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いったいこんな下らない与太話をいつまで続けるのかといぶかしくお思いの方もいらっしゃるかとは存じます。 しかし,もう少し,あとほんの少しだけ続けてみたいと思います<(_ _)>。 とりあえず,青空文庫収蔵作品の中から,「ラーメン」「支那そば」「中華ソバ」などの言葉を含む小説を検索で拾い出した上で選定した“ラーメンの文学”ベスト3の第1位を発表してしまいましょう。 (^-^) (~o~) そして,「輝く!第1回ラーメン文学賞(?)」の第1位は・・・♦*゚¨゚・*:..。♦♫ ・:*:・゚'★.。・:*:・゚'☆♪ (=_=) (^-^) (^_-) (@_@) (^N^)v (^J^)/~~~~~~~~~~~~~~ orz 少なくとも,読みながら私の心の中は,(爆)の連続でした。 坂口安吾はやっぱりスゴイ!です。
「人生案内」というのは,今風に言えば「身の上相談」のことです。 一般読者が新聞や雑誌に投稿して,著名人が回答を寄せるという形式が一般的です。 「人生案内」がなぜラーメン文学であるかと言うと,主人公の投書マニアが支那ソバの製麺をなりわいとしているからです。 投書マニア・・・そうなのです,二等兵になって戦争に行って捕虜にもなったという主人公の山田虎之助(38歳)は,人生もろもろの悩みをでっち上げては投書するといういかがわしい趣味の持ち主です。 山田虎之助は,手打ちの支那ソバを製麺しては売り歩く商売をしていましたが,専門の支那料理屋よりもむしろ食堂とか喫茶店をまわることが多く,そういう得意先でいろいろな新聞を読むうちに熱狂的な「人生案内」の愛読者となりました。 そしてついに「よーし。オレも一つ投書しよう」と決意して,「文章の書き方、手紙の書き方、字引き、性の秘密」などという本を買い込んでは,「九ツのときに従兄にイタズラされた乙女」とか「男子として二十五まで育ちながら身体の変調に気づき同性のたくましい姿を見ると呼吸困難におちいる男」などのさまざまな人物になりすまし,ラブレターを書くような情熱で60通以上の投書を送り続け,3つほど採用されます。 自分の投書が新聞で取りあげられ,大山ハデ子女史や女杉女史からの回答をもらった虎之助は,天にも昇る気持ちです。 そうこうするうちに機械製の支那ソバが大量に出回るようになり,手打ちの支那ソバでは暮らしが立たなくなり始めますが,虎之助は投書をやめようとはしません。虎之助の人生は,すでに投書が中心になってしまっています。 妻から「もう人生案内はやめとくれ。ニコヨン(日雇い)にでもなって、せっせと稼いどくれ」と言われても,「ウーム。ニコヨンか。大繁盛の中華料理店が不景気でつぶれて死ぬかニコヨンになるか。妻子は飢えに泣く。これはいけるな」と投書のネタにしようとするだけで,真剣に聞き入れようとはしません。 その後,山田虎之助とその妻にどのような運命が待っているのかについては,読んでのお楽しみということにしておきます。 ただ,2人が何度も夫婦げんかを繰り返していて,そのときのセリフのやり取りが「人生案内」の大きな魅力になっているということだけは言っておきたいです。 たとえば,こんなやりとりがあります。 「ヤイ、間男しやがったな。亭主の顔に泥をぬるとは何事だ」 「泥がぬれたらぬたくッてやりたいよ。どれぐらい人助けになるか分りゃしない。お前の顔を見ると胸騒ぎがしたり虫がおきるという人がたくさんいるんだよ。私はね、広い世間へ出てみて、お前のようなバカな男がこの世に二人といないことが分かったんだよ。私は今までだまされていたんだ。畜生め! 人間のフリをしやがって。お前なんか人間じゃアねえや。雑種の犬か青大将とつきあって義理立てしてもらえやいいんだ。出来そこないのズクニューめ。他のオタマジャクシだって岡へあがってジャンパーを着るとお前より立派に見えらア。間男なんて聞いた風なことを言うない。人間のフリをするない。さっさと正体あらわしてドブの中へもぐってしまえ」 「キサマ、オレをミミズとまちがえてやがるな。ミミズが兵隊になって支那へ戦争にでかけられると思うか。ミミズに支那ソバが造れるはずはねえや。こうしてくれる」 「ぶったな。もうお前なんかの顔を二度と見るものか」虎之助の妻の悪態は,見事というしかありません。 そして,1954(昭和29)年9月1日発行の『キング』に掲載された「人生案内」に描かれている,手打ちの支那ソバ作りをなりわいとする復員兵の悲喜劇には,敗戦後の日本の姿が見事に刻印されています。 未読の方は,ぜひ一度読んでみて下さい。《青空文庫の「人生案内」へ》 それではいよいよ,シリーズの締めくくりとして,「支那ソバ」という食べ物の歴史をめぐる興味深い事実について,少しマジメに考えてみることにします。 (たぶんあと1回,つづく…)
