BUNGAKU@モダン日本

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橋下徹の暴挙

 幼い頃に恋い焦がれた20世紀少年の聖地・万博記念公園に私が行ったのは,そもそも大阪国際児童文学館を訪れるためでした。

 今年3月に「大阪府立国際児童文学館の廃止条例案」が府議会で可決成立し,私が訪れた大阪府立国際児童文学館は,2010年3月末日をもって廃館となり,所蔵資料は府立中央図書館に移転します。

 大阪府の橋下徹知事のしわざです。

 箱物行政が批判される中で,2億円の赤字を出している施設が無駄だという議論は,税金の使い道にシビアになっている多くの国民にとって,「仕方がないよな」と思わせる話です。

 ところが,この文学館のことをよく知っている一部の人にとっては,暴挙以外の何ものでもありませんでした。

 実際に大阪国際児童文学館を訪れた私も,職員の説明を聞いてみて初めて,大阪府の条例がどれほど野蛮な文化破壊であるかを理解することができました。

 トラックバック先などを読んで頂ければ,どれほどデタラメなプロセスで廃館が決まっていったかがおわかり頂けると思います。

 他にも多くの人が廃館反対の声をあげましたが,野蛮な文化破壊を阻止することはできませんでした。

 署名活動をはじめとした心ある人びとの反対運動も空しく,今年の3月に廃止条例案は成立してしまいました。

 来月27日には,一般の利用者が入館することはできなくなり,職員の皆さんは,廃館後の再就職先のあてもないまま,移転のための煩雑な業務に追われることになります。

 移転後,建物は取り壊されると聞きました。

大阪国際児童文学館で見たこと・聞いたこと

 「文化破壊」実態を知っていただくために,断片的なものになってしまいますが,私が館内で見たことや聞いたことを,思い出すままに記してみます。

▼大阪国際児童文学館は“赤字”だという真っ赤なウソ!▼

 箱物を作って,年間の2億円の赤字と聞くとビックリするわけですが,文学館の職員の方はこう言っていました。

 「図書館の経費が年間2億円かかったからと言って,それを赤字だと考える人がいますか?」

 たしかにそうです。

 大阪府が出している経費の2億円が赤字であるとするなら,利用料を徴収していない全国の公立図書館は,すべて赤字であるということになってしまいます。

 そういう論理を適用したら,巨大な箱物である大阪府庁舎だって“赤字”です。

 住民票の発行などで得た収入から人件費や光熱費などの必要経費を引いたら,毎年毎年“大赤字”になるはずです!

 ちょうど行政刷新会議による「事業仕分け」の場で,日本科学未来館について館長を務める宇宙飛行士の毛利衛さんが赤字であると主張する財務省に食ってかかり,「高校,大学の経営で国がお金を出しているからって,赤字と言いますか?」と激しく論駁していました。

 まったく同じレトリックで「大阪国際児童文学館→赤字施設→ムダ」というイメージがふりまかれていたわけです。

▼箱物ではなく,ソフトで勝負している!▼

 大阪国際児童文学館には,早稲田大学教授だった鳥越信さんが所蔵していた12万点に及ぶ児童文学関係の資料をはじめ,三邑会が所蔵していた手書きの紙芝居約3,500巻,各種マンガ雑誌のバックナンバー,海外の児童文学書など,貴重資料が大量に収蔵されています。

 しかも収蔵方法が図書館とは根本的に異なっていて,「可能な限り刊行時の状態のまま保管する」ことを最優先とし,箱やカバー,帯やしおり,別冊や付録を含め,発行された時の形態のまま保管しています。

 一般の図書館のようにラミネート加工をしたり,バーコードを貼り付けたりといった書物本体を損なうような加工を行わず,紫外線を99%遮断し,簡単に取り外しができる透明なシートで保護していました。

 収蔵する上で必要になってくる分類用のシールなどは,すべてシートの上から貼られていました。

 
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 職員の方の許可を得て,書庫内の様子を撮影しましたが,こんな風に透明なシートで1冊ずつ丁寧にカバーされ,秩序立てて配列・保管されていました。(写っているのは,『りぼん』のバックナンバーです。)

 将来に向けて児童文学関係の資料を残していくことに心血をそそいでいて,中学生以上でないと閲覧できないという貴重書だらけの書庫を見る限り,一般の利用者が読むための消耗品として本を扱う図書館とは,根本的に異なる論理で運営が行われていることがよくわかりました。

 紙芝居の紹介スペースには,書庫に入って収蔵資料を説明するときのために『少年サンデー』『少年マガジン』『少年ジャンプ』『なかよし』の創刊号が並べられていました。

 
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 これだけでも相当に貴重な資料ですが,こうやって来館者に見せている資料はまだまだ序の口で,世界中探してもここにしかないような貴重資料がごっそり並んでいる書架もありました。

 最近たくさん出版されているライトノベルも,研究目的で収集するところがほとんどないだろうという危惧から,刊行されたものすべてを収蔵していくべく献本を募り,書庫に収めていました。

