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37 同・リビング
昨夜と同じように縫い物をするおばあちゃん。
まい、おばあちゃんの後姿を恐いくらい真剣な顔で、じーっと見ている。
おばあちゃん、振り向かず、
おばあちゃん「まい、どうしたんですか、さっきから変ですよ」
ま い「(思い切っておばあちゃんの前に座り)おばあちゃん、私もがんばったら、
その、超能力を持てるようになるのかな?」
おばあちゃん、まじまじとまいの顔を見る。
まい、顔を赤くしてうつむく。
ま い「……やっぱり、いいの」
おばあちゃん「相当努力しなければなりませんよ」
ま い「!(顔を上げる)」
おばあちゃん「まいは、まず基礎トレーニングをしなければ」
ま い「私、がんばる。基礎トレーニングってどうするの?」
おばあちゃん「スポーツをするには体を鍛えないといけないでしょう?
同じように魔法や奇跡を起こすには精神力が必要なんです」
ま い「精神力を鍛えるトレーニング……座禅?」
× × ×
裏庭で座禅を組んでいるまい。(まいの想像)
うしろからおばあちゃんが近づき、「警策」でまいの右肩を叩く。
まい、痛くて顔を歪める。
× × ×
おばあちゃん、にやりと笑う。
おばあちゃん「それはまだちょっと早いですね。
野球の練習でいきなりバットを振ったら肩を痛めてしまうでしょ」
ま い「じゃ、どうやって鍛えるの?」
おばあちゃん「そうね。まず早寝早起き。食事をしっかりとって、よく運動し、規則正しい生活をする」
ま い「……(落胆してうつむく)」
おばあちゃん「まいは、今、すごく単純なことだったのでがっかりしたでしょう。
でも、そういう単純なことが、まいにとってはいちばん難しいことじゃないかしら」
ま い「……うん。すっごく苦手」
おばあちゃん「(微笑んで)魔女になるために、いちばん大切なのは意志の力です。
自分で決める力。自分で決めたことをやりとげる力。
まいの欲しいものは、いちばん難しいことを乗り越えないと手に入らないのかもしれませんよ。
まあ、だまされたと思って」
ま い「……やってみる、ことにする」
おばあちゃん「(嬉しそうににっこり笑い)よく言いましたね、まい。
じゃあ、自分で朝起きてから寝るまでの時間割を決めてごらんなさい。
それを紙に書いて壁に張りましょう」
ま い「おばあちゃんはいつも何時に起きるの?」
おばあちゃん「六時です」
ま い「絶対無理。七時だったら何とか」
おばあちゃん「それだと、ちょうど一緒に朝ご飯が食べられますね」
ま い「そうすると寝るのは十一時か、寝つけるかな……」
おばあちゃん「まいはいつも何時に寝るんですか?」
ま い「二時か、三時」
おばあちゃん、目を丸くする。
まいはおばあちゃんに相談しながら時間割を決めていく。
まい(独白)「こんな調子で時間割を決めていった。
午前中は洗濯や掃除の家事エクササイズ。午後は勉強とか読書。
そして、寝るのは夜十一時」
相談が終わった。
まい、リビングから出ようとする。
おばあちゃん「まい」
まい、振り返る。
おばあちゃん「(笑って)私はまいの意志の力が弱いと思ったことはありませんよ」
ま い「(力なく)私は弱いと思う」
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映画『西の魔女が死んだ』決定稿より
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