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ナカタさんは「ホシノさんの背中を見ておりますと、骨がずれているのがわかりました。何かがずれておりますと、ナカタはこう、もとに戻したくなります」(第24章)と言っていますし,カーネル・サンダーズは「私の役目は世界と世界とのあいだの相関関係の管理だ。ものごとの順番をきちんと揃えることだ」(第30章)と言っています。ものごとを正しい状態に整えようとする性分の持ち主であるというところが,ナカタさんとカーネル・サンダーズの共通点です。 しかも,肉欲とは無縁で性的に無垢なナカタさんと,美女をあやつり売春をあっせんするカーネル・サンダーズは,ジキルとハイドのように正反対のキャラクターであるとも言えます。 ナカタさんが眠るとカーネル・サンダーズが登場し,カーネル・サンダーズが姿を消すとナカタさんは目を覚ますというあたりの展開も,ジキルとハイドのような二重人格を疑わせます。 チェーホフのドラマツルギーについて語るカーネル・サンダーズに対して,ナカタさんは自分の名前さえ書くことができません。 カーネル・サンダーズは,「プラグマティカルな存在」とか「継続情報の感知処理の省略」などという言葉を駆使しますが,ナカタさんは読み書きができません。 とても頭の良い少年だったというナカタさんから失われてしまった言語操作能力(そしてもしかすると性衝動)が,「かたちというものがない」「純粋な意味でメタフィジカルな、観念的客体」(第30章)としてのカーネル・サンダーズになったのかもしれません。 …とまあ,ナカタさんがカーネル・サンダーズなのではないかと私が疑う理由は,こんなところにあります。 警官は用紙をとりだし、掛け時計に目をやり、ボールペンで現在時刻を記入し、ナイフで刺殺と書いた。「まずあんたの名前と住所だ」
「はい。ナカタサトルといいます。住所は――」 「ちょっと待って。ナカタサトル、どんな字を書くの?」 「ナカタは字のことはわかりません。申し訳ありませんが、字が書けないのです。読むこともできません」 以前「ナカタ」という名前は最強のアナグラムである!という与太を飛ばしたことがあります。小林長太郎さんのブログ「負荷」にアップされた『海辺のカフカ』の記事(トラックバック先の記事)へのコメントとしてです。 「ナカタ(中田)→タナカ(田中)→タカナ(高菜)→カナタ(彼方)→カタナ(刀)→ナタカ(鉈か)」 田中と高菜は意味不明ですが,空間を移動することが重要なモチーフになっている『海辺のカフカ』において,「カナタ(彼方)」という単語は意味深です。 カタナ(刀)という単語は,田村浩一およびジョニーウォーカー殺害の凶器であるナイフを連想させます。 それからちょっとこじつけめいていますが,「ナタか(鉈か)」というのは,カフカ少年が森に入るときに持っていた「小型の鉈」(第41章)に通じます。 ところで,ナカタさんのフルネームが何であるのか,読んでいるときに意識することはあまりないのですが,警官とのやりとりの場面には「ナカタサトル」という名前がはっきりと示されています。しかも,ホシノさんと一緒に甲村記念図書館を見つけた時,「コウムラキネントショカン?」(第38章)とつぶやいたときと同じように,文字が書けないナカタさんの意識をなぞるようにカタカナで表記されているところが気になります。 ナカタサトル=NAKATASATORUです。 太字部分の「KA・SA・RU」をバラバラにして並べ替えると・・・, そうです。ナカタサトルという音素のつらなりの中にも「カラス」(KARASU)が隠れているのです! 「さくら(SAKURA)」は「カラス(KARASU)」のアナグラムでした。 「トヨタの黒いスープラ」や「甲村記念図書館」という音素のつらなりの中にも「カラス(KARASU)」が隠れていました。 そして,「ナカタサトル」という名前の中にも「カラス(KARASU)」がいたのです。 さらに言うと,「ナカタサトル(NAKATASATORU)」から「カラス(KARASU)」を引くと,残りは「ナタト(NATATO)」になります。 ナカタサトルで何とも意味深なアナグラムが成立するのです! いや,たぶん「偶然の一致」ですよ。これはきっと。 |
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凄いです こんなこと普通きづきませんよ♪
2006/11/20(月) 午前 10:40 [ 雪香 ]
カラスがサクラのアナグラムだと気づくのにも,案外時間がかかりました。ナカタサトルがカラスと鉈だということも,これだけしぶとく『海辺のカフカ』の記事を書きつづけていなければ気づかなかったでしょう。小さい頃から生きるための知恵だったのか,遺伝的な問題だったのかわかりませんが,屁理屈やこじつけの好きな子どもだったことも関係あるんだと思います。bump32yuyaさん,亀レスすまそです。
