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《事実》の錨を。

雑記

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“「神戸の町って本当にきれいだったのよ。きらきらして、輝いて、女の子たちはおしゃれしてかっこよかったの。私、いつも元町の大丸に行って、洋服を買っていたわ。大好きだったのよ。でも、震災でみんな壊れてしまった」/初めて会った日にHはそう言った。/私は、その言葉に失われた町への哀惜以上のものを感じたのだ。それは、壊れて失われたのか、本当にそれほど美しいものだったのか。今となっては彼女の記憶のなかにしかない。”(p.185)
“彼女は、レイプ事件の多発を訴える理由を、/「本当にあったことをなかったことにされることが許せないんです」と語っていた。それは事件のことではなかったのかもしれない。本当にあったこと。彼女は何を指していたのだろう。あり得べき別の人生なのか。きらきらと輝いていた日々なのか。/別れ際にHは「また遊びにきてね」と言った。私は少し笑ってしまった。”(p.186)


(以上、与那原恵『物語の海、揺れる島』1997、小学館、p.158〜186、“作られた伝説――神戸レイプ多発報道の背景”より)

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