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第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18723021.html

第二回 国家の負債を整理する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18917330.html

第三回 財政支出拡大を評価する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19059102.html

第四回 大転換 前編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19258443.html

第五回 大転換 後編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19402449.html

第五回 大転換 後編(2/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19448855.html

三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第五回 大転換 後編(3/3)

2009/06/25 (木) 15:30
(2/3の続き)

 日本政府の負債は確かに巨額だが、
日本国家としては世界最大の金持ちであり続けているのには、
上記のような背景があるのだ。
端的に言うと、バブル崩壊以降に民間の負債が減った分、
政府の負債が増えた、ただそれだけなのである。

 日本が再び好況期を迎えると、
今度は民間が「借金による支出」を拡大していくことになる。
すると、当然ながら民間の負債が増え始め、
逆に政府の負債が減っていくことになる
(基礎的財政収支が黒字化するほど、劇的に税収が増え、
政府支出が減った場合に限定されるが。)。

 要は、国家経済において民間と公的部門(政府)は、
シーソーをやっているようなものなのだ。
日本のように国内に金融資産が溢れ返り、
海外からの資金調達が不要な国は特にそうである。

 国家経済をマクロ的視点、鳥瞰的な視点で捉えると、
このシーソーについて誰でも理解できる。
だが、マスメディアや経済評論家が一点(例:政府の負債)のみを
クローズアップさせ、問題を「創り出そう」とするために、
ややこしい話になるのである。

 以上、筆者は「基礎的財政収支の黒字化」を先延ばしし、
さらに様々な附帯条件をつけることで有名無実化し、
同時に国家財政の目標を
「公的債務対GDP比率の改善」に切り替えた今回の骨太2009素案を、
大変高く評価している。
ところが、政府の素案発表直後から、
例によりマスメディアのとんでもないミスリードが、
大々的に始まったのである。

 まずは、はっきりとさせておきたいのだが、
骨太の方針2009素案には「消費税」という言葉は一切出てきていない。

 但し、素案を討議している経済財政諮問会議において
「民間議員」が中期的な財政試算を示した。それは、
「消費税を2015年度にかけて10%まで引き上げる場合でも、
基礎的財政収支の黒字化は21年度以降にずれ込む」
 というものだった。

 別に、筆者は民間議員が試算をするなとか、
消費税という単語を使うなとか、妙なことを言う気は毛頭ない。
とは言え、試算とはあくまで試算である。
しかも、政府関係者ではなく、
民間から参加している議員が試算したのであるから、
どう考えても「参考情報」であろう。
何しろ、骨太素案自体には、「消費税」という単語が
一度も登場していないのである。

 ところが、その後の日本のマスメディアによる
「骨太2009」関連報道は、まさに消費税アップ一色になったのである。
代表的なものとして、共同通信の記事をご紹介しよう。
http://www.47news.jp/CN/200906/CN2009060901000730.html
『17年度に消費税率12%必要 財政再建は10年先送り
政府は9日、経済政策の指針となる「骨太の方針2009」の素案を
経済財政諮問会議に提示、景気悪化を受けて財政再建を
10年程度先送りする新たな財政健全化の目標を打ち出した。
同時に示した財政試算では、
目標達成には2017年度までに消費税率の12%程度への
段階的な引き上げが避けられないとの見通しを明らかにした。(後略)』

 共同通信のみならず、日本の大手新聞社はこぞって同じ論調
「消費税が12%に引き上げられる!」の「見出し」で記事を書いていた。
例えば日本経済新聞の見出しは、
「大幅な消費増税へ布石? 『骨太09』目標達成『10%超』必要」
 であったし、読売新聞に至っては「消費税引き上げから逃げるな」と、
本質を明らかに間違えた社説を堂々と掲載していたのだ。
その他の大手紙も、似たり寄ったりだ。

 特に、共同通信の報道が悪質に思えるのは、
同社の記事が消費税12%への引上げが、一民間議員の試算に過ぎず、
骨太2009の素案自体には「消費税」という言葉が
一切出てこないことに触れていないからである。
一応、「新目標は、国内総生産(GDP)に対する
国と地方の債務残高の比率を20年代初めに引き下げることを基本とした。」
と取り繕ってはいる。
とはいえ、見出しからして「消費税率12%必要」としている以上、
明らかに主眼を歪めた、
悪質なミスリードであるとしか言いようがないわけだ。

