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周防正行監督の「それでもボクはやってない」を見ました。
最近なかなか映画館に足を運べず、この作品もDVDになってようやく
見ることができました。
この作品は、混雑した電車で痴漢に間違われた青年が、駅事務所に連れて行かれ
一審判決を受けるまでが描かれています。
最近、法廷ものがはやりのようで、一時期は「なんたら弁護士」
というドラマが週に何本もありました。
この作品は、それらとはアプローチが全く異なり、ドラマチックな要素を
極力排し、現実の捜査・裁判の流れが忠実に再現されています。
この作品を見た法曹関係者は口々に「リアルだ」とつぶやいたとか何とか。
このように、裁判をそのまま描いてしまうと退屈になるのかと思われますが、
この作品は、140分という長さを全く感じさせない、エンターテイメント作品として
も一流の作品として成立しています。
その原因は、逮捕などされたこともない、一般人が初めて捜査や裁判の現状を知り
明日は我が身だと思わされ、「理不尽だ!」と叫びたくなるという社会派な
理由がまず一番にあげられなければなりません。
この作品を見ると、どこどこのシーンがどうのとか、あの演技がどうのという感想よりも
まず裁判の現状について語りたくなります。それこそが、周防監督の意図したところでしょう。
一方で、「しこふんじゃった」以来の周防監督のユーモア感覚が、やはり密かに発揮されて
いるように思います。というよりも、大真面目な留置場や法廷での関係者の様子ほど
おもしろいものはないと監督は見抜き、そのまま表現したのではないでしょうか。
名刺を、接見室のアクリル板に貼り付けるように置いたり、被告人がいちいちマイクに口を
近づけて話そうとして「近づけなくても大丈夫だから」と言われたり、証人が質問者の方を見て
答えると、裁判官の方を見て答えるように言われたり・・・。
裁判官のキャラクターも話し方も、おそらく多数の裁判を傍聴をして創り上げたのでしょう、
いかにもいそうという感じです。あと、留置場でマル留と書いたトレーナーを着ている人が
いるのが笑えました。
この映画を、外国人にも見せたそうですが、外国人にとっては、さらに爆笑もののようです。
そもそも、痴漢というのが日本特有の犯罪ということもあるのですが、それほど日本の裁判
の現状は異常なのかもしれません。
現在、司法制度改革などといって、裁判制度などが大幅に変更されようとしていますが、
それらは真の改革となっているのでしょうか。裁判員制度になったからと言って、捜査での
理不尽な取り調べ、「認めたらすぐに出られるけれど、否認したら勾留が続く」という人質
司法と言われる現状がかわるのでしょうか・・・。また外国人に爆笑される、おかしみのある
制度をつくりあげることにはならないでしょうか。
と、結局は、周防監督の思惑どおり、裁判について考えてしまうのでした。
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