2008/2/17(日) 午後 10:54
私の読みが浅いせいかまだまだ解らないところがたくさんあります。たとえば少年の姉はどうして大島さんではなくてサクラなんだろう・・とか。昨日はノルウェイの森、ありがとうございました!youtube?まだ私には難しく使いこなせませんので・・・
2008/2/20(水) 午後 10:06 [ - ]
サクラが少年の姉と決めつける必要はないと思います。大島さんだと決めつける必要がないように。答えが一つじゃないって,ダメなことだと思われがちですが,答えがいくつもあるって楽しいじゃないですか。だいたい,人生,答えがいくつもあって困ってしまって,それでもとりあえず一つの答えを出して,やっぱり別の答えにしがみついて…ということのくり返しで,それが楽しいわけですから。浅い深いじゃなくて,そういうことなんだと思います。
2008/2/21(木) 午前 1:03
nyajira666さん,youtubeはパソコンでインターネットを楽しんでいるのなら,そんなに難しいものではないですよ。youtubeと入力して検索し,ユーチューブのトップページに行ったら,気になる画像を検索してクリックするだけ。
記事にするつもりですが,私は最近,ジョジ後藤のキリンレモンのCMを30年ぶりぐらいで見て感激しました。それと,昔のテレビアニメ「侍ジャイアンツ」のオープニングを見て,主題歌を大声で歌っちゃいました。3回も。難しくはないですが,見始めると止まらなくなって,やめるのが難しいです。。。
2008/2/21(木) 午前 1:08
youtube身構えていたのですが(ものすごく難しいものと思っていたんです 爆)楽勝でできました!いつもありがとうございます。NONAJUNさんおすすめ?侍ジャイアンツ、キリンレモン、そしてNONAJUNさんの思い出の「ラチエン通りのシスター」も聴いてきました。簡単に聴けるんですね〜
ラチエン通り(2曲目ですよね)、いいですね。茅ヶ崎でライブがあったんですね。
2008/2/21(木) 午後 10:58 [ - ]
はまっちゃうと,youtubeはいくら時間があっても足りないですから,小学生がゲームをする時間を制限するように,1日30分とかっていう風に,ママと相談してきちんと決めてからアクセスしないとダメですよ(笑)。
2008/2/21(木) 午後 11:04
こんにちは。お邪魔します。
面白いですね、ナカタさんの中にもカラスが隠れてたんだ。。。驚きました、読み返してみようかなぁ。。。繋がりを考えながら読むと違った景色が見えてくるかもしれませんね。
2008/3/12(水) 午後 0:16 [ ekimaejihen ]
すごい発見ですね!驚きました!これは偶然の一致じゃないですよ〜きっと
(><)
それと今ちょっと思ったんですが、わたしがカフカ少年になんとなく違和感を感じるのは、不完全な他の人(人間皆そうですが)は自分の不完全さを認めてなんとか生きているのに、彼はそれを覆い隠そう覆い隠そうと生きているように思えたからです。それが良いか悪いかはわからないですが(成長過程だし)、この物語の中ではある意味とても浮いているように思えました。。これも一つの要因かもしれません
って長々とすみません(><)
2008/3/17(月) 午前 0:31 [ tarocha ]
それとトラバさせていただきました。
返答コメントの補足をしましたので、良かったら読んでやってください(><)
2008/3/17(月) 午前 2:05 [ tarocha ]
カフカ少年が浮いているっていうのは,面白い見方ですね。そう言われてみると,そんな気がしてきます。どう浮いているのかが問題ですけど,あんなにませている14,5歳の男の子なんていないよな〜と感じる点も,何か関係あるような気がします。
2008/3/17(月) 午後 5:37
tarocha127さんとやりとりしていると,なんだかまた読み直してみたくなって来ちゃいます。トラックバック,ありがとうございます。こちらからもしておきました。
ちょっと先のことになると思いますが,いずれ時間が出来たら,「カフカ少年浮いてる問題」を念頭に置きながら,また読み直してみます。
2008/3/17(月) 午後 5:39
始めまして。前から時々来させてもらっています。
そうそうアナグラムと言えば「ダンス・ダンス・ダンス」に出てくる「牧村拓」は「村上春樹」のアナグラムだった、って話は有名ですよね。
村上春樹とアナグラム、これは探せばもっと謎が出てくるかもしれないですね。続報を期待しています!
