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サクリファイス
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カタリ派は、今日、私達が「キリスト教」と言ふ言葉で知って居る宗教とは著しく異な
る世界観を持つ宗派でした。先ず、カタリ派は、この世界は神が創造した世界ではなく、
悪魔が創造した世界であると言ふ驚くべき教義を持って居ました。この世界が善なる神に
よって創造されたのであるなら、何故、この世界に悪が存在するのか?と言ふ問いに、正
統派キリスト教は明確な答えを持ちません。それに対して、カタリ派は、それは、この世
界を創造したのが神ではなかったからだ、と答えるのです。これだけでも、私達が知るキ
リスト教とは全く違ふ世界観を持った宗派である事がお分かり頂けると思ひますが、世界
を創造したのは神ではない悪なる存在であったと言ふ世界観は、グノーシス派と呼ばれる、
古代のキリスト教の世界観と共通する物です。
カタリ派は、更に、人間は、転生すると言ふ信仰を持って居ました。つまり、人間は生
まれ変はると言ふ事です。そして、カタリ派は、非暴力的な道徳観を持ち、肉食も禁じて
居ました。即ち、世界は神によって創造されたのではないと言ふ世界観と、人間は生まれ
変はると言ふ世界観、それに殺生を禁じる倫理規範を持って居た訳ですから、彼らの世界
観と倫理は、仏教に酷似した面を持って居ます。−−だから、カタリ派は、「ヨーロッパ
仏教徒」とも呼ばれる様ですが、これは、実際、キリスト教が、その成立過程において、
仏教から深い影響を受けて居た事の反映ではないか?と、私は思って居ます。
(続く)
平成18年8月10日(木)
西岡昌紀(にしおかまさのり)
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