○「支那ソバ」は差別語か?―ラーメンと近代文学(その1) ○「探偵小説十戒」の“怪しげな中国人”―ラーメンと近代文学(その2) ○そば屋の二階という空間―ラーメンと近代文学(その3) ○ラーメンを二杯食う物語―ラーメンと近代文学(その4) Photograph by NJ 写真は,福島県喜多方市のあべ食堂です。 昔なつかしい店がまえと,おばちゃんのあたたかさ,素朴で飽きのこない醤油味の中華ソバがうれしいです。 ちなみに,この向かいにある製麺所直営のめん匠やまぐちもなかなかいけてるラーメン屋です。
最近は「毒りんごサブレー」というヤバイお菓子でも有名です。 |
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一位は、坂口安吾ですか、今度図書館で探して見ます。 60通も、投書するなんてすごいですね。 あべ食堂いきたいなあ。
2007/8/30(木) 午前 2:23
「人生案内」、青空文庫で読みました。面白かったです。
2007/8/30(木) 午前 4:26 [ - ]
すごいですね。罵倒もここまでいくと、気持ちよさと感服すら湧いてきますね^^
2007/8/30(木) 午前 7:02
青空文庫収蔵作品という限定がありますけど,著作権が切れていない作家の作品まで視野に入れるとどうなるかはわかりません。でも,モコモコさんのおかげで,こういう与太話が書けたわけで,感謝!です。
あべ食堂に限らず,喜多方の街を歩きまわってラーメンを食べるのは面白いですよ。>モコモコさん
2007/8/30(木) 午後 10:26
「人生案内」を読んで下さり,ありがとうございます。ベスト3を全部読んでいて,しかも話を覚えている方って少ないと思うので,この記事を読んで青空文庫にアクセスして下さる方がいるというのは,うれしい限りです。>difnoeさん
2007/8/30(木) 午後 10:28
リリカさんのコメントを読んで,「ちょっと長すぎるかなぁ〜」と思って省略していたところを,あらためて加筆しました。ここ以外にも,2人のセリフで「ぷっ」となってしまうところ,たくさんあるんですよねぇ。
2007/8/30(木) 午後 10:31
ありがとうございます♪
2007/8/30(木) 午後 10:36
坂口安吾が引用されたことがうれしかったです。
私も製麺工場で麺を作っていたことがあります。
投書はしていなくていまは投稿でございます。
2007/8/30(木) 午後 11:11 [ eetso ]
いえいえ,こちらこそ(^^;) >リリカさん
2007/8/31(金) 午前 0:08
山田虎之助を廃業に追い込んだ機械式の製麺工場ですね(笑)。
いや,それにしても,偶然って,おもしろいですね。
2007/8/31(金) 午前 0:09
なんと,「手紙の書き方」でトラックバックをして頂きました!
山田虎之助さんがトラックバックをたどって読んでくれるといいんですけど…(^_^;)。。。
2007/8/31(金) 午前 0:11
「ラーメン文学No1」とは、また面白い企画ですね!!「人生案内」…呆れながら読破してしまいました^^ラーメンといえば、熱海の糸川沿いに「幸華」という安吾が通った中華料理屋があります。行かれる機会があったらぜひ…^^
2007/8/31(金) 午前 1:34
ラーメン怪獣NO.1はブースカですし,最強のラーメンキャラクターと言えばコイケさんがいます。それに比べると「ラーメン文学No1」はまだまだ甘いです。ラーメンが果たす役割が小さいですから。今後もこれをきっかけにラーメン文学を究めるべく,精進を続けたいと存じます(笑)。
幸華の情報,ありがとうございます!チャンスはあると思うので,チェックしときます。
2007/8/31(金) 午前 7:47