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ママ
「たろうちゃん、おたんじょうびおめでとう」
パパ
「たろう、たんじょうびおめでとう」
たろう
「・・・・・・・・・」
ママ
「たろうちゃんも来年はいよいよ幼稚園ね。幼稚園からいいとこ入ってて頑張らないとね!」
パパ
「そうだな、これからは特に大事な時期だ。もう遊んでばかりいられないぞ」
ママ
「パパもママも一生懸命、たろうちゃんを応援するからお受験頑張るのよ!」
パパ
「そうだ。これからが本当に大事なんだよ」
ママ
「あっそうそう、今日はおじいちゃんも来てくださってるのだから、おじいちゃんからもかわいいたろう
ちゃんに一言、言ってやってくださいな」
じじい
「・・・・・・・・・」
ママ
「おじいちゃん?」
じじい
「・・・・・・・・・・」
ママ
「おじいちゃんてば・・」
じじい
「形あるものは必ず崩れるな・・」
ママ
「は?」
パパ
「と、とうさん、またそんな話ですか・・」
じじい
「誕生こそ、消滅の始まりじゃな」
パパ
「とうさん、今日はたろうのお祝いなんですから・・」
じじい
「ぼうず、誕生日がめでたいなんてそんなもん、うそっパッチじゃ」
たろう
「・・・・」
パパ
「とうさん、たろうの誕生日になんてこと言うんですか!」
じじい
「ぼうず、真正面を向くんじゃ」
たろう
「・・・・・」
じじい
「真正面にあんのは死だけじゃ」
たろう
「・・・・・」
じじい
「人間なんて生まれたその瞬間から絞首台の上で首に輪っぱ掛けられてる囚人みたいなもんじゃ。
誕生日なんて言うのは死へのカウントダウンじゃな。こいつらはお前が死んだら悲しむくせに、お前が死
に一歩一歩近づくカウントダウンのことはめでたいという。まったくどうかしてると思わんか?」
たろう
「・・・・」
パパ・ママ
「おとうさん!」
じじい
「ぼうず、真正面の死だけを見据えい。お前が向かう先は死だけじゃ。その間には何もない。いらん雑音
に惑わされるな。お前の父さん母さんはワシをネガティブだの後ろ向きだの言うとるが、そいつは全く反
対じゃ。”将来”なんかない。ずっと絞首台の上にいるだけなんじゃ。わかるかぼうず?」
たろう
「うん」
「なら、これを了解したうえで、まだハッピーか?」
たろう
「わかんないよ」
じじい
「そうか」
パパ
「・・・・・・・・」
ママ
「・・・・・・・・」
たろう
「早くケーキ食べたいなぁ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
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