らんどくなんでもかんでも 8

皆様、8年間本当にありがとうございました。

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幕末の動乱期、公武合体により時の将軍徳川家茂に降嫁した皇女和宮。
縁の発端は政略結婚だったとはいえ 、
同じ年頃の二人は非常に仲睦まじかったと伝えられています。
そして、夫家茂が若くして亡くなった時、
妻である和宮はそれを嘆き悲しみ、
自らの髪を切り、それをお棺の中に入れさせたと記録されています。

そして、それから100年あまりが経ち、
戦後になって徳川宗家の菩提寺増上寺の区画整理の際、
そこに葬られている徳川家所縁の貴人の方々の墓の調査が為されました。
そこで、不可思議な事実が判明。
和宮の墓の中の遺骸の髪の毛と家茂の墓の中に添えられていた髪とが、
別人のものであることがわかったのです。

徳川家茂の棺に入っていた女人の髪の毛は一体誰のものであったのか・・

これは、そのような歴史ミステリーに触発され、
関東に降嫁した和宮は替え玉だったという衝撃的なストーリーを描いた作品です。 

まず、なぜ和宮降嫁にそのような替え玉を仕立てる必要があったのか。
生来、和宮の足が悪く、びっこを引いていたため、
それを人に晒されるのを彼女が激しく嫌がったことが、直接の理由とされていますが、
しかし、その根はもっと深いところにあります。

小説の中で、京の公家衆は、時の権力者徳川将軍家のことを、
「関東の代官」と蔑みを込めて呼んでおり、
そういう意識はどこから来ているかと申しますと、
徳川幕府の、皇室、公家に対する圧迫は大変なもので、
二百数十年にわたって彼らは京の狭い内裏の中に押し込められて生きてきました。

小さな内裏という空間に閉じ込められ、ほんの僅かばかりの食い扶持を与えられ、
つつましやかに生きるのを強いられた彼らの最後の命綱は、
自分たちは高貴であるということへのプライド、自負心といったものであったと感じます。
一般の者がみると、?というような格式も、
それは公家達が、唯一、自分達のもつアイデンティティである
高貴というプライドを守るため、不可欠なものであったのです。
それが二百数十年の間鬱々と蓄積され、
幕末の混乱期に、幕府の力が弱まった途端、
その長年の悶々とした鬱積した塊が一気に爆発した。

誰が帝(みかど)の直系の血筋の者を関東の代官ごときに嫁がせようか。
そのあたりの公家のプライド、いや、怨念というべきかもしれません、
登場する公家達のたわいない会話からも、
そのような意識が読む者に如実に伝わってきます。

それらの会話は、決して憎しみや怒りを剥き出しにしたものではない、
一風、雅(みやび)ですらあります。
しかしながら、公家達の、一見穏やかに聞こえる会話の中に微かに含まれる、
皮肉、蔑み、憎しみのニュアンスに、
読んでいる者は、背中になんともいえぬひんやりとしたものを感じるのも事実です。

そこに和宮の替え玉という、一見禍々しいものが現れる素地があったのです。

そのあたりの公家達の屈折した心情を、
有吉佐和子さんは、公家達のたわいない会話やしぐさなどから、
非常に見事に表現しています。
まるで作者がその現場を見てきて、
本当にそういうやりとりがあったかのような臨場感を与え、
また、作品内の、独特の公家言葉によるやりとりを読んでいると、
まるで自分も、公家達の意識の中に入り込んでしまったような感覚になることがあります。

まさに緻密な考証に大胆な発想が合わさった歴史小説の名作、
ここ三十年ほどで書かれた作品の中で、
ぐいぐい読ませるものを、久しぶりに読んだような気がします。


後編は、このような幕府と公家の確執の中で翻弄された、
和宮の替え玉として数奇な人生を辿った主人公フキについて述べようと思います。
 
 
 
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江戸に降嫁する途上で撮ったと伝えられる現存する和宮唯一の写真。
 
 
 
 
 
 
 

閉じる コメント(17)

この作品は青空文庫収録のものではありません。
しかしながら、図書館などで比較的簡単に手に入るものですので、
興味のある方はどうぞお読みになってみてください。

2015/9/15(火) 午前 10:02 [ もたんもぞ ]

それに有栖川宮という婚約者がいましたよね。
以前、TVでこの替え玉事件を推理番組にしたようなものを見ました!なかなか興味深かったです!

