市場であるアメリカの落ち込みは、
中国の中小企業の経営を直撃しているわけである。

 世界銀行は、中小企業がバタバタと倒産し、
失業者数が膨れ上がるなかにおいても、
政府支出拡大により、
中国経済が高成長を達成すると予測しているわけだ。
相当に歪んだ経済成長だとは思うが、確かに可能性はゼロではないだろう。
http://voiceplus-php.jp/web_serialization/china_economy/003/index02.html

実は深刻中国経済

三橋貴明

第3回 中国共産党政府の誤算

電力消費量公表を中止せよ!

 2009年5月後半から6月にかけて、
中国の「発電量」の問題がクローズアップされ始めた。
発電量の問題とは、筆者がこれまでに何度か取り上げた、
電力消費量の件とほぼイコールである。
要するに、発電量や電力消費量が
対前年比で減少を続けているにも関わらず、
中国のGDPや工業生産がプラス成長になるのはおかしいという、
至極当たり前の疑問である
(※新聞記事などにおいて、発電量と電力消費量を混在させている
ケースを見かけるが、両者は異なる指標である。ただし、数値はほぼ同一になる)。

 日本国内においても、『日経産業新聞』が5月27日に
「中国経済、発電量と物価で測れ」なるタイトルで、
中国の景気はむしろ発電量と物価により、
状況を判断すべきという主旨の記事を書いている。
行間に「中国の景気は経済成長率のみでは測れない」という主張が見え隠れし、
なかなか本質を突いた記事になっていた。

 同記事において特に面白かったのは、以下の部分である。

「内陸部のインフラ投資に直結する分野では活況を呈しているとの報道も多い。
しかし、今年4月の中国の発電量は前年比2.4%減にとどまる。
内陸部の活況が沿海部まで波及していないことを示している」

 中国は外需悪化が原因で急収縮する国内経済を、
4兆元(約57兆円)の政府支出により下支えしようとしている。
政府支出とは具体的に何かといえば、ずばり公共投資の拡大である。

 今回の景気対策では、インフラ投資が遅れていた中国内陸部における、
公共事業拡大が目玉になっている。
結果的に、確かに内陸部のインフラ事業は、
それなりに活況を呈しているようである。
だが、沿海部の産業の中心であった製造業には、必ずしも波及していない。
特に、広東省など輸出が産業の中心だった地域の企業は、
現在も青息吐息の状況に喘いでいる。

 ところで、中国の発電量は2008年以降、一貫して下落を続けている。
09年第1四半期における同国の発電量は、以下の通りである
(注:数字はすべて対前年比)。

 ☆☆☆2009年3月 マイナス1.3%☆☆☆
 ☆☆☆2009年4月 マイナス3.5%☆☆☆
 ☆☆☆2009年5月 マイナス3.5%☆☆☆

 前回、米経済紙『ウォールストリート・ジャーナル』に、
国際エネルギー機関(IEA)が中国のGDP成長率と
エネルギー需要の食い違いについて、疑問視する記事が掲載されたと書いた。
このIEAの疑念に対し、
中国の国家統計局の責任者が、以下のように反論している。

「2009年第1四半期に、中国の産業構造が大きく変化した。
電力使用量の比較的少ない第三次産業の比重が高まり、
その第三次産業の成長率が高かった」
「電力消費の大きな産業の生産が減少し、
電力消費の小さなハイテク産業が大きく成長した」
 思わず笑ってしまうほどに、苦しい弁明だ。

 最初の「産業構造の変化」であるが、
確かに中国の第三次産業が成長していることに間違いはない。
しかし、工業生産のほうにしても、
「数字上は」充分なプラス成長になっているのである。
例えば、中国の国家統計局が6月12日に発表した5月の工業生産は、
対前年同月比で8.9%成長となっている。
発電量が対前年比で減少するなか、工業生産が9%近く成長しているわけである。

 中国のエネルギー消費効率が突然高まったのでないかぎり、
真相は二つしかないわけだ。
すなわち、発電量が嘘なのか、工業生産が嘘なのかのどちらかである。

 ついでに書くと、
国家の発電量に影響を与えるほどの大掛かりな構造変化が、
半年や一年という短期間で可能なはずがない。
二次産業から三次産業への構造変化は、
十年、二十年という歳月を費やして達成されるものだ。

 参考までに、中国のGDPに製造業が占める割合をご紹介しておこう。
何と、2007年における工業(製造業)が占める割合は55%と、
中国のGDP全体の半分を超えているのである。
中国経済は、確かに「世界の工場」という呼び名に相応しく、
製造業に「依存しすぎ」ていることが如実に分かる。
同時に、世界的な外需縮小が原因で、
工業製品に対する需要が激減している現在の経済環境が、
同国にとってどれほど脅威であるかについても理解できるわけだ。

【図3-1 中国の産業別GDP構成 2007年】
イメージ 1
今後の中国経済において、製造業の割合が縮小し、
サービス業が拡大していくことは確実だろう。
しかし、それは決して一年やそこらの短期間で達成されるものではないのだ。

