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局麻の手術中に「しまった」「だめだ」「ごめん」「すみません」といった、 ネガティブな発言をすることは、後々トラブルの原因となるため決してしてはならないと、 我々眼科医は研修医の頃から教えられてきました。 手術中に自分の緊張を和らげるため、スタッフに冗談を飛ばす術者もいらっしゃいますが、 手術を受ける患者にすれば「もっと真剣にやってよ!」と帰って不安が増すという場合もあります。 ならば、手術中はむしろ押し黙って何も言わない方がよいのではないかとも思ってしまいますが、 沈黙もかえって患者を不安にさせることもあるわけです。 このバランスがとても難しい... 私は患者さんに「心地よい気持ちになってもらいながら」手術をしているのだろうか? 事例1:患者にはみんな聞こえている 一人医長のA医師は赴任した病院のスタッフが、なかなか手術器具の名前を覚えてくれないのに加え、 繊細な器具を粗雑に扱ってすぐに先端を傷めてダメにすることをとても悩んでいた。 思案の末、 「器具の名前を覚えやすくするため」 「高価な器具であることを認識してもらうため」に、 不謹慎ではあるが、器具名に価格を付けて呼ぶことにした。 例えば「6万円のセッシ」「マイクロ剪刀10万円」など... その効果はてきめんで、手術は円滑に進行するようになり、器具の損傷も激減した。 ところが、ある日の手術中、 「はい、次は6万円ちょうだいね〜...」と手術介助の看護師に告げたところ、 「先生、すみません...今お金の持ち合わせがないんです...」 とドレープ(顔を覆っている布製のもの)の下から、患者が申し訳なさそうに答えた。 事例2:助手も発言には気をつけよう 翼状片の再発に悩んだB医師は、新しい術式を学んでこれを実践すべく手術に臨んだ。 助手には他病院から派遣された、後輩で勉強熱心なC医師が尽いた。 手術は順調に進み、終了直前に出来栄えを見たC医師が一言、 「先生、でもこの術式、結構再発が多いんですよね...」 翌日、診察に来た患者は「何故自分に再発の多い手術法で行ったのか?!」を訴えた。 そのようなことはないと説明するも、当然患者の怒りは収まらない。 「だって隣にいた医師が再発が多いと言っていたではないか?!」と... 結局数ヶ月たっても再発しなかったため患者は引き下がったが、 その間患者が診察に来るたびC医師が恨めしく思われた。手術助手の重要な役割の一つは、術者を励まし、時には術者の手技を称賛することでもあります。 決して手術中に、術者や手術手技を揶揄するような発言はすべきではなく、 むしろ助手が終わり際に「先生、上手くいきましたね」 と言ってくれると患者もより安心することができます。 (岡山済生会総合病院眼科 瀬口次郎先生の文章を一部引用させて頂きました) これ以外に付け加えるありそうな話として 白内障の手術中... 水晶体の乳化吸引(PEA)が終了し、次に残った皮質を吸引中のこと。 術者は小さい核片が残っていることに気づき、I/Aチップのみでの吸引に窮し、助手に 術者:「スパーテルない?」 助手:「ありません...」 術者:「じゃあシンスキーは?」 助手:「ありません...さっきのチョッパーならありますけど...」 術者:「チョッパーか...ならそれでいいから渡して...」 術翌日、患者から 「よく見えるようにはなったんですけど、私の目には何か足りなかったんでしょうか? この先また見えなくなるということはないですよね...心配です...」 「○○ない?」「じゃあそれでいいから渡して...」 は結構どの眼科医も平気で交わしている言葉だと思いますが、慎むべきかもしれませんね... 写真は外来を受診した小林豊(競輪)選手です。記事とは直接関係ありません...
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2008年04月26日
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