2015/9/15(火) 午後 8:15 リリィで〜す

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和宮というと大河ドラマ篤姫が印象的でした。演じていたのは堀北真紀。装束の印象とまだ顔がハッキリと覚えていなかったことから、誰だかよく分からなかった。

でも、初々しさがあってよかったです。

2015/9/15(火) 午後 11:24 [ マシマ ]

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私も随分前に読みましたし、ドラマも制作されたヒット作ですよね。
和の宮の墓には当時の写真のガラス版が胸に抱かれていて、発見された当日は若い束帯姿の家茂と思われる画像があったが、翌日には消失して世間に公開され無かったとか残念な事も有った様ですね。

明治維新後かに天璋院と和の宮と勝海舟が食事を共にして、天璋院と和の宮がどちらが給仕するかで少しもめたと。勝がお互いに給仕されたらと提案したというほのぼのな逸話も残ってるようですね。

2015/9/16(水) 午後 1:22 [ チャー坊 ]

> リリィで〜すさん
結構この話、テレビでも取り上げられているんですよね。
昔の貴人はめったに人前に顔を見せなかったので、
そういうこともあったかもしれないと思わず思ってしまうところがありますね。

2015/9/16(水) 午後 2:56 [ もたんもぞ ]

> マシマさん
堀北真希さんはかわいらしい女性ですが、
和宮の墓は戦後発掘調査された際、かなり綿密に調査されまして、
どんな女性であったのか現在ではかなり詳細にわかっています。
その調査報告を記した本の記事を書くつもりでおります。
少なくとも堀北真希さん風ではなかったと思われます(^_^;)

2015/9/16(水) 午後 3:01 [ もたんもぞ ]

> チャー坊さん
こんにちは(^_^)
自分、ドラマ化したものを見たことがないんです。
しかし、見た方の話によると、原作には及ばないという感想が多いようです。
確かに、この原作は、500ページほどの作品にもかかわらず、
一気に読み切ってしまう魅力がありますね。
ちなみに前に記事で書きましたが、
有吉佐和子さんの先祖は、池田屋で、新撰組の襲撃から逃れた長州の志士だそうです。

2015/9/16(水) 午後 3:08 [ もたんもぞ ]

京の公家衆にはそういう鬱積した思いがあったのは確かだと思います。
当方の最新記事でもそれに関する事を触れていますので、もし興味がありましたら、是非掲載した動画でも御覧になってみて下さい。
当時の皇室や公家にとって、幕府とはいつかは復讐すべき対象だったのかも知れません。

2015/9/17(木) 午後 9:23 ZODIAC12

> ZODIAC12さん
ぜひ拝見させていただきます。
公家もそうですが、日本全体が 日本列島に200年閉じ込められて、
鬱積とした状態だったのかもしれませんね。

2015/9/18(金) 午前 10:41 [ もたんもぞ ]

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こんばんわ

この作品は暗記するほど読みまくりました

花びら餅の場面忘れられません〜
祇園さんのこんこんちきちきんこんちきちん🎶も
実に効果的に使われてましたね

お薦め本20冊内には入れてもいい作品ですね

にゃいす

2015/9/23(水) 午後 11:54 桃豹

桃豹殿
この本の影響で
貧福のおまじない歩き
たま〜にやりまするぞ😁

2015/9/23(水) 午後 11:56 [ ぱんざぶろー ]

> 桃豹さん
最近話題になる作品は、私小説チックなものばかりじゃないですか。
私小説ってぶっちゃけ自らの体験ですから、
誰でもそれなりに書くことができるんですよ。
しかし、この小説のような設定の世界に
読む者を引きずり込む、しかも文字だけで、
というのは、かなりの実力がないと難しいもので、
事前の下調べから、考えると、気が遠くなるような作業が必要なはずです。
昔の作家はそういう労を惜しまないスタミナがすごいと思いますね。

2015/9/24(木) 午後 3:35 [ もたんもぞ ]

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この作品は発表時に大反響だったといいます
私はこれで有吉佐和子ファンになりました
話題作は他にも色々ありますが
この作品はまさに脂の乗り切った時期のもの
まだまだ活躍できたひとなのに
突然死が惜しまれます

2015/9/24(木) 午後 9:19 桃豹

> ぱんざぶろーさん
これを読んでから、祇園祭のコンコンチキチンが怖くなりました(^_^;)

2015/9/28(月) 午後 6:34 [ もたんもぞ ]

> 桃豹さん
明日、後編を掲載する予定です。
また、読んでくださいね(^_^)

2015/9/28(月) 午後 6:46 [ もたんもぞ ]

うふふ
こんこんだから
お狐様に取り憑かれたってぇのは
面白かったですね

ぼくは祇園さん大好きで
若狭屋の稚児餅も大好物ですにゃ

2015/10/4(日) 午後 4:43 [ ぱんざぶろー ]

> ぱんざぶろーさん
祇園祭、自分も一度見に行きたいものです(^_^)幕末の池田屋事件も祇園祭のあたりで起こっていますが、
有吉佐和子さんの曾祖父は、その池田屋事件で逃れた長州の志士だったんですよ。

2015/10/6(火) 午後 6:59 [ もたんもぞ ]


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