 また、
二つ目の「電力消費の小さなハイテク産業が大きく成長した」であるが、
こちらは明確に嘘である。
中国の5月の工業生産に関するデータを見ると、
高い伸びを見せているのは
交通運輸設備(対前年比12.8%増)やセメント(同13.5%)、
それに自動車(同29%増)なのである。
これらの産業が「電力消費の大きな産業」に該当しないとは、とても思えない。

 また、コンピュータ・電子設備(同4.3%増)の数値を見るかぎり、
ハイテク産業が目立って成長しているという事実もない。
むしろ、インフラ投資や自動車と比べ、
低い成長率しか達成できていないのが現実なのだ。

 さらにいえば、中国の製造業全体において、
ハイテク産業のシェアは元々それほど大きくはない。
例えば、中国の輸出統計における工業製品について品目別に見てみると、
何と75%以上が機械・輸送設備及び雑製品の二種で占められているのである。
シェアが小さいハイテク産業の電力消費が全体に与える影響など、
微々たるものだ。

 前回も書いたように、中国の09年第1四半期の電力消費量は、
中国電力企業連合会の調査によると、前年同期比マイナス4%であった。
だが、工業生産の電力消費量に絞ると、前年同期比マイナス8.38%と、
全体を上回る落ち込みを見せていたのである。

 4月11日に中国の温家宝首相は、
同四半期の鉱工業生産の伸び率は5%を上回ったと語った。
工業生産における電力消費量がマイナス8.38%に落ち込む中、
鉱工業生産が5%を超す成長を遂げたといわれてしまっては、
疑問をもつなというほうが無理であろう。

 2009年春以降、筆者のみならず、
世界中の専門家たちが中国の発電量・電力消費と、
経済成長率の関係について疑問視するようになった。
発電量や電力消費量が対前年比でマイナスに落ち込むなか、
成長率が高まっているといわれても、
そのまま信じるほうがおかしいのである。
最後には、中国国内においても、
さすがに電力消費量と工業生産増加率の乖離が
問題視されるようになってしまった。

 結果、中国がどのように対応したか、ご想像がつくだろうか。
 何と、これまで毎月定期的に中国全土の電力消費量を
発表していた中国電力企業聯合会が、
唐突にデータの公表を取り止めてしまったのである。
その驚くべき報道に接し、筆者も慌てて調べてみたのだが、
確かに2009年4月以降の電力消費量については、
現在に至ってもいまだに発表されていない
(09年3月以前は、前月の電力消費量を、各月の中旬に公表していた)。

 しかし、電力消費量と工業生産の乖離を
世界中から疑問視されているからといって、
いきなり公表取り止めという過激な手段に出るとは思ってもみなかった。
これでは、逆に統計情報を疑ってくれといっているようなものである。

 一応、発電量については、いまのところ発表が継続されている。
しかし、このままでは、同指標の公表が取り止めになるのも、
時間の問題のような気がしないでもない。

 7月4日。中国の国家電網は、6月の同国発電量について、
上旬が前年同期比マイナス1.7%、中旬が3.8%増、
下旬は7%増になったと発表した。
いきなり「上旬」「中旬」「下旬」に
細分化して発電量の発表を始めたのには、かなり唐突感があった。
結局、一カ月間を通すと、6月の発電量は前年同月比で
3.6%のプラス成長になったという。

 6月中旬から発電量がいきなり上向きになった事実について、
中国の電力会社幹部が、同国の気温が急上昇し、
エアコン向けの需要が伸びたためであり、
「製造業の回復が本物か、注意深く観察する必要がある」
 と、何だかよく分からない説明をしていた。

 中国人のエアコン需要だけで、これほどまでに発電量が増減するならば、
ここ数四半期の電力消費量と工業生産増加率の乖離についても、いっそ、
「工業生産は増加していたものの、中国人民が突然エコと省エネに目覚め、
エアコンの利用が激減したために、電力消費量が減少していたのである」
 とか何とか説明したほうが、逆に説得力をもつと思うのだが、いかがだろうか。
 むろん、冗談である。
http://voiceplus-php.jp/web_serialization/china_economy/003/index.html

実は深刻中国経済 第3回 中国共産党政府の誤算 2
http://voiceplus-php.jp/web_serialization/china_economy/003/index02.html
第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18723021.html

第二回 国家の負債を整理する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18917330.html

第三回 財政支出拡大を評価する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19059102.html

第四回 大転換 前編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19258443.html

第五回 大転換 後編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19402449.html

六回 節約から成長へ 前編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19601620.html

第七回 節約から成長へ 後編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19735954.html

第八回 金融資産と合成の誤謬(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19808142.html

第九回 日本とアメリカ 政府の資金調達(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19891720.html

三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第九回 日本とアメリカ 政府の資金調達(2/3)
2009/07/22 (水) 12:40
(1/3の続き)
 FRBや米国政府が何らかのミスをしてしまい、
ドル暴落の局面を迎えると、
さすがに米国債の格付けは引き下げざるを得ないだろう。
何しろ、価値が刻一刻と低下していく通貨で売買される債券の格付けが
AAAと言われても、無理がありすぎる。