 それを言ったら、
日本経済新聞の「大幅な消費増税へ布石?」という見出しも、相当に酷い。
まさかとは思うが、
書いている本人が主眼を歪めていることを自覚しているからこそ、
最後に「?」をつけたのではないかと邪推したくなる。

 今回の日本政府の方針変更は、
日本経済の目標を「節約」から「成長」へと切り替える、
歴史的な大転換である。
「公的債務対GDP比率」を継続的に引き下げるということは、
GDP成長率を高め、
国民所得を拡大していくことに主眼を置いたという宣言に等しいわけだ。

 しかし本質が見えないか、
あるいは見ることを拒否しているマスメディアは、
素案本文に全く書かれていない「消費税」を主題の中心に置き、
記事を書く。
政権批判をするためなら、主眼を歪めた記事として報じることに、
全く躊躇がないわけだ。

 これこそが、国内マスメディアの本質であり、
本性であるとしか言いようがないのである。
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/25/005890.php

第六回 節約から成長へ 前編(1/3)
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/30/005949.php
第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18723021.html

第二回 国家の負債を整理する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18917330.html

第三回 財政支出拡大を評価する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19059102.html

第四回 大転換 前編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19258443.html

第五回 大転換 後編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19402449.html

三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第五回 大転換 後編(2/3)

2009/06/24 (水) 14:15
(1/3の続き)
 先に、日本の基礎的財政収支黒字化が可能かどうかという質問に、
筆者は「継続的には不可能」と答えたが、
これは米英加三国の事例を見ているからである。

 基礎的財政収支黒字化は
「好景気(それも、ITバブルや日本の不動産バブルに匹敵するレベルの好景気)」
の副産物に過ぎないのであって、「目標」にするべきではないのだ。

 逆に、名目GDPの継続的な高成長を目標に設定し、
それが達成されたあかつきには、税収が増え、
景気対策の政府支出も不要になるため、政府の負債増加のペースは緩むか、
あるいは基礎的財政収支の黒字化が達成されるだろう。

 その後、景気サイクルが再び不況に突入し、税収が減り、
政府の景気対策が拡大すれば、
基礎的財政収支は再び赤字路線を進むことになる。
しかし、気にする必要は全くない。
何しろ、世界中の全ての政府が同じように、
政府の負債を増やし続けているのだから。
しかも、多くの政府は日本のように「国内から自国通貨建て」ではなく、
「海外から外貨建て」の借金を積み重ねているのである。

 そもそも、日本のマスメディアや経済評論家が、
なぜか全く理解しようとしないことが一つある。
それは、バブル崩壊後に、日本政府の負債が増加した「理由」である。

 実は、バブル崩壊時の1990年時点においては、
日本政府の負債額は資産とほぼ同額だったのである。
(若干、負債額の方が大きかったが)別の言い方をすると、
政府の純資産がプラスマイナスゼロに近かったわけだ。

 図1-1でご紹介した、日本国家のバランスシートを改めて見返して欲しい。
 イメージ 1 
借方(資産側)に政府の資産467.6兆円が、
貸方(負債側)には政府の負債974.9兆円と
純資産▲507.3兆円が計上されている。
バブル崩壊時は政府の資産と負債がほぼ均衡していたため、
純資産(資産−負債)の額がゼロに近かったというわけだ。

【図5-2 非金融法人企業・政府の純資産額推移(単位:兆円) 1990年-08年】
イメージ 2 
出典:日銀のデータから筆者作成

 図5-2は、バブル崩壊後の政府及び非金融法人企業(一般企業)の
純資産額の推移を比較したものだ。
政府も企業も、負債額が資産額を上回っているため、
純資産は「純負債」(=純資産がマイナス)となっている。

 この図の赤い部分が政府の純負債の変動を示しているのだが、
1990年時点ではほぼゼロに近かったことがお分かり頂けるだろう。
これが1990年代後半から拡大を始め、
2008年時点では純負債が500兆円を超えるまでに拡大したわけだ。
(=純資産▲500兆円)