 
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 一般的な図書館とはまったく違う発想で分類・整理,収蔵が行われていますから,条例にしたがって収蔵資料を大阪府立中央図書館に移転するとなると,東京三菱銀行とUFJ銀行の合併にともなうATMシステム統合で膨大な経費をかけながら大混乱したのと同じような事態が起こる可能性があります。

 最後は,箱や帯を廃棄して,多くの貴重書にベタベタとバーコードを貼ってラミネート加工をするというようなことにならないとも限りません。

 しかも,廃館と統合によって,むしろ経費が増えるという試算すら出ているのです。

▼研究施設としての社会貢献▼

 大阪国際児童文学館は図書館ではないので,資料を収集して研究者の利用に供しつつ,適正に管理・保存して後世に引き渡していくことに力を注いでいます。

 ですから,開館当初は,児童が閲覧するスペースはなかったそうです。

 でも,児童文学館に子どもがいないというのはいかがなものかという議論があり,親子で児童書を楽しめる閲覧スペースが作られました。

 ただし,この閲覧スペースも,あくまでも研究用です。

 閲覧室の様子はビデオで撮影され,子どもたちが,どの場所にあるどんな本を手にするか,手にした本をどんな風に読んでいるかを分析し,本棚の配列やテーブルの配置などをさまざまに変えながら実験し,よりよい児童図書館を作るためにはどういうことに配慮すればよいか,研究を続けてきたそうです。

 この閲覧室の一角には,今年度に出版されたすべての(文字通り“すべての”)児童書が並べられていました。

 しかも並べているというだけではなく,それらの児童書を職員が手分けをしてすべて読み,内容を分析・分類して,出版の傾向や良書の推薦などを行ってきたそうです。

 こんなことをしている施設は,他にはありません。

 ほんナビきっずのような子どものための優れたソフトが作られたのも,こうした研究成果のたまものです。

奇跡を願うしかないという現実の哀しさ

 今回の条例制定がどれほど愚かな政策であるのかについては,もちろんYahoo!ブログだけではなく「大阪府の国際児童文学館を応援します!」のように,多くのホームページやブログに明確に指摘されています。

 でも・・・廃館はすでに決まってしまったのです。

 そして,廃館が決まったにも関わらず,国際グリム賞授賞式の準備に奔走し,あわただしい仕事の合間をぬって来館者の私たちに大阪国際児童文学館の魅力を一生懸命に伝えようとして下さった職員の方の姿には涙が出る思いでした。

 橋下府知事がスキャンダルで辞任に追い込まれ,大阪国際児童文学館の廃館を撤回すると公約した新知事が年度内に誕生するというような奇跡は起こらないものでしょうか。

 もう遅いのでしょうけれど,ハチドリのひとしずく…転載・トラックバック,大歓迎です!

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なるほど、です。
NONAJUNさんのおっしゃること、良く伝わります。
何でも「無駄、無駄」と削っていった末、大阪はどうなってしまうのでしょうかね。ゴリゴリ削られ、「禿山」のようになってからでは遅いのでしょうね。

2009/11/19(木) 午後 9:23 [ グーピタ ]

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するめさん,鷹揚な精神,大事ですよね。文化というのは基本的に無駄なもので,でもそういう“遊び”の部分がなくなったら,世の中これほど生きづらいことはありません。昨今は恋愛のことまで「コスト」という言葉で語る若者がいるみたいですけど,ぜんぶつながっている気がします。

2009/11/20(金) 午前 5:41 NONAJUN

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さざえさん,同感です。天下り法人なんかを報道で見ていると,たしかに無駄なものってたくさんあるんでしょうけど,同じ無駄でもただの無駄と世の中を豊かにする無駄があって,大阪府立国際児童文学館は明らかに後者の施設として頑張ってきました。そして今現在も力を抜かずに頑張り続けています。

2009/11/20(金) 午前 5:43 NONAJUN

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サスケとサイゾーの父さん,そうですね。私は橋下知事のすべてを否定するつもりはないんですが,新しいことをバリバリやろうとすると,とんでもない間違いを犯すことがあるわけで,そういうことを敏感に察知して,君子豹変…ということができなければ,立派な指導者にはなり得ないのだろうという気がします。

2009/11/20(金) 午前 5:45 NONAJUN

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グーピタさん,ただでさえ,大阪の地盤沈下が言われている昨今,禿げ山というところまで行ってしまってはまずいですよね。共感して頂けて,うれしいです^^

2009/11/20(金) 午前 5:47 NONAJUN

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内緒さん,だから…ダメだって言ったじゃないですか。無理しちゃいけません。お気遣い,恐縮です。

2009/11/20(金) 午前 5:48 NONAJUN

うわあ、行きたいけどなあ。もったいない…すごくちゃんとした施設に見えるのに。
児童文学、大事だと思うけどなあ…夏目漱石に負けないくらい。夢いっぱいで。存続しないかしら。なんか、奇跡が起こって。ねえ。

2009/11/20(金) 午後 9:47 [ おんくん ]

よっしゃ、納得!転載させていただきます!

