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正しい意見が消滅する授業

 この夏,札幌を2度訪れたのですが,1度目に行ったのは札幌聖心女子学院の夏のセミナーに招かれて,高校生の女の子たちに授業をするためでした。

 女子高生を相手にするのは初めての経験でしたし,初対面の4つのクラスの生徒たちを相手に45分間の授業を1回ずつやるというのは,なかなか難しい条件でした。

 でも,札幌聖心女子学院の生徒たちは,明るく素直で礼儀正しい女の子たちばかりで,何とか無事に役目を終えて帰ってくることができました。

 当日はクラスに応じて2種類の授業をしたみたのですが,そのうちの1つについて概要を紹介してみます。

 教材は,井上靖の「姨捨」という小説で,大学入試センター試験に出題されたものです。

 授業を進める手順は,おおよそ以下の通り…。

 1)本文を省いた問題部分(選択肢問題)のプリントを配布する。

 2)設問をざっと読みながら,小説の基本的な設定を説明する。

 3)本文を朗読する。

 4)解答用紙に自分の解答をマークさせる。

 5)朗読した小説の本文を配布する。

 6)4〜5人のグループに分ける。

 7)新たな解答用紙を配布し,グループで話し合ってグループの解答をマークさせる。

 8)答え合わせをする。
 1998年度のセンター試験の過去問ですが,経験的に正答率の低い問題がいくつか含まれていることがわかっています。

 そのために,上記のような演習をすると,興味深い現象が起こります。

 朗読を聞いただけで解答するというのはかなり難しそうに思えますが,小説世界を想像して聞くことができれば,それほど難しいことではありません。

 ですから,最初に個人で解答をしたときには,だいたい1割ぐらいの生徒が満点を取れます。

 ところが,話し合いをしてグループとしての解答をマークさせると,満点だった生徒の意見が通らずに,ほとんどのグループが満点を取ることができません。

 「三人寄れば文殊の知恵」と言いますが,グループで話し合うと,ことわざとは逆に正しい意見が消滅してしまうのです。

 なぜそういう現象が起こるかと言うと,グループの話し合いが話し合いとして機能せず,空気を読んで多数決で決めるという方向に流されがちだからです。

 話し合いをする前に個人で解答をしていますから,話し合いの最初に高校生がやることと言えば,「何番にした?」と尋ね合って互いの解答を確認することです。

 「3番にしたけど…」「私も3番」「わたしも!」となると,自分の解答の如何にかかわらず他の2人も3番という解答に引きずられがちです。

 「2番だと思ったