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先日広島県眼科医会雑誌に投稿した、40歳の若さで昨年亡くなった後輩眼科医への追悼文です。
名前をイニシャルに替えた以外は原文通りです。

「魂のルフラン」〜K.H.先生へ… 野間 一列(広島市)



「あと3日の命だとしたら何する?」

会話に窮した頭の悪い男女の禅問答は、生のありがたみを甘受するだけの、
最も低俗な実存という名の想像表象にすぎず「トトで6億当たったら何に使う?」
といった夢想にふけることと同工異曲である。
同様に死者への弔いとして嘆き・失意・愁傷を語ることは、
死者に対する生者の限りない驕りでもあるかもしれない。
自身にGlioblastoma maltiformの診断が下った直後から、
彼が周囲との接触を一切遮断し続けたことに、彼の意思を汲み取る必要を感じた。
彼はそういった憐愍や同情の類は徹頭徹尾嫌う人であったのだ。

※1「生と死は本来等価なものである」
※2「死は生の対極ではなく、その一部として存在している」

ここに彼の死への悼みを私が書き連ねることは、決して彼の本意ではないと確信し、
あくまで対等な立場で彼と向き合ってみようと思う。

物事を類型化して語ることは決して好ましくはないが、私の裡では(彼の)入局当時、
多くの若い眼科医の例に漏れず、H先生に※3碇シンジがOverlap(エヴァ用語でシンクロ)して見えた。
しかしそれはすぐに間違いであったことに気づかされた。
漱石の「こころ」に記された甘えの構造「孤独を人一倍好む癖に、時折たまらなく人恋しくなる」
といったアンビバレンスは、ネットが支配する現代社会ではもはや大衆の自意識の根底となってしまったが、
不思議なことに彼はそういった感性を排除した人であることをすぐに知らされる。
万能感の病理という言葉がある。
※4「No1にならなくていい。もっともっと特別なOnly one」
という唾棄すべき一句…
「自分は特別な存在であり、今の自分がうまくいかないのは、自分が間違っているのではなく、
とりまく社会が間違っているのだ。こんなはずではない。大好きだよオレ…もっとできるはずだよオレ…」
歪んだ自己愛に耽溺する輩の多い中、おそらく彼は、思春期に誰もが陥り引きずってしまう、
かような精神病理から相当早く抜け出していたのではないだろうか?
だからといって、彼はニヒリストでは決してない。
そういう意味では、本当に特別なCoolで聡明な人であったのだ。そんな彼に私は強く惹かれていた。

彼は自分のことをみだりに語ることはなかった。
然りとて、近代政治の宿痾とも云われる「表現と表出の混同」という観点に立てば、
彼は決して表現だけの人ではなかった。
古めかしい特撮のテーマ曲に例えて恐縮だが※5「疾風のように現れて疾風のように去ってゆく…」
彼はHit and awayがとても上手な人でもあった。
さっきまでそこにいたかと思うと、いつの間にかいなくなっている。
多くは語らないが、場を濁すことは決してない。そこが彼の魅力でもあった。

私に彼を語る資格があるかどうかわからない。
ただ、個人的な話で恐縮だが、普段はあまり参加しない勉強会でも、
私が拙い講演をさせてもらう折は必ず足を運んでくれた。
医局の開局50周年記念号に、外来が終わった後、
当時の斜視外来の部屋で私と二人っきりで競輪予想に明け暮れたことを
「研修医時代のよき思い出」として記してもくれた。
そして彼は私のぼやきや毒言を、殊の外喜んでくれた。
 
彼の死から4ヶ月経った7月の雨の日の午後、お父様のH先生に案内して頂き、
M先生と伴に、彼の墓前に焼香した。
おりからの雨はその時数分だが確かに止んだ。彼が演出してくれた、
彼らしい控えめなシーンメイキングだと思った。


※1 「生と死は…」:最後の使徒となった4th children渚カヲルが、
エヴァ初号機の拳の中で死の目前に残した言葉。エヴァ(新世紀エヴァンゲリオン)については後述。

※2 「死は生の…」:ありきたりの実存小説であるにかかわらず、何故か異様にブレイクした
「ノルウェーの森(村上春樹)」の一節と死生観。

※3 碇シンジ:エヴァンゲリオン初号機パイロット。
いまさらながら「新世紀エヴァンゲリオン」とは、主人公の内的世界を深く掘り下げ、
社会現象を巻き起こした1990年代の代表的アニメである。
サブカルチャーへの精通を自称するならば観ずに済まされない。
血染めの眼帯+包帯をした綾波レイのFigureは私の宝である。
エンディングのテーマ曲として使用され、パチスロ版の黄色Big中にも流れる
JAZZの定番「Fly Me to the Moon」は秀逸。

※4 「No1にならなくていい…」:ご存知SMAPが唄う「世界に一つだけの花」のサビ。
スカンチのローリー寺西の従兄弟でもある元覚醒剤中毒者槇原敬之作。

※5 「疾風のように現れて…」:言わずとしれた「月光仮面」の主題歌。
全身に包帯をまきつけただけの白装束にグラサン+赤いマントを羽織っただけのコスチュームに、
強さはみじんも感じられず「疾風のように現れて、相手が強けりゃ逃げてゆく…」
という替え歌を口ずさむ輩が多かった。
むしろのちに永井豪によってリメイク(パロ化?)された「けっこう仮面」の方が圧倒的に衝撃。

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