 実は、この図でより重要なのは赤い部分ではなく、青い部分の方だ。
すなわち、政府の純負債ではなく、
非金融法人企業の純負債の方がポイントなのだ。

 非金融法人企業の純負債は、
バブル崩壊時には600兆円を上回っていた(=純資産▲600兆円)。
これが2008年には、300兆円近くにまで縮小してしまったのである。
純負債が縮小したということであるから、
この期間、日本の一般企業はせっせと借金を返し(=負債減少)、
同時に資産を溜め込んでいた(=資産増加)ということになる。

 企業が純負債を減らすということは、その分だけ投資を絞り込み、
お金を使わないということを意味している。
先週も書いたが「借金による投資」とは、
経済成長のための源泉なのである。
また、企業の投資はGDPの「民間企業設備」支出項目にカウントされる。
企業が借金返済を優先し、投資を絞り込めば、
国家経済のフローであるGDPは大ダメージを受けることになるのだ。

 バブル崩壊後、日本経済は民間企業の設備投資激減に直面した。
何しろ、金利をゼロにしても誰もお金を借りないような状況であった。
GDP崩壊を食い止めるためには、
日本政府はストック(バランスシート)上では負債を増やし、
フロー(GDP)上では政府支出を拡大するしかなかったのである
(しかし、1997年以降に日本政府が緊縮財政に転じ、
名目GDPの低迷をもたらしたのは先週書いた通り。)。

 要するに、日本政府の負債が増えた理由は、
民間が負債を減らしたからに他ならないのだ。
バブル崩壊以降、日本政府が負債を増やしつつ、GDPを下支えしている期間、
民間は企業も家計もせっせ、せっせと、負債返済や貯蓄に励んだ。
結果、今や民間企業のバランスシートには、
眩いばかりのキャッシュが溢れ、家計が溜め込んだ現預金の総額は、
アメリカのそれを絶対額で上回るような状況に至ってしまった。
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/24/005888.php
(3/3に続く)
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/25/005890.php
第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18723021.html

第二回 国家の負債を整理する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18917330.html

第三回 財政支出拡大を評価する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19059102.html

第四回 大転換 前編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19258443.html

三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第五回 大転換 後編(1/3)
2009/06/23 (火) 15:30
 先週取り上げた「骨太09」素案の話を続けるが、
同素案の骨子は以下の通りとなっている。

骨太方針2009の素案骨子
(日本経済新聞 2009年6月9日 朝刊一面)

■危機克服の道筋
 -社会保障の機能強化とその安定財源確保を
  着実に具体化

■成長力の強化
 -太陽光発電などを推進
 -介護雇用を3年で30万人創出

■安心社会の実現
 -幼児教育・保育の総合化を推進

■今後の財政運営のあり方
 -債務残高の対GDP比を20年代初めには安定的に引き下げ
 -今後10年以内に基礎的財政収支の黒字化達成

 問題にしたいのは最後の「■今後の財政運営のあり方」の部分であるが、
「債務残高の対GDP比を20年代初めには安定的に引き下げ」については、
特に文句のつけようがない。

 前回も解説した通り、日本の問題は「公的債務の増加」
それ自体ではないのだ。
公的債務の増加というのであれば、
他のG7諸国にしてもどっこいどっこいなのである。

 日本の「真の問題」は、公的債務の増加そのものではなく
「公的債務対GDP比率」の悪化である。
家計が世界最大の現預金を持ち、
国家としての純資産が世界最大でありながら、
名目GDPが低成長に甘んじていた、その効率の悪さこそが問題なのである。

 「債務残高の対GDP比を引き下げる」という目標は、
別の言い方をすれば「公的債務対GDP比率の改善」となる。
公的債務対GDP比率を改善するには、
特に「基礎的財政収支の黒字化」は不要だ。
継続的に国債残高が増加したとしても、
それ以上に名目GDPが成長すれば良いわけだ。
「国民の福祉向上」という点で見ても、
圧倒的に優れた目標であると断言できる。

 また、日本の名目GDPが低成長を続けているのは、
そもそも長年デフレーションが続いているからなのだ。
デフレ脱却を果たし、
経済成長路線に復帰できれば、名目GDPも拡大していくことになるので、
公的債務対GDP比率は勝手に下がっていく。

