善いね

好きなオノマトペは、のたりのたりです

黒サンタ

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ドイツでは地方により様々なものがあるが、プレゼンターは双子で、一人ヴァイナハツマンは紅白の衣装

を着て良い子にプレゼントを配り、もう一人はクネヒト(従者)・ルプレヒトと呼ばれ、黒と茶色の衣装

を着て悪い子にお仕置きをし、容姿・役割共に日本のなまはげに似ており、民俗学的にも年の瀬に来訪す

る年神としての役割の類似が指摘される。現在、ドイツでは聖ニコラウスは「クランプス」と呼ばれる二

人の怪人を連れて街を練り歩き、良い子にはプレゼントを、悪い子にはクランプス共に命じてお仕置きを

させる。

(WIkipediaより抜粋)

クランプスは悪い子、片付けをしない子の家に現れ、子供を叱り、サンタクロースが置いていったプレゼ

ントを取り上げたりする。また、動物の内臓を入れた袋で殴りかかる、臓物を投げつける、寝ている子供

を棒で殴る、子供を袋に入れて川に流すなどの悪行を振るう。呼称は幾つか有り、クネヒトループレヒ

ト、ブラックサンタ、黒サンタなど。


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コンコン


木製のドアをノックする音が部屋に響き、

大サンタさんは「どうぞ」と言いました。


「失礼します」


お辞儀をして入ってきたのは若いサンタクロースと、

相棒のニッセを連れた黒サンタでした。


へえ、中はこうなってるのか。


いつもロッジの屋根の上に居る黒サンタは、

ロッジの中に入ったことがありません。

初めて見る中の様子を、

不思議な気持ちで見回していました。


「コラ、キョロキョロするな」


若いサンタクロースは黒サンタの頭をパシッと叩きました。

黒サンタは若いサンタクロースを睨みました。


「やめんか。二人で話をするから君は出て行きなさい」


大サンタさんが言うと、黒サンタは面白くなさそうに部屋を出て行こうとしました。

慌てて大サンタさんは言いました。


「違う、君が残るんだ」


黒サンタはびっくりしました。

若いサンタもびっくりしました。


「えっ、私が出て行くんですか?」

「そうだ、お前だ。早く出て行きなさい」


ふくれっ面で渋々出て行こうとする若いサンタクロースに、

黒サンタは「ばいば〜い」と言いました。


「やめなさい、気持ちは分かるが、あれはあれで真面目に仕事に取り組んでくれる男なのだよ」


若いサンタクロースは部屋を出ると、お辞儀をしてドアを閉めました。

二人きりになると、大サンタさんは「ふぅ」とため息を吐きました。


「すまない。今更どんな言葉で謝っても許してはもらえないだろうが…」


暗い面持ちの大サンタさんに黒サンタは言いました。


「いいよ別に。慣れてるし」


黒サンタは改めて部屋の中を見回しました。

中はとても暖かいです。

木のにおいがたちこめています。

壁には大勢の子供たちに囲まれたサンタさんの写真がズラリと並んでいました。


大サンタさんはなかなか話しづらそうにしていましたが、

やがて意を決して口を開きました。


「我々は、努力の仕方を間違ったのかもしれん」


黒サンタは大サンタさんの顔を見た後、

なんの話だろう、

と、ニッセと顔を見合わせました。

大サンタさんは続けます。


「年々各国の生活水準は上がり、物が溢れる時代になってきている。

 それでもクリスマスのプレゼントは特別なものだ。

 子供たちはその日をわくわくしながら心待ちにし、

 今年は何がもらえるだろうと期待に胸を膨らませる。

 プレゼントをもらえるように、

 今年もいい子であろうと自らを善くして行く。

 そう信じておった」


大サンタさんは悔しそうな顔をしました。


「実際はどうだ。親から物をもらうのは当たり前の事となっている。

 クリスマスにプレゼントをもらうのも特別でもなんでもない。

 子供たちの心は時代が進む毎に荒れ、

 我々がプレゼントを贈るに価すると評価する子供は全体のほんの一握りだ。

 それでも親がプレゼントを用意してしまう。

 我々なんか最初からいないと思っている。

 いや、いてもいなくてもいいと思っている」


大サンタさんは怒りと悔しさで顔を真っ赤にしていました。

ミルクを啜り一息入れると、

今度はやんわりと話し出しました。


「私が悔しいのはね、我々が軽視されているとか、そういう事ではないのだよ」


大サンタさんは壁の写真に眼を遣りました。

そして何かまぶしいものでも見るように眼を細めました。


「子供は美しい。実に無邪気で、純粋だ。

 その子供たちの心が年々荒んで行っているのに、

 私達は、

 私達のやり方では、

 それを止める事は何一つ出来ていない。

 サンタクロースは自分達にとって実に都合のいい、

 物をくれるだけの存在になってしまっているのだな」


大サンタさんは黒サンタを真っ直ぐ見つめました。


「はっきり言おう。今の子供たちは親から与えられ過ぎて、

 実にわがままに育っておる。

 また余計な情報も与えられ過ぎて、

 早くから夢に見切りを着け、物語を信じる心をやすやすと捨ててしまう。

 無邪気で純粋な子供はもうほとんどいない。

 多くの子供たちの心は打算的な卑しい考えで汚されている。

 これを正すことが出来るのはプレゼントという飴ではなく…」


大サンタさんはくちびるを噛みました。

続きを言えない大サンタさんに代わって黒サンタは言いました。


「罰というムチでしょ」


大サンタさんは悲しそうに黒サンタを見ました。


「やってくれるのか」


黒サンタはふふっと笑いました。

すこし淋しそうにも見えました。


「元々そのための俺らだからね」


黒サンタの言葉に、大サンタさんは泣きそうになるのをぐっとこらえました。

そして机の引き出しからある物を取り出し、黒サンタに手渡しました。


「これは、パスポート?」


大サンタさんは頷きます。


「そう、君の行き先は日本だ。

 日本人の血が流れる君が日本に行く事になるとはな。

 これも何かの縁かもしれん」


黒サンタは「ふ〜ん」と言いました。

相棒のニッセに目で合図を送ると、

じゃ、と言って部屋を出て行こうとしました。

黒サンタの背中に大サンタさんはもう一度、

すまない、

と言いました。

黒サンタはドアの前で一度立ち止まると、

振り返らずに言いました。


「親父は、

 あんたに感謝してたよ」


それを言うと黒サンタは木製のドアを開けて出て行きました。

一人きりになると、

大サンタさんは我慢できずに涙を流しました。





続く。

かも。


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