楕円の転がり、心の転がり・・・

家族、ラグビー、仲間が命・・・私の生き甲斐。夢に病んだ楕円オヤジの内緒の備忘録。

ラグビー観戦「日記」

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成蹊ラグビーに「主人公」はいない。
しかし、今季必死で這い上がってきた男達ならいる。

12月12日(土)の熊谷ラグビー場。
http://www.rugby-japan.jp/national/score/print/print4002.html

14番を纏った黒いヘッドキャップは、上を見ながらフィールドに帰ってきた。
そしてもう一人。対抗戦終盤、ケガに苦しんだミッドフィールダーは、その位置を最後尾に変えてスタメンに復活した。

快晴のフィールド。今日も背番号9番を先頭に登場。
軽く伸びをした主将・池田を中心に円陣が出来た。入替戦の空気を幾度も呼吸してきた男たちの落ち着きぶりが頼もしい。

まるで12時のキックオフを待っていたかのように、明治学院大学(以下明学大)は最初の1秒から激しくぶつかってきた。
いきなり自らのキックオフを強奪するや、成蹊陣になだれ込む。
前半4分、成蹊はラインオフサイドの反則を犯す。
鈴木レフリーの踵は右中間15mを示した。しかし、明学大はあえてPGを狙わず、左タッチに蹴りだす。この強気な姿勢を、成蹊は激しいディフェンスで押し返した。
最初の5分間。明学大の洗礼は、実際以上の時間に錯覚するほどに厳しいものであった。

開始直後から防戦にまわっていた成蹊は、太田のロングキック、中央付近でのBK攻防から、ようやく敵陣に攻め込む。

前半8分、明学大ゴール前の相手ボールスクラム。
ここで相手キックを素早い反応でチャージ、押し込んだモールがインゴールになだれ込んだ。パイルアップ、短い笛。
キャリィバックで右中間ゴール前、成蹊ボールのスクラム。

先制の絶好機。ボールはきっちりとNO8・小林の足元に装填された。
小林が相手FLを引きつけた刹那、右に待ち構えていたSH・池田にボールをパス。
池田は相手ディフェンスをかわして右隅に飛び込んだ。ゴール前の8−9で先制トライ!
三雲のコンバージョンは惜しくも外れたが、成蹊は苦しんだ末の先制点を獲得。
ここで成蹊は一気に流れを摑みたい。(5−0)

リスタートのボールもFL三浦がガッチリとキャッチ、固いバインドで押し込む。強固なモールが、流れを更に引き寄せるかと思われたその時、一瞬の隙をついた明学大がモールをターンーオーバー。右に展開し、再び反撃に転じる。
一転してピンチに立った成蹊はSO太田のタッチキック、SH池田のバックアップで明学大の攻撃を凌ぐ。そしてCTBの大森、藤本は渾身のタックルを続けた。

しかし、前半17分、成蹊は右中央ラインアウトをスティールされた直後、相手のハイパントにノックオンオフサイドの反則。
中央20mのPK。今度は明学大が確実にショットを選択して3点を返す。(5−3)

ここで成蹊は闘志に火をつける。

前半20分、FB三雲の鋭いランで大きくゲイン。中央右ポイントからのボールを受けたHO高田が相手FWが密集しているところを果敢に突破、大木のごとき太腿が高速回転すれば、背番号2はゴール前まで迫っていた。
あと5メートル! 捕まるか・・・ラストパス!
しかし、フォローの永井、惜しくもノックオン。成蹊ファンの歓声は溜息に変わり、明学大ファンは安堵の表情。

しかし、成蹊は直後の明学大ボールのスクラムをターンオーバー。ラックを連取すると、再び永井が「核弾頭」のごとく左ライン際を疾走! しかしトライラインを割ることは出来ない。

