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日本ハム入団フィーバーから半年、ソフトボール出身の大嶋匠選手の現在地!
 
 蝉時雨が、絶え間なく聞こえる。千葉・鎌ケ谷にある日本ハムの二軍施設。夏でも冷涼な札幌ドームから遠く離れ、強烈な太陽が照りつける灼熱のグラウンドでは、若き力がハングリーに牙を研ぐ。その中に、大嶋匠がいた。体形は心なしか、引き締まったように思える。体重は入団時に比べ、5キロほど絞れたという。
「バッティングについては、6月の終わりぐらいから、ようやく『こういう感じなのかな』というのが出て来ました。ちょいちょい、ヒットが打てるようになってきた。今の課題はストレートを待ちながら、変化球にも対応できるようにすること。だんだん出場機会も増えてきたので、練習していることを、しっかりと試合に出せるようにしていきたい」
 真っ黒に日焼けした、いい顔で語ってくれた。
 昨秋のドラフト7位で日本ハムに入団。早大ソフトボール部出身という異色の経歴は、驚きとともに迎えられ、大きな話題を呼んだ。そして、今からちょうど6カ月前。名護キャンプの紅白戦ではプロ初打席、初スイングでバックスクリーンに特大アーチを放った。ド派手なデビューは大々的に報じられ、異競技からの挑戦に注目が集まった。それでも、開幕一軍はならなかった。スポーツニュースがトップで扱い続けた2月の日々を、大嶋は振り返る。
「見たくなかったです、ニュースを。『ほっといて』という感じでした。しんどかった。自分が言ったのと、違うとらえ方をされてしまったり。まだ、そういうのが、ちゃんと分かってなかったんです」

「目標設定用紙」に記した「前半戦で、必ずホームラン」。

 例年、キャンプで注目される黄金ルーキーは、アマチュア時代からスポーツマスコミとの距離感をある程度、つかんでいるものだ。学生時代、報道陣とのかかわりがなかった大嶋には、その「助走期間」がなかった。突然、フィーバーの渦中に放り込まれることになったのだから、困惑したのも無理はないだろう。それでも、こう言って笑った。「今では、いい経験ができたなと思います」
 鎌ケ谷の二軍寮では、高校教師から転身した本村幸雄教育ディレクターが、選手個々の精神面に心を配り、モチベーションを高めることに尽力している。4月下旬、本村ディレクターへと提出する「目標設定用紙」に、大嶋は記した。「前半戦で、必ずホームランを打つ」
 ロッテ・大嶺祐太、渡辺俊介。西武・マイケル中村。いずれも野球ファンならお馴染みのビッグネームと言っていいだろう。大きく報道されることはなかったが、前半戦、大嶋は二軍でホームランを3発、放っている。球界で確かな実績のある、この3人からだ。
「ホームランは正直、打てる気が全然しなかった。1本出ると、『あんな風にホームランって、行っちゃうんだな』という感じでした。一番印象に残っているのは、マイケル中村さんからの一発です。レフトのポール際に打てたんで。ずっと逆方向に強い打球を打ちたいと思って、取り組んできた。まぐれかもしれないけど、打てるというのが分かった」
 
「公約達成」の3発を、本村ディレクターは評価する。
「頑張り屋なんですよ。一生懸命、練習している。ソフトボールで大学ジャパンの頂点を極めた男ですから。プライドもあるのでしょうね。言ったことを理解するのが、速い。あとはやっぱり、目がいい。しっかりボールを見極めています。規定打席に達していない中での3本塁打ですから、価値があると思いますよ」
 真夏の午後。グラウンドでの打撃練習を終えた大嶋は、室内練習場に籠もると、福沢洋一・二軍バッテリーコーチとワンバウンドの捕球練習を始めた。蒸し風呂のような暑さの中、必死に体全体でボールを止め続けた。自然と汗が噴き出す。ミットを操る動きも、2月とは別人の軽快さだ。それでも「まだまだ、全然です」と、本人は言う。
 横浜高からドラフト4位で同期入団したキャッチャーの近藤健介は、この夏から一軍に帯同し、将来の正捕手候補として英才教育を施されることになった。自ずとファームで「捕手・大嶋」の出番は増える。実戦マスクの機会を重ねることで、配球面の理解を深め、それがバッティングにいい影響を与えることになるのでは――。クレバーな大嶋のことだ。好循環が起きる可能性は、十分にある。

いつか、高校の先輩・布袋寅泰の「バンビーナ」に乗って――。

 最後にひとつ、聞いてみたかった。札幌ドームの打席に立つ時に流れる、登場曲。大嶋君は、何にしようと思っているの? 少しだけ照れて、明かしてくれた。
「自分、高校(群馬・新島学園)の先輩に布袋(寅泰)さんがいるんですよ。だから、やっぱり布袋さんの曲で入りたいなと思って。『バンビーナ』とかですね」
 8月15日現在、二軍戦では46試合に出場し、打率1割9分1厘、3本塁打、打点12。数字で評価されるプロの世界で、これが大嶋匠のリアルな「いま」だ。野球選手としてはもちろん、物足りない。だが、成長への比例定数は大きい。伸びしろは無限大にある。
 北の大地で「バンビーナ」が大音量で轟き、打席に立つ大嶋へと万雷の拍手が注がれる――。そんな夢は意外と早く、現実になるかもしれない。この男はこれから先、「目標設定用紙」へと、どんな未来予想図を描いていくのだろうか。
 鎌ケ谷の午後は、きょうも暑い。蝉時雨とひこうき雲に彩られる中で、大嶋匠はひとり、バットを振り続けている。
 
Number Web.より転載

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