|
“陰鬱な筋書きをことごとく証明するかのように、実際に、チェルノブイリ事故後にネズミの個体数が爆発的に増加した。一九八七年と八八年には、ハツカネズミと野ネズミの数は一ヘクタールにつき二、三十匹から、何と二千五百匹にまでふくれあがり、強制避難地域を覆い尽くしてしまうほどの数で安定したように見えた。刈り入れのすんでいない畑が強制避難後にほったらかされたために餌がどっさり残り、どうやらこの餌に引きつけられたらしい。ネズミ問題は深刻になり、ゾーンの役人の中には毒殺しようと言う者まで出てくる。ところが生物学者が口を出し、個体数はすぐに自然に安定すると予測した。そしてその通りになった。/まず、ネズミの個体数が爆発的に増加すると捕食動物が集まってきた。キツネやイタチ、とりわけ猛禽類だ。(中略)それでもネズミは数が多すぎて、野原にはじゅうぶんな餌がなかった。しかし行動範囲が狭く、餌を探して遠くまで出かけることができない。適応していない隣の森に逃げ出すこともできなかった。それで、一九八八年の秋には大半が餓死する。すると今度は、これ幸いと大量の死骸にむらがる腐食動物の数が一時的に急増する。ところが、ネズミの死骸が野原から一掃されると、自然界の掃除屋も姿を消した。人間の介入がなくなると、ゾーンの自然がその均衡を取りもどせることを示した最初の例だ。”(メアリー・マイシオ『チェルノブイリの森 事故後20年の自然誌』2007、NHK出版、p.166〜167)
“ハタネズミはしばしば地下のトンネルに巣を作り、戸外での生活の大半を土壌の表面にじかに触れて過ごすので、環境の中にある放射性核種に直接、たえまなく接触することになる。体が小さいため、外部線源から出るベータ線が体内の器官にぶつかる可能性ははるかに高い。/この損傷のせいで、チェルノブイリのネズミはゾーン外のネズミよりも寿命が短く、一腹の子の数が少ないのかもしれない。一〇キロゾーンのネズミはよその土地のネズミよりも皮膚にできる病原体のコロニーの数が多く、これは免疫システムが低下していることを物語っている。ところが、免疫システムの低下はネズミの生息数や、生態系の中での放射性核種の循環にネズミが与えているやたらと大きな影響には、作用しない。”(同、p.199) |
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2013年06月29日
全1ページ
[1]
全1ページ
[1]