 そういう意味で、
公的債務対GDP比率の改善を新たな目標に設定するという点については、
文句の言いようがないわけだ。

 もう一つ、「今後10年以内に基礎的財政収支の黒字化達成」
すなわちプライマリーバランスの黒字化という目標が残ったのは、
個人的には少々不満ではある。
とは言え、先週も書いたように、日本国内に大勢の
「プライマリーバランス信者」が生息している状況で、
一気に目標から削除してしまうと、
政治的反発が相当の規模に達するであろう。

 骨太2009素案をよく読むと、基礎的財政収支の黒字化に関連し、
「まずは、景気の回復を」
「時宜に応じた検証を」
 など、様々な条件が散りばめられている。
要は、基礎的財政収支の黒字化など不可能であると、
行間に書いてあるようなものなのだ。
筆者としては、
そもそも基礎的財政収支の黒字化など不要であると言いたいところだが、
「近い将来可能ですか?」
 と聞かれれば、筆者は「継続的には不可能」とのみ答えるだろう。

 いずれにしても、名目GDPが成長軌道に乗り、
公的債務対GDP比率が継続的に改善していくようになれば、
誰も基礎的財政収支など気にしなくなる。
成長していく経済で国債発行残高が増え続けることは、ごく当たり前の現象だ。

 加えて言うと、本来、基礎的財政収支の黒字化とは、
よほどの好景気でなければ達成されないものなのだ。

【図5-1 米英加三カ国の公的債務残高推移】 1996年-2001年(1996年=100)
イメージ 1 
出典:IMFのデータから筆者作成

 例えば、アメリカはクリントン政権末期の2000年に、
基礎的財政収支を黒字化させた。
この年、アメリカ政府の負債は、一年間で総額が4%減ったのである。

 しかし、クリントン政権末期の2000年と言えば、
まさにITバブルが弾ける直前の好況の絶頂期である。
アメリカが、
かつてないレベルの好景気に沸いていた時期であると言い換えてもいい。

 日本のバブルに匹敵するほどの、
凄まじい好況に酔いしれた時期であっても、
アメリカの負債は4%しか減らなかったわけだ。

 ご存知の通り、翌2001年にはセプテンバー・イレブン(911)が発生し、
アメリカは対テロ戦争に乗り出した。
当然、アメリカ政府の負債は、再び拡大路線に舞い戻ってしまったのである。

 今にして思えば、2000年のアメリカの基礎的財政収支黒字化に、
「思い出」以外に何か意味があったのか、筆者にはさっぱり分からない。

 アメリカの基礎的財政収支が黒字化したのと前後し、
やはり好況下にあったイギリスとカナダの政府の負債も減少した。
とは言え、第一回の図1-2で見たとおり、
長期的にみれば英加両国の政府の負債は全く減っていない。
むしろここ数年間は、
英国政府は日本をさえ上回るペースで負債を増やし続けているので、
アメリカ同様2000年前後の基礎的財政収支黒字化に、
何か意味があったとも思えない。

【図1-2 G7各国の政府の借金 1980年=100】
イメージ 2 
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/05/28/005556.php
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/23/005860.php

第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18723021.html

第二回 国家の負債を整理する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18917330.html

第三回 財政支出拡大を評価する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19059102.html

第四回 大転換 前編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19258443.html

第四回 大転換 前編(2/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19307591.html

三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第四回 大転換 前編(3/3)

(2/3の続き)
 現実に、バブル崩壊後も拡大を続けていた日本の給与総額は、
政府の負債残高が問題視され始めた二十世紀末頃から、
ものの見事に減少を始めた。
同じ期間、日本の給与所得者数は若干ながら増加している。

 給与所得者数が増加していながら、
給与総額が減少したのである。
要するに、日本の給与所得者一人辺りが受け取る給与が、
年を追うごとに減っていったということだ。
これはなかなか洒落にならない。

【図4-3 日本の給与総額と給与所得者数推移 1970年-2008年】
イメージ 1
出典:国税庁

 図4-3では、最終年(2008年)の給与総額のみが、若干回復している。
これは安倍・福田政権下において、
日本政府が政府支出をわずかながら拡大したからである。

 しかし、緊縮財政が始まった1997年から2007年までの期間、
日本の給与総額は毎年着実に減少していった。
GDP成長率が低迷していた以上、当たり前と言えば当たり前だが、
日本国民側にしてみれば、実際たまったものではない。
これも全ては日本が「プライマリーバランスの黒字化」などという
後ろ向きの目標を設定し、
GDP成長に必須の政府支出を絞り込んでいったためだ。

