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ゴーリー。
アイスホッケーにおけるGKの俗称だ。
アイスホッケーアジアリーグ、中国・チャイナドラゴンのゴーリーは、今年日本の大学を卒業した日本人である。本日、彼の異国での挑戦を見て、気持ちが熱くなった。
今季、初の日光アイスバックスのゲーム観戦は対チャイナドラゴン。
日光霧降アイスアリーナへは、いつものAさんファミリーと一緒だった。
肌寒いアリーナ内で半袖Tシャツは私のみ。しかし、肌寒さを微塵も感じさせぬのは、アイスホッケーの醍醐味堪能の証だ。
昨季、選手層に悩んでいたバックスも、今季は「廃部の悲劇」となったSEIBUプリンスラビッツ選手の入団もあり、好調を維持している。バックス自身も、そして前身の古河電工も、廃部から数多の支援の末に市民クラブを経由した今がある。運命というものに交錯する、運否の気まぐれを思わずにいられない。
赤いユニフォームのチャイナドラゴン。その名のとおり、中国のプロアイスホッケーチームであり、ロシア選手も含めた体格には優れるが、スキルで圧倒的優位にあるバックスは5−0と完封勝利を収めた。観客も安心して観ていられる試合に、昨季とのギャップが大きい。
この試合で私の眼を釘付けにしたは、バックスの選手ではなく、前述の異国のゴーリーだ。
チャイナドラゴンのGK・井上光明。
大きくはないであろう身体に、ガンダムみたいな防具で身を固めてチャイナゴールを死守する日本人。実は彼の人生にも企業スポーツの悲劇は影を落としていた。
彼は、今年、法政大学を卒業して、SEIBUに入団するはずであったが、まさかの廃部という事態。その結果選んだ道が、チャイナドラゴンという異国のチームでのチャレンジであったのだ。言語に、食事に、環境に苦労することを承知で、好きなアイスホッケーを続ける道を決断。
今回の母国への遠征は、日光における日光アイスバックスとの3連戦で、この日は2戦目。前日は2−6での逆転負けで、雪辱を期した本日も前述のとおり0−5の完封負け。
この日も、補強による戦力充実のバックスからは無尽蔵なシュートが放たれた。(前日の第1戦は45本のシュート) バックスには井上が悲喜をともにするはずであった、SEIBUからの選手もいる。母国に「遠征」して、自らのホッケー魂だけで闘い、龍のゴールを守る男。
失点5が高いか、低いか・・・低くはないのだろう。何と言っても飛んでくるシュートの数が圧倒的だ。
しかし、井上はレッグパッド、スティック、全身とありとあらゆる自分を盾にゴールを死守。時には素早い反応で、キャッチグローブに重いシュートを収めた。きわどい混戦で見た、彼のダイブでのセーブにいい知れぬ熱を感じたのは、第3ピリオドの勝負も決した頃であった。プライドの盾は、最後まで硬質であった。
途中の激しい乱闘にも澄んだ目で冷静を崩さず、ドリンク一口で気持ちをリセットする。GKとは孤独なポジションなのだろう。彼はただひたすら己を維持し、「中国の」ゴールを独り守り続けた。
悔しい敗戦後、独りゴールを死守し続けた♯26のもとにチームメートが寄ってくる。労いの抱擁も、握手も、既に仲間との絆を感じるには十分すぎるほどに温かい。
そして、バックスとの握手の列が出来た。
♯26井上は龍の列の最後尾にいた。2本の列が行き交う・・・私は最後尾だけを視ていた。バックスの選手達は皆が井上に声を掛けている。
そして、最後に握手をしたのはバックスのゴーリー、♯39菊地だった。
菊地もSEIBU廃部によってバックスに移籍してきた選手。
東伏見ですれ違った二人が、日光で短く交わした言葉が聞えるはずもない。
しかし、その時バックスのメンバーも、審判までもが二人の握手をそっと見守っていた。
まるで、何か大切な一場面を切り取るかのように。
列を離れた井上は涼しげに、さっさとリンクを後にした。静かに最後の一矢を誓ったか。
第3戦は6日火曜日だ。
日本に来て(戻って?)寿司は食べたのか、蕎麦はすすったか。
彼は日本を離れて死守している。異国のゴールだけではなく、失いつつあった自分自身のアイスホッケーを。
帰り道、クルマの後ろで騒ぐ子供達をいなしながら、チャレンジする二人の我が友を思った。
廃部の悲劇にも自ら道を切り開いてきた元・バスケットバカ。そして、現在異国でチャレンジしているラグビーバカ。バカは私の最大級の賛辞の言葉である。
嗚呼、私も立派なバカになりたい。。
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