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「こっ、これ以上ボクを避け続けると……後悔することになるぞ!」
いや、あんたストーカーだし。そりゃ避けるでしょフツウ――ってのはおいといてこの修羅場はとっくに後悔だ。部屋じゅうに乱闘の傷痕、パパとママは既に現実が理性の容量を超えたらしく、隅っこにへたり込んで、生白いお追従笑いすら浮かべている。その傍ら、弟は相当応戦してくれたのか、怒りの涙を浮かべながら、それでも今じゃ両手両足を縛られて猿ぐつわ(←勇者の証だよ!)。 「ぎにゃーっ!」 ああ、そしてピコ。お前がやって来てくれたおかげで、あたしたち家族が家族らしい団欒を持てるようになった恩人、ピコ。その大事な、猫な恩人が今、アイツに乱暴に絡め取られて、怯えてる。動くな、動かないでピコ。喉元にはヤツの武者震いでぎくしゃく揺れる、包丁―― 「何度も言ってるけど、ムリヤリつき合わそうとか、そういう気はボクには無いんだって。ただ……避けるなよ。そんなにボクから逃げないでよ!キミとボクが出会ったのは、これは運命なんだから。これは、……これはボクたちの、宿命なんだから」 それもう、ムリヤリつき合わす気以外見当たらない発言なんですけど。あと、なにが「なんだから」だよボケ。「だもの」とか「ざます」が手前ェにはお似合いなんだよ、この鬼畜ナルシス野郎! 「普通に、普通に接してくれるところから始めてみない?って言ってるだけなんだよ。そしたらいつかボクとのこと、きっとわかってくれるからさ。じゃあ仮に、仮にだよ?かーりーにぃ、キミが、ボクと正常な交流関係を持つことに決めたとするよ?そしたらそうだなぁ、どこから始めてくれる?いち!『キミのほうからも積極的に、ボクにメールや電話をしてくれるようにする』」 いや、いちいちコイツからの接触にそれこそ「正常に」、律儀に対応してやって来てしまった結果が、この惨劇だしなあ―― 「に!『ボクとデートしてくれる』」 「あら、デートくらい良いんじゃないかしら、若いんだし。わたし反対はしないわ、ねえパパ」「そういえば、お前からそういう浮いた話、聞かせてもらったこと無いなぁ。ママの言う通り、そろそろその手の人生経験も、お前にも必要な時期なのかも知れないよ」うるせーぞそこの即席ストックホルマーども! [【1-2】に続く] |
社会意識関連
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