 もちろん、米国政府は政治的に
格付け機関の引き下げを押し留めようとするだろうが、
その場合は、現在の格付けシステムそのものが、
信用を完全に喪失することになる。

 そして万が一、米国債が格下げされるような事態に至ると、
当然、ドルの価値は他通貨に対し、
さらに落ち込んでいくことになるだろう。
何しろ、ドルの価値を維持していた(=裏付けていた)のは、
最高格付けの米国債そのものなのであるから。

 現在のアメリカ、そしてFRBは、
かなり危ない橋を渡っているとしか言いようがないのである。

 それに対し、日本の長期国債金利は、
相も変わらず世界最低水準で安定飛行を続けている。
そしてここが重要だが、日本の長期金利は他国に比べ、
ボラタリティ(変動率)が極端に小さいのである。

 アメリカの長期金利は、09年4月以降、一貫して上昇傾向にあり、
これはこれで確かに問題ではある。
しかし、それにも増して問題になっているのは、
FRBの国債買取増額を巡る市場の思惑が原因で、
長期金利が乱高下している事実である。

 米国債の金利は、
日本国債と比べてボラタリティが大きくなっているわけだ。
これはアメリカ政府やFRBのオペレーションが、
市場(より具体的には市場のマネー)のニーズと
ズレている可能性を示唆している。
今後の国債増発や国債買取の際には、
これまで以上に細心の注意が必要になるだろう。

 翻って日本を見ると、今後数ヶ月間で長期金利が上昇したとしても、
せいぜい1.5%台で推移すると予想されているに過ぎない。

『バークレイズ証:長期金利9月末に1.55%程度に上昇、政治リスクも
 (2009年7月14日 ブルームバーグ紙)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=a9NRWz8KF0TM』

 バークレイズ・キャピタル証券は、今後の日本の長期金利について、
冒頭の「景気回復基調の継続」及び「国債増発による需給懸念」などを理由に、
9月末頃に1.55%程度へ上昇するとの見通しを示している。

 政府の資金調達について考える際には、
「国債金利が低い」
「国債金利が下がる」
 この二つの事象について、きちんと切り分けると理解がしやすくなる。

 日本の国債金利が低いのは、何度も解説した通り、
国内に「国債を買いたいマネー」が溢れかえっているからである。
邦銀や年金などの機関投資家の手元に、
我々一般の日本国民の預金やら保険料やらが積み上がり、
機関投資家は何らかの手段で運用する必要性に迫られている。
結果、国債への需要が供給を上回り、国債価格が高い、
すなわち「国債金利が低い」というわけだ。

 現在の日本の長期国債金利は世界最低だが、
ここからさらに「国債金利が下がる」場合、
果たしてそれは何を意味しているだろうか。

 日本の機関投資家の手元にマネーが溢れているからといって、
誰も好んで金利が極端に低い日本国債など買いたくはないのである。
邦銀などが日本国債に群がっているのは、
単純に「他に目ぼしい運用先がない」ためだ。

 この状況から、さらに国債金利が下がるということは、
「政府」以外のお金の借り手が、
ますます日本国内からいなくなっているという事実を意味する。
政府以外のお金の借り手が減っていく状況とは、
これはすなわち「不景気の進行」というわけである。

 逆の言い方をすると、景気がいい環境とは、
政府以外の民間企業や家計がこぞってお金を借り、
投資やら消費やらに費やす状況を意味するわけだ。
 80年代末の日本のバブルや、先日までの世界各国の不動産バブルを
思い起こしてみて欲しい。要するにバブルとは、
好景気が究極的に到達した姿である。
民間企業や一般家計が、争うように銀行からお金を借り、
不動産に投資をし、耐久消費財を買い求める。これこそが、バブルだ。

 この場合、民間の資金需要が高まっている以上、
政府が発行する国債への需要は減少する。
結果、国債価格は下がり、国債金利(=長期金利)は上昇していくわけだ。
 とは言え、好景気の中においては、別に政府が支出を拡大する必要もなく、
民間からの税収も増大していくため、
そもそも国債発行の必要性が薄れてくることになる。

 好況時に長期金利が上昇していく以上、
当たり前だが不景気のときは下がっていく。
不況が深刻化すれば、民間の資金需要が縮小する。
そうなると、銀行などは手元のお金の貸出先に困る状況に陥り、
国債を購入せざるを得なくなるわけだ。

 銀行が国債を購入すれば、国債金利は下がり、
政府は低利で調達した資金を使い、景気対策を実行することが可能になる。

 要するに、日本のように、国内に金融資産が溢れている国では、
「借金」とは
民間と政府が代わる代わる引き受けている存在に過ぎないわけだ。
好況時には民間が借金を増やし、不況時は政府が借金を増やす。
ただ、それだけの話に過ぎない。

 ちなみに、
わざわざ「日本のように、国内に金融資産が溢れている国」と書いた以上、
国内の金融資産が不充分な国(つまり、世界のほとんどの国)では、
このロジックは成立しないので注意して欲しい。
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/07/22/006190.php

(3/3に続く)

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