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《事実》の錨を。

雑記

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“現在Hは、花嫁修業のスクールを経営し、また企業研修の講師、そしてカウンセラーを務めているという。/彼女は神戸で生まれ育ち、中学から大学まで地元でお嬢さん学校として知られる私立の女子校に通った。彼女の名刺にはカラーコーディネイト、フラワーセラピー、テーブルコーディネイトなどの華々しい肩書が並ぶ。/家族は、二歳年上の夫と小学生の息子がひとり。夫は東京の有名私大卒、一流企業に勤めるサラリーマン。結婚して一二年。絵に描いたようなブランド夫婦だ。そして彼女の実家は、震災後いち早く建て直すことができるほどに裕福である。”(p.180)

“Hは困惑顔を作りながら言い訳めいたことを語り、こちらが聞いてもいないのに夫婦仲がうまくいっていないことも話し出した。厳しい親のすすめのままに結婚するのが嫌で彼と結婚したけど、女性問題や金銭のことでどれほど苦労したか。キャリアウーマンだった彼の母親との確執にいかに悩まされたか。結婚してすぐにうまくいかないことがわかったわ……。”(p.183)
“Hは、いくつもの夢をもっていただろう。多くのひとがそうであるように。彼女の夢は、カタカナの肩書きがずらりと並ぶキャリアウーマンだったかもしれないし、幸福な家庭を持つことだったかもしれない。そして、それなりに裕福な家庭に育ったのだから、それらの夢は叶えられると思ったことだろう。/だがそれは、自分で思い描いたほどにはうまくいかなかったのだろう。彼女の「物語」は、「現実」のものにはならなかった。マスコミ、フェミニストたちが作り上げた「レイプ多発」伝説ほどには。”(p.184)
“彼女は震災直後に避難所でのボランティアにも参加しようとしている。しかし、「ボランティアの人たちがもっている、汚い格好をしていなければならないという思い込みが耐えられず」、その世界に入りこむことはできなかった。/彼女はカウンセラーの資格を持っていない。だが、結婚の前年にレディスクリニックの事務を手伝い、そこでカウンセリングに興味を持ち通信教育で学んだ。当時から彼女を知る医師は「彼女はひとのことでも親身になって話を聞いてあげるいい子よ」と証言する。”(p.184〜185)
[【5】へ続く]

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