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サクリファイス
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又、カタリ派は、旧約聖書を聖典として認めないと言ふ立場を取って居ました。世界を
創造したのは、神ではなく悪魔だから、と言ふ事なのだと思ひますが、或いは、旧約聖書
の信憑性の問題が有ったのかもしれません。−−この辺は、私は不勉強なので、良く知り
ません−−とにかく、これほど、今日私達が「キリスト教」として知る物とは違ふ信仰を
持つ人々が、かつて、南フランスを中心に勢力を持って居た事を、そして、彼らが、法王
が送った軍勢(アルビジョワ十字軍)によって滅ぼされたと言ふ歴史が有った事を、皆さ
んは御存知だったでしょうか?
そのカタリ派の影響と思はれる要素が、タルコフスキー最後の映画『サクリファイス』
には見てとれる事に私は気が付いたのです。先ず、主人公の大学教授(一家の父親)が、
自分の前世は日本人だったと信じて居る事がそうで、自分に前世が有ったと言ふ彼の信念
は、カタリ派を思ひ起こさせます。そして、その主人公の願いを聞いて世界を破滅から救
ふマリアと言ふ家政婦が、魔女である処がカタリ派による世界の救済と言ふ観念を象徴し
て居るのではないか?と、私は思ったのです。何故なら、魔女は、カタリ派の女性を意味
して居る可能性が有るからです。−−ヨーロッパでは、カタリ派が滅ぼされた後も、カタ
リ派が、密かに生き延び続けたのではないか?と言ふ見方が有った様です。そうした中で、
魔女には、カタリ派の女性信徒のイメージが投影されて居るとする指摘が有ります。カタ
リ派が徹底した男女平等を唱えた宗派であった事を反映して、カタリ派の女性信徒の自由
さが、ヨーロッパにおける魔女のイメージに投影されて居ると言ふ見方です。
(続く)
平成18年8月12日(土)
西岡昌紀(にしおかまさのり)
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