 そもそも日本人は負債増加、
すなわち「借金」に関する理解が浅すぎる。
企業の成長に「借金による投資」が必要なように、
国家経済の成長にも同じく「借金による投資」が必要なのだ。

 例えば、産業インフラが何も存在していない国が、
経済成長をするにはどうしたらいいか、考えてみて欲しい。
道路や港湾設備、鉄道や発電所、
技術蓄積も金融システムも全く存在しない国が、
順調に経済成長できると考える人は、この世に存在しないだろう。
産業基盤が不充分な国が経済成長するには、
海外なり国内から政府が資金を借り、
公共投資を行うことで成長の土台を整えていくしかないのだ。

 実際、第二次世界大戦後の韓国、台湾、それに中国なども、
日本政府からの円借款を活用し、国内の産業基盤に投資をしていった。
すなわち海外(日本)からの「政府の借金」によりインフラを整備し、
経済成長の土台を整えていったのである。

 日本の資本主義経済創業期、すなわち明治時代にしても同様だ。

 中小企業が大企業へと成長する過程において、
負債残高は当然ながら増えていく。
同様に国家経済の成長に際しては、「健全なる借金」の増大が必須なのである。

 プライマリーバランスの黒字化という目標に問題があるのは、
この種の「健全なる借金」までをも悪玉に仕立て上げ、
国家経済の成長の足を引っ張るケースがまことに多いからだ。
大恐慌直後のアメリカや、1997年以降の日本がその典型である。

 IMFにより緊縮財政を強制され、
途端の苦しみを味わったアジア通貨危機後のアジア諸国も、
これに該当するかもしれない。
理由はよく分からないのだが、
IMFはこの思想(緊縮財政、プライマリーバランスの均衡)が大好きなのだ。

 例えば、国民の給与所得や福祉の向上を無視するのであれば、
日本のプライマリーバランスの黒字化を達成するのは簡単だ。
緊縮財政をこれまで以上に推し進め、GDPの政府最終消費支出や公共投資を、
半分にしてしまえばいいのである。

 2008年の日本の政府最終消費支出、及び公共投資の合計(名目値)は
110兆円を超えていた。
それを半減させると、およそ50兆円が「浮く」計算になる。
確かに100%の確率で
「プライマリーバランスの黒字化」という目標は達成できるが、
名目GDPは10%近くのマイナス成長に陥ってしまう。

 当然のことながら、我々日本国民の所得も激減してしまうだろう。
それで一体全体、誰が幸せになるというのだろうか。

 逆に、たとえプライマリーバランスの黒字化が達成できなくとも、
政府の負債の増加を上回るペースで名目GDPが成長した場合は、
どうだろうか。

我々日本国民の所得は年々増加していき、
同時に公的債務対GDP比率が毎年着実に減っていくことになる。

 何度も繰り返した「中小企業と大企業の負債残高」の例の通り、
経済規模が拡大している時期に、負債の増加を気にする人はいない。
公的債務対GDP比率が改善していけば、
日本人はその内「プライマリーバランス」なる単語すら忘れてしまうだろう。

 そういう意味で、今回の「骨太方針2009」において、
政府が目標を

「国・地方の債務残高の国内総生産(GDP)比を安定的に引き下げる」

に変更した意義は極めて大きい。
目標が公的債務対GDP比率の引き下げ、
すなわち「経済成長」に移された結果、
日本政府の財政問題は逆に自然と解決することになるだろう。

 以上、筆者は今回の「骨太方針2009」素案を大変評価している。
しかし、日本のマスメディアのことであるから、
また妙な理屈をつけて「骨太方針2009」素案の
批判を展開するだろうと予想はしていた。

 もちろん、筆者の予想は的中した。
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/18/005815.php

第五回 大転換 後編(1/3)
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/23/005860.php
第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18723021.html

第二回 国家の負債を整理する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/18917330.html

第三回 財政支出拡大を評価する(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19059102.html

第四回 大転換 前編(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/nisekoannnuburi/19258443.html