ここにきてエリア獲得がようやく安定してきた。
目前のインゴールになかなか手が届かない成蹊と、熱い闘志でディフェンスする明学大の攻防。メインスタンドは勿論、バックスタンドの両校ファンも沸き始めた。
明学大ファンのレモンカラーの小旗が打ち振られる。

前半25分、成蹊FWは明学大ゴール前でラック連取、スネークプレーでじわりとインゴールに迫る。
そして左隅、成蹊ボールの5mスクラム。
「成蹊! FW!」バックスタンドから野太い声援が飛ぶ。
この日、優位に立っていたスクラムを押し込みたい。組み直すこと3回。
明学大の激しい抵抗の前に、結局プッシュオーバー出来ず、チャンスを逃す。

前半33分、逆に成蹊は中盤のBKアタックにおいて、オブストラクションの反則を犯す。成蹊陣内10m内側、右中間のPKで明学大はショットを選択。
距離にして約35mのPGが決まれば逆転だ。しかし、キックは左に大きく外れ、これを拾ったCTB大森が果敢にアタック、自陣10m付近まで挽回。この密集から池田が素早く左に展開、永井、福嶋とボールは繋がる。
福嶋の柔らかいダウンボール。
このラックに、矢の様なフォロワーが走りこむ! 抜けた!
しかし、惜しくもスローフォワード。

ミスは見られるものの、成蹊のテンポは着実に上がってきた。
自由な司令塔・太田が叫ぶ。
「ここ、上げるところだ! 上げるところだ!」

高まる展開の意志よ。自由に繋ぐがいい!
成蹊BKのアタックは調子を上げ、前半36分、39分と、この日は左WTBに入った信田が快走、敵陣深く突入する。FWも纏まりあるモールで攻める。
しかし、最後の数メートルは遠く、ハーフタイムの笛。

前半は「行きたいFW」と「まわしたいBK」が、やや噛み合わなかった。
ここは、「成蹊のラグビー」をさせなかった「明学大の厳しいディフェンス」こそ賞賛されるべきであろう。

「やりたいことが出来なかった」と振り返った前半戦。
主将・池田を中心としたハーフタイムの反省は、後半「15人の意思統一」へと昇華した。

新たな闘志を入れ換えた成蹊フィフティーン。
後半開始の成蹊K.O.からFWが足を掻けば、モールは敵陣深く進んでいく。
スタンドの成蹊コールが15人を押す。

後半2分、成蹊は左隅5mマイボールスクラム。
ノックオンで一度はチャンスが潰えたかに見えた。
しかし、変わった明学大ボールスクラムに8人のFWパックが強烈なプレッシャーをかける。
こぼれた球に素早く反応するFL吉田。ブレイク早いPR新井がフォロー、突進するとボールはゴールまであと2mのところにあった。最後は福嶋が左隅に飛び込み、美味なるトライ!
左隅からの難しいコンバージョンも三雲が見事に決めた。
三雲がはにかんだような笑みを浮かべ自陣に帰る。(12−3)

流れ、勢いそのままに、三雲が縦横に走りゲインラインを越える。
池田は生きたボールに、更なる息吹を吹きかけ、FWとBKをリンクする。

後半2本目のトライは12分。
ハーフウェイ左隅の密集から、池田のスクート、福嶋のクラッシュを経て、ボールは太田から三雲へ。カメラを覗いていたら、三雲が「飛び出す絵本」みたいに敵陣に走り込んできた。
三雲からボールを受けた浦野は、八方を囲まれても絶妙のボディバランスでボールを活かす。
高田がクラッシュする。右サイドで密集を連取すると、最後にボールは池田から再び浦野へ。
瞬時にトップギアに入った浦野は、二人のディフェンスと、そして自らのスパイクまでも置き去りにしてインゴールに飛び込んだ。復活の狼煙は30mの力走。
コンバージョンは外れるも貴重な追加点。(17−3)

