楕円の転がり、心の転がり・・・

家族、ラグビー、仲間が命・・・私の生き甲斐。夢に病んだ楕円オヤジの内緒の備忘録。

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2013年05月

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こんなブログ

ブログをさぼってかなりの期間になる。
でも、たまに意外な人が私のブログを知っていたりして驚かされることがある。
やはり、ラグビーのことを書き留めておくならブログなんだなと思う。


また、少しずつ書いていこうと思います。
ゆっくり、無理なくやってみますのでよろしくお願いします。

雨に濡れない自由席

読んでもらいたい人がいて、以前書いたブログを書き直してみました

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ラグビー好きにとってラグビー観戦はいつでも至福です。
仲間や友人と行くのもいいですが、独りでのソロ観戦もまた良しです。
文字通り独りの世界ゆえに「自由空間」を満喫できます。

ひとり電車に乗りながら観戦者としての気持ちも高め、ラグビー場で自分ひとりの席を確保した時の、アジトをかまえたような感覚はたまりません。これはあらゆるスポーツファン共通のものでしょう。
もっとも、ラグビーにおいては以前ほど自由席が混雑することが少ないのが残念です。

自分ひとりの世界、そんなソロ観戦の際に、気のいいラグビーファンと隣り合うと、また違った楽しみに遭遇したりします。
私が自分から話しかけることは少ないのですが、それでも、本当にラグビーを好きな方と会話がはずむのは楽しいことです。

私には今でも記憶に残る、一度きりお会いしたオールドファンがいます。
それは、早稲田大学・中竹竜二前監督が2年目シーズンでした。2008年の1月12日、「早慶対決」となった大学選手権決勝に行ったときのことです。
その日は朝から雨が降っていました。
私は家でのテレビ観戦か国立競技場かと迷った末に、ひとりでJRFU MEMBERS CLUBのシーズンクーポン券を握って国立へ行ったのでした。
冬の雨にこごえながら、一人で決勝を観るんだ! そんな、緩い冒険心に少々気持ちは高揚していました。
傘をささずにすむ場所。狙う場所はひとつ、スコアボード下でした。

キックオフの2時間前、12時ちょうどに到着すると、赤と白の鮮やかなジャージが雨の中で必死でプレーしていました。
「東西対抗は高校生がいいな! この必死さがいいんだ!」なんて思いながら、私はスコアボード真下の「雨に濡れない自由席」で空席を探しました。
しかし、私の不安は的中しました。2時間前では遅かったのです・・・。
すでに、ちょいと一杯はじめている年配のファンや若者のグループ、熱心な家族連れなど、本当にラグビーの好きな方々。スコアボード下は絶望的なほど隙間なく埋まっていました。

遅かったか…。

特等席を諦めようかと、雨にぬれた人気のない前方の席に目を移した時でした。
「お一人ですか? ここで良かったらどうぞ」
柔和な表情の、初老の男性が荷物をどけながら声を掛けてくださいました。

男性は娘さんであろう女性と二人でご観戦でした。
私がお礼をしながら席につこうとすると、男性は丁寧に席を拭いてくれていました。
男性が「寒くて参りますねぇ。お一人で観戦ですか」と笑顔で話しかけてくださったこともあり、ときおり会話をしながらの観戦になりました。

男性の隣に座っておられた娘さんは落ち着いたエンジのマフラーをしていました。
私はその男性に「今日は早稲田の応援ですか?」とお聞きすると、とても穏やかな顔で教えてくれました。
「いやあ、実は私は関東学院のファンなんです。息子はかじったくらいの選手でしたけど、関東学院ラグビー部だったので、ずっと応援してます。でも今年はあんな残念なことになっちまって。だから、今年はライバル早稲田にどうしても勝って欲しくて応援に来てしまいました」
一部の選手による残念な不祥事について嘆きながらも余計なことは語らず、表情には照れ笑いとも何ともつかぬ、ラグビー好きのオーラがにじんでいました。

大学選手権決勝という大舞台とはいえ、真冬の雨の自由席です。
ましてや贔屓の関東学院は出場していません。
こんな冬の雨の中にこそ、熱き素晴らしいファンの方がいるのだと心が動かされました。

