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「何か、こう、面白いことはないかね」
「おもしろいこと、ですか」
「うむ。最近つまらないことが多くてね。気晴らしに何かおもしろいことがしたい」
「では、『一人浦島』などはどうでしょうか」
「ほう、一人浦島、とな」
「はい。やってみますか」
「うん、やってみよう。それはどうやるのだね」
「先ず、亀をいじめます」
「ほう。それで?」
「次に、亀を助けます」
「成程、成程。そして?」
「そして、竜宮城へ連れて行きます」
「連れて行く、誰を?」
「浦島をです」
「え、私は亀なのかね?」
「亀であり、浦島です。亀をいじめるいじめっ子でもあります」
「難しいな、一人浦島。思ってたよりずっと難しいな」
「止めますか?」
「もうちょっとやってみよう。えっと、竜宮城へ連れて行って、その後は?」
「舞い踊ります」
「やっぱりかね」
「ええ、舞い踊ります。あなたはタイであり、ヒラメでもあります」
「亀とかヒラメとかはやらなくてもなんとかなりそうな気もするがね」
「いいえ、一人浦島ですから。全部やります」
「全部やるのかね。じゃあ、しょうがない。舞い踊ったとしよう」
「舞い踊りましたら、『飽きた』って言います」
「浦島かね」
「浦島です」
「踊り終わって『飽きた』って言ったら、タイやヒラメが踊りに飽きたっぽくないかね?」
「そこは浦島っぽくお願いします」
「浦島っぽいのがどういう事なのかが分からないのだがね」
「如何にも竜宮城に飽きたっぽく言うのです」
「それは君の匙加減じゃないのかね」
「飽きたと言った後は、別れを惜しんでください」
「誰と?」
「乙姫と」
「乙姫一回も出てきてないけど、大丈夫かね」
「大丈夫です。最初で最後です」
「じゃあ誰と飲んでたのかね。一人でタイやヒラメが踊るのを見ていたのかね」
「亀が居ました」
「亀かね。まあいい。突然出て来た乙姫と別れを惜しんだとしよう。それから?」
「それから、浜に帰ります」
「一人でかね」
「一人でです」
「自力でかね」
「案外出来ます」
「そうは思えないがね。でも、まあ、頑張るよ。頑張って浜に帰るよ」
「浜に帰ったら、ジジイになってください」
「なんで?」
「玉手箱を開けるからです」
「君は簡単に言うけどね。難しいよ。ジジイになるのは」
「案外出来ます」
「そうは言われてもね。今一つ自信が持てないね」
「コツが有るんです」
「ジジイになるのに?」
「はい。いいですか、先ず、年老いるんです」
「それが難しいんじゃないかね。寧ろそれはゴールじゃないかね。年老いた時点でジジイじゃないかね」
「注文が多いですね」
「それは申し訳ない。でも、注文せざるを得ない事になっているのだよ」
「分かりました。ジジイは止めましょう」
「ジジイは止めるのかね」
「はい、ジジイは止めます」
「それは浦島として大丈夫かね」
「大丈夫です。鶴で行きましょう」
「違う話になってないかね」
「これが案外なってないんです」
「そうなのかね。じゃあ、鶴で行こう。鶴の方がなれそうな気がする。ジジイより」
「鶴になりましたら、蓬莱山へと飛び立ち、その後、丹後国で『浦島の明神』になります」
「明神になるのかね」
「ええ。祭られてください」
「祭られてくださいって簡単に言うけどね、どうやったら祭られるかなんて1ミリも知らないけどね」
「祭られた人の話とか聞けばいいじゃないですか」
「周りに居ないからさ。祭られた人が。君はさっきからポンポン話を進めるけどね、おもしろいのかね。一人浦島」
「おもしろいかおもしろくないかで言えば、おもしろくないです」
「じゃあ勧めなかったらよかったんじゃないのかね」
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