その後、一進一退の攻防が続き、スコアは動かない。
成蹊もリズムこそ摑むが、肝心なところでミスを犯し、攻めきれない。
明学大の厳しいプレッシャー、激しいタックル。

後半24分、明学大は中央10m付近で得たPKからタッチ。安定したラインアウトから成蹊ゴールラインを脅かす。辛うじてゴールラインは死守する。

後半37分、スコアはようやく動く。
中央左の成蹊ボールスクラムから、太田が右裏に絶妙のキック。
ここぞとチェイスする成蹊BKがボールに殺到する。しっかりと確保されたボールが順目にまわる。
浦野にボールが託された時は、僅かな狭いスペースでの2対2。難しいか?!
しかし、最初の一の矢を難なくかわした浦野には、もうインゴールしか見えていなかった。
必死のディフェンスに一度は転がりながらも、素早く這い上がり右中間に飛び込んだ。
三雲のコンバージョンが綺麗な弧を描いた。(24−3)
この浦野の2本目のトライこそ、負傷から這い上がってきた彼の最終学年と、それをサポートした仲間のトライである。

リスタートのボール、明学大FWが鋭利な槍のごとく刺さる。
闘志には闘志だ。
後半42分、成蹊は中央からの展開で太田がラインの裏に出る。10m中央で出来た密集から、素早く池田がパスアウトすると、ボールは藤本から三雲に渡った。
三雲が力強く強引なタテ突破を図れば、一気に視界は開けた。強風で糸の切れた凧みたいに、右に左にステップを踏み、インゴールに迫る。
あと5mのところで、ディフェンスにかかるも、すかさずフォローした男がボールを抱くように右中間にグラウンディングした。NO8の小林だ。FW歴1年目のNO8は、この日も愚直にフォローを続け、ロスタイムに自らインゴールを陥れた。

キックオフ時より、少しばかり長くなった三雲の影がゆっくりと動く。
アタリのいいボールが力強くバーを越えた。
今季の対抗戦をしめくくるゴールは、どこかの歌のように外れることはなかった。

ノーサイド。Aグループ残留だ!

31対3。破綻を知らないディフェンスは、立教戦に続き、この日も難敵・明学大をノートライに抑えた。
勝利の直後、バックスタンドに、そしてメインスタンドに一礼をする選手達の穏やかな表情がいい。
入替戦という日を包んでいた「なにか」から解放されたような安堵。

スタンドに目を移せば、高校・土屋先生が見守って下さっていた。
そして、つい先ほどまで両手握り締めていたご父兄の目にも、「成蹊!!」の声援を送り続けた関係者の目にも、光るものが浮かんでいる。ついこちらの涙腺までもが緩んでしまう。
「熱くなってしまうから」とひとりバックスタンドで観戦していた御仁は、感慨深げな表情で三脚を畳んでおられた。やはり4年生のご父兄だった。

不肖ながら、一介のOBの戯言を記したい。
最後にゆっくりと熊谷のインゴールの芝でクールダウンさせてやりたかった。
お前たちの流した汗滲みる熊谷の芝を、裸足でゆっくりと・・・。
実は一人だけ踏みしめた男がいる。浦野秀平。後半12分の「全員のトライ」の代表者として、浦野の右足は「熊谷のインゴール」を裸足で踏みしめていた。

歓喜の記念撮影を終えて、ただ安堵の表情を浮かべてスタンドに消えていった成蹊ラガー達よ。
そしてグランドの選手とともに戦い続けた仲間達よ。
心からおめでとう。

この日、「勝利のみ」「結果のみ」が求められる入替戦において、ガッチリ摑んだもの。
これこそは、今季の成蹊大学ラグビー部に関わる全ての「最大公約数」である。

「集大成」は20日、西のライバル甲南大学との定期戦。
願ってもない相手との、グランド開きの一戦である。
緑眩しい新グランドで「成蹊のラグビー」を完遂しよう! そして楽しもう!

今季最後となる「緊張」の一日に、お前達の全ての「感謝」を込めて!


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