2008/4/5(土) 午前 10:03 [ monochrome_stoa ]
「ダンス・ダンス・ダンス」は20年近く前に読んだきりでどういう話かも覚えていません。牧村拓の話も知りませんでした。もしもそうだとすれば,「サクラ」と「カラス」がアナグラムであるのは,偶然ではないんでしょうね。
それから,monochrome_stoaさんのコメントで今回判明したのは,村上春樹のアナグラムで「ま!キムタク…ムラ」という文字列も作れるということです(笑)。
2008/4/6(日) 午後 6:18
訪問ありがとうです。
よかったらまたいらしてくださいね〜♪
ってそれより、ちょうど『海辺のカフカ』で卒論書こうと思ってるので影響受けちゃいます。
しょっちゅう覗かせて頂くことになりそうです。
2008/4/23(水) 午前 0:39 [ kimidori ]
『海辺のカフカ』で卒論ですか。村上春樹で卒論が書けるなんて,いい時代ですね。私のころは,絶対に認めてもらえませんでした。「新でないとダメ」という理由で。
良い卒論が書けるよう,お祈りしています。ぜひまた遊びに来て下さい。
2008/4/23(水) 午前 6:24
「海辺のカフカ」は村上春樹さんの作品の中で一番最近よみました。
15歳?でしたっけ・・・読み終えてから設定年齢が低いなぁっと感じました。
NONAJUNさん。かなり深く小説を探っていますね。私は斜め読みなので、とても感心してしまいます!!
2008/12/13(土) 午後 4:45
カフカ少年は,15歳にしては…というところがあるんですよね。ちょっと不自然なぐらいに。でも不自然ということなら,カーネル・サンダーズがしゃべったり,イワシが降ったりすることの方が不自然ですから,カフカ少年が少しぐらいおませでも不問に付すしかないわけです。
深く探っていると言えるかどうかはわかりませんが,下らないことを,下らないからこそあれこれ真剣に考えるのが好きなんです。バカバカしい性分です。
美紗さん,コメントどうもありがとうございます。感謝!です。
2008/12/14(日) 午前 0:38
こんにちは。訪問して頂いたので遊びに来てみました。
「すごい」の一言です。こういう読み方はちょっとできないですね。でも物語の中に散りばめられた情報をこんな風に自分なりに展開するのは面白そう。今はとりあえず、過去に遡って片っぱしから読みたいと思っているのですが、二回目は少し「精読」してみようかな。
また遊びにきます。
2009/7/16(木) 午後 11:56 [ 海 ]
訪問&コメント,ありがとうございます。『海辺のカフカ』は何度も読み直しているうちに,いろんな妄想が頭をもたげてきて,結局こんなにたくさん記事を書いてしまったんです。『1Q84』も2冊で4千円近くになるわけなので,もとを取るためにも読み直して,あれこれ妄想をふくらませてみたいと考えています。
また,ぜひ遊びに来て下さい。
2009/7/17(金) 午前 0:09