2009/11/20(金) 午後 11:29 にこにこくん

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おんくんさん,2億円あったら何人の飢えた子どもが…と考えると微妙な気分になるわけですが,たぶんそういう問題じゃなあいんでしょうね。だいいち廃館が必ずしも経費削減に繋がらないという可能性もあるようですし。

2009/11/21(土) 午前 7:21 NONAJUN

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はちどりのひとしずく,ありがとうございます!

2009/11/21(土) 午前 7:25 NONAJUN

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無駄だけの話ではなく、

裏で利権が絡んだり、組織的な不正で横領のこともしっかり監視してほしいですね。

国からもらったお金を正しく使って、一所懸命働いたら、
違う結果になったかも知れませんが。

2009/11/22(日) 午前 11:04 [ ansund59 ]

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大阪府はたいへんな財政赤字を抱えているみたいですから,ムダをなくすことは必要なんでしょうけど,メリハリというかヴィジョンが欠けているのではないかと危惧します。既存の施設で経費削減をはかる方が,統合するよりもずっと赤字削減に貢献できそうであるという試算結果があるという話などを聞くとなおのこと,拙速だったのではないかという疑念がぬぐえません。

2009/11/22(日) 午後 9:04 NONAJUN

橋本知事のやり方は少し乱暴だな、と私も感じていました。
特にこのような文化的に価値のあるものを廃館にするなんてすごく寂しい。。
もっと他に無駄なものは沢山ある気がします。
こういう文学館や図書館って日本の誇りだと思うんですよね。。
そういうのは大切にしてほしいです。

2009/11/22(日) 午後 10:24 HARUkA

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関西を離れるとどうしても大阪の情報は耳に入りづらくなってしまいましたが、そんな大変なことになっていたんですね。カリスマ首長のトップダウン型改革というのも良し悪しで、しがらみで止められなかった事業を廃止できることもあるでしょうし、この件のような理不尽な結果を生むこともあるのでしょう。
結局、府民の世論をケースバイケースで府知事にアピールしていくしかないんでしょうね。

2009/11/22(日) 午後 10:47 大三元

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HARUKAさん,ありがとうございます。こういうものは,当事者の側に寄り添ってしまうと,どうしても感情に流されたり,バイアスがかかってしまったりして,切りすてにくくなってしまうわけで,もしかすると私もそういう陥穽にはまっていないとも限らない気もしますが,どう考えても,来館者がほとんどいなくて,なんのために作ったのか,誰にも分からないような不思議な箱物と大阪国際児童文学館を一緒くたにはできないと思うわけです。こういうものを「無駄」とか「企業努力が足りない」などと行ってしまうのは,HARUKAさんの言う通りで,あまりにも「乱暴」です。

2009/11/23(月) 午前 0:42 NONAJUN

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テレビを見ていたら,反対があっても英断しなくてはならないのが政治家だと橋下府知事は言っていました。たしかにそれはそうなんですが,まさに大三元さんのおっしゃる通り,ケースバイケースなんですよね。

2009/11/23(月) 午前 0:43 NONAJUN

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私のように施設の存在や蔵書内容を知らない人も多いんでしょうね。児童文学館というと絵本や童話が多いのかと思いましたが、ジャンプやりぼんなんて幅広い世代の少年少女が夢見た世界がですし(もちろん現在も)廃館は仕方ないとしても、施設のことをもっと広く知ってもらいたいですよね。

2009/11/24(火) 午後 1:01 かえで

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確かに入場料を取らない図書館が「赤字」とは筋が通らない話ですよね。
今後図書館が有料化にでもなったらえらいことです。
日本は人口当たりの図書館の数が欧米に比べて非常に少ないことでも有名です。
財政危機でコスト削減は仕方がないことですが、どんな財政状況でも守られるべき「聖域」は存在すると思います。
図書館の存在はその聖域の一つであって欲しいものです。

2009/12/3(木) 午前 11:33 マクラーレン

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かえでさん,亀レスになってしまいました。すいません。

大阪府の財政再建を考えると,大なたをふるうしかない部分はあるんでしょうけど,本当に合併するとコストダウンにつながるのかというあたりに疑問があるみたいなので,廃館でいいのか…とどうしても思ってしまいます。実際にあそこに行かなければ,私もここまでムキになって記事を書かなかったはずなので,なかなか多くの人の共感を得ることはできないんでしょうけど…。

2009/12/5(土) 午前 0:12 NONAJUN

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マクラーレンさん,訪問&コメント,ありがとうございます!

自分は甘い汁を吸いながら,無益な大型事業にじゃぶじゃぶ税金をつぎこんで,こんな財政状況にしてしまったのは,いったい誰なのか…というようなことをどうしても考えてしまいます。

2009/12/5(土) 午前 0:17 NONAJUN

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