三橋貴明の「経済記事にはもうだまされない!」

第四回 大転換 前編(2/3)
2009/06/17 (水) 18:00
(1/3の続き)

 公的債務対GDP比率とは、
政府の負債残高を名目GDPで割ることで求められる。
例えば、ある国の公的債務対GDP比率がちょうど100%だったとしよう。

ケース1:
公的債務対GDP比率
 =政府の負債残高(100)÷名目GDP(100)=100%

 この国家が、公的債務対GDP比率を改善するために、
プライマリーバランスの黒字化を達成し、
政府の負債残高が95に引き下げられたとする。
一瞬、政府の負債残高が減ったのであるから、
公的債務対GDP比率が改善したはずだと思うかもしれない。
しかし、必ずしもそうなるとは限らない。

 同じ期間に政府の支出が絞り込まれた結果、
この国のGDPの
「政府最終消費支出」や「公共投資」などの項目が激減し、
名目GDPが90にまで減少してしまった場合にはどうなるだろうか。
すなわち、この期間に同国の名目GDPが、
10%ものマイナス成長になってしまった場合である。

ケース2:
 公的債務対GDP比率=政府の負債残高(95)÷名目GDP(90)=105.6%

 政府の支出を切り詰め、負債残高が減少したとしても、
公的債務対GDP比率が改善するとは限らない。
ケース2では政府の負債改善よりも、
名目GDPの減少効果の方が大きくなってしまい、
公的債務対GDP比率は100%から105.6%へと悪化してしまった。

「ケース2などレアケースで、現実にはあり得ない」
などと、思うなかれ。
何しろ、実際にここ十五年間の日本こそが、まさにこのまま、
プライマリーバランス黒字化を目指し、
政府支出を絞り込んでいった結果、
公的債務対GDP比率が悪化してしまったケースに該当するからである。

 先進七カ国、いわゆるG7諸国について、
1994年以降の公的債務(政府の負債)残高の増加ペースと、
公的債務対GDP比率の推移を比較してみよう。
誰でも、一発で理解できる。

【図4-1 G7諸国の政府の負債残高(1994年=1)1994年-2008年】
イメージ 1 
出典:IMF

 図4-1の通り、1994年以降のG7諸国は、
揃って政府の負債残高を拡大してしまっている。
確かに、日本政府の負債増加ペースは最も早い。
しかし、ご覧頂いたように、
イギリス政府の負債残高にしても似たようなものである。
むしろここ数年間は、イギリス政府の負債増加ペースの方が明らかに速い。

 しかし、少なくともリーマン・ショック以前は、
イギリス政府の財政問題がクローズアップされたことはほとんどない。
これはなぜなのだろうか。
理由は、イギリスは確かに政府の負債を増やしてはいるが、
公的債務対GDP比率は全く悪化していないからである。

【図4-2 G7諸国の公的債務対GDP比率推移 1994年-2008年】
イメージ 2 
出典:IMF

 政府の負債残高を名目GDPで割った公的債務対GDP比率を見ると、
十五年間で日本の悪化ペースが最も悪い。
と言うよりも、G7諸国の中で「唯一」日本のみが悪化している。
他のG7諸国の公的債務対GDP比率は、
十五年間で改善したか、悪くても精々横ばい程度で推移している。

 特に、イギリスはここ数年、
日本をさえ上回るペースで政府の負債を増やしておきながら、
公的債務対GDP比率は一定水準を保ち続けている。
別に理由の説明が必要とも思えないが、
もちろんイギリスが政府の負債を増やすのと同ペースで、
名目GDPを成長させていたからである。

 同じ期間、日本はプライマリーバランス黒字化を追い求め、
政府支出を削減していった。
結果的に、名目GDPの成長率が低迷を続け、
公的債務対GDP比率は悪化を続けたのである。
しかも、景気低迷が税収減をもたらし、
政府支出は伸びない中で
(国債発行により)政府債務残高は増え続けるという、
最悪の環境が継続したのだ。

 GDPの成長率が低迷するということは、
これはつまり日本国民の「所得」が伸びていないことを意味している。
すなわちこの期間、我々の所得が減り続けていたということである。
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/17/005802.php
(3/3に続く)
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/18/005815.php

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