男性は特に早稲田の五郎丸選手を応援していました。
なんでも、2年くらい前の秩父宮観戦のときに、ゴール裏の席(伊藤忠側)で五郎丸選手のコンバージョンを直接キャッチしたことがあり、その時に間違いなくピッチの五郎丸選手と目があったのだそうです。
無邪気な(失礼)男性の言葉に、少年の心宿る良きおとなを見た気がしました。
そのとき思い出したのは、ラグビーファンの間では有名なJ・P・リブの言葉でした。(※)

雨中の熱戦は早稲田の勝利でノーサイドとなりました。
早稲田、大学日本一!
男性は興奮するわけでもなく、ただ早稲田の勝利を喜び、満足していました。
私も熱戦とともに40分×2本の会話を楽しませてもらいました。
「いあや、早稲田・・・良かった。今日はいろいろ有難う。明日は私は秩父宮でトップリーグ観戦ですよ!」
男性は恐るべきラグビー狂ぶりを露呈しながら、明日の観戦を語り、ゆっくりと笑顔で席を立たれました。競技場を出る観客の階段の列をゆっくりと下っていく男性が出口に吸い込まれて行きます。
私は改めて頭を下げました。

席で少しの間ぼーっとしながら、ひとり観客としての余韻を楽しんでいました。
そして、周囲に人も少なくなったころ、男性が試合途中にポツリと言っていたことを思い出しました。
「去年、関東学院が決勝で早稲田に勝ったでしょ。その試合後に中竹監督を喫茶店で見かけたんですよ。年寄りのOBの人なのかなぁ、これでもかってきつい言葉を浴びせられていて。だから今日は絶対に中竹さんの早稲田に勝って欲しいんですよ」

いつしか雨はやんでいました。
ふと見れば、メインスタンドにはまだ多くの人が残り、カクテル光線が雨上がりのグランドを鮮やかに照らしています。ピッチでは大きな人の塊が出来ていました。その中心で中竹監督が胴上げされています。
関係者ではない私にとって、きわめて偉大な他人事である早稲田大学の「荒ぶる」合唱を眺めていました。
凍えるような寒さの中で試合を観て、見知らぬ男性と会話を楽しみ、暗くなったグランド上で照明に浮かび上がる大学ラグビーのクライマックスを見た一連の時間は、まるでおとぎ話のような不思議な感覚でした。

いよいよ人も少なくなり、私は少ない荷物を持ってようやく席を立ちました。
スタンド裏をひとり歩きながら「たまには、ひとりで飲もうかな」なんて考えていると、ニヤケた巨漢がこちらを見ています。
学生時代に「荒ぶる」を歌えなかった会社の後輩である、早稲田ラグビーOBのNでした。
「今晩同期会なんすけど、オレ、それまで時間余っているんすよ」
「オレは時間つぶしの相手か!いいだろう」
おとぎ話のあとの、こういう偶然的な現実も有りだなと思いました。
Nと新宿でビールをあおりながら、ひたすらラグビーの話をしました。
サラリーマンNは、少年の心を持ったまま未だ少年そのものであり、これはずっと変わらないでしょう。
でも、少年の心があればそれでいいのです。

そうそう、Nのことなどは別にいいのです。
あの日の永遠の少年は国立競技場のあの男性ファンなのです。
今思い起こしても鮮明な記憶において、寒さを感じた気がしないのは、屋根代わりのスコアボードのお陰ではないでしょう。

最近、ラグビーをコーチをすることに夢中になってから、観戦の機会はめっきり減りました。
またおとぎ話のような感覚に触れてみたい。
そんな気持ちの一方で考えます。
冬の雨の中でも来る人がいるのに、晴れた日に多くの人が集まりません。
多くの人にラグビー場に足を運んでもらうにはどうしたらいいのでしょうか。
難しい、難しすぎます。
今はそんなことを考えながらコーヒーで頭を湿らせています。

最後に前述の著名なラグビーマンの言葉を。

ラグビーは、少年を最も早く大人に変貌させ
そして、大人に永遠に少年の魂を抱かせる。
私がラグビーから学んだことは、人を制圧することではなく人と共に生きることだ。
だから…ラグビーは素晴らしい。
                          ジャン・ピエール・リブ

私は有名な前2行とともに、後ろの2行が好きです。


※私のプロフィール写真は、あの日の雨の濡れない自由席からのクライマックスの光景です。

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