「ここでキスして」は椎名林檎の3rdシングルであり、1st album「無罪モラトリアム」に収録されている。
かつて「風雲ディストーション」というファンクラブに属していたくらい、私は彼女が好きだった。
彼女の魅力は、 「自分が自意識過剰であることを敢えてカミングアウトしている」ことにある。
通常のミュージシャンにおける自意識過剰は、執拗に「受け手(聞く側)」に媚へつらいおもねって
「売れるためだったら何でも...」と、なりふりかまわず聞き心地のよい曲を世に提供し、やがて
「自分の音楽って何だったのか...」すら見失ってしまうのだが、彼女は違った。
彼女は他者から自分がどう見られているかを楽しんでいる。セーラー服姿やナース姿のジャケ写は
それの現れだと言えるし、「歌舞伎町の女王」で描かれるような女性、様々な歌で執拗なまでに
歌われる恋愛至上主義、恋愛依存症的な「あたし」もそれの現れだと言えるであろう。
しかし、自意識に屈してしまいそうな面を彼女が持っているのもまた事実のようである。
「飛交う人の批評に自己実現を図り戸惑うこれの根源に尋ねる行為を忘れ(同じ夜)」というフレーズは、
明らかに自意識に屈してしまいそうな彼女が歌われている。
また、彼女があえて自作自演屋を自称するところにも、彼女の弱さが現れているような気がする。
彼女は自作自演屋を自称することによって、自分が歌で描かれるような女性ではないということを
暗に示唆したがっているのではないだろうか。行き過ぎたセーラー服やナース姿による演出も、
あえて行き過ぎた演出をすることによって、 「表現者椎名林檎はあくまで演じられているのよ」と
強調しているように思えてならない。
要するに「受け狙い」により引き寄せられた刹那、我々は、いとも簡単に心地よく「梯子外し」
をされているのだ。精神医学的に彼女の音楽を人格の一部として、理解しようものなら「分裂」
しているとしか言い様がないが、それが彼女の最大の魅力なのである。
久々に「無罪モラトリアム」を全部聴いてそう感じた。
いずれにしても「椎名林檎」は可愛いですね!
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