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抗リン脂質抗体症候群 -検査診断の最新情報と将来展望-
 
山口大学大学院医学系研究科・生体情報検査学・野島順三
 
抗リン脂質抗体症候群(APS)は,種々のリン脂質およびリン脂質結合タンパクを標的抗原とする抗リン脂質抗体(群)の出現に伴い,動・静脈血栓症や妊娠合併症などを発症する自己免疫疾患である.2006年に改訂されたAPS国際分類基準(“Sapporo Criteria” Sydney改訂版)では,抗リン脂質抗体検査は2つのカテゴリーに分けられており,カテゴリー1LA診断改訂ガイドラインに基づいた方法でループスアンチコアグラント(LA)活性を検出する事である.これは抗リン脂質抗体がIn vitroにおいてリン脂質依存性の凝固時間を延長させる性質を利用して,その阻害活性(LA活性)を検出することによりサンプル血漿中に抗リン脂質抗体が存在していることを間接的に証明する定性検査である.カテゴリー2は酵素固相化免疫測定法(ELISA)による抗リン脂質抗体の定量検査であり,APS国際分類基準に採用されている抗リン脂質抗体は,IgGおよびIgMクラスの抗カルジオリピン抗体(aCL)と抗β2-グリコプロテインⅠ抗体(aβ2GPI)である.一方,現時点ではAPS国際分類基準に採用されていないが将来的に有望視される抗リン脂質体として,抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン抗体(aPS/PT)の測定系が確立されている.これまでの臨床研究からaPS/PTLA活性を示す重要な抗リン脂質抗体であり,APSの臨床病態に特異性が高いことが示されている.さらに近年,2GPⅠのサブセットの中でもβ2GPⅠのドメインⅠに対する抗体:2GPI-domainⅠが血栓形成作用を有することが確認され,研究段階ではあるが測定系が開発されている.
抗リン脂質抗体は病原性を有する自己抗体であり,実際に高力価の抗体が複数種混在する患者で,より血栓症発症のリスクが高くなることが知られている.特にaCL/β2GPⅠaPS/PTLA活性が全て陽性の症例は,血栓症の発症(再発)率が際立って高い.そこで,患者が有する抗リン脂質抗体の種類や抗体価から血栓症発症(再発)リスクを層別化する試みとして、抗リン脂質抗体スコアが確立されている.このようにAPS患者血中には多種多様な抗リン脂質抗体が混在しており,各抗体の持つ病原性が複雑に絡み合ってAPS特有の多彩な合併症(脳梗塞・深部静脈血栓症・肺塞栓症・習慣流死産など)が生じると推測される.従って,臨床的に有用性の高い抗リン脂質抗体を複数種・同時に測定できる検査システムを確立し,陽性抗体の種類や力価から抗リン脂質抗体スコアを求め,患者毎に発症リスクの高い合併症のパターンを予測できる新たな検査診断法の確立が望まれる.
本講演では,APSの疾患概念を概説し,抗リン脂質抗体検査の現状と問題点を提起した後,APS検査診断の最新情報と将来展望について述べる.さらに,APSの病態発症機序に関連して,我々の研究結果を基に抗リン脂質抗体(aCL/β2GPⅠaPS/PT)による血栓形成機序(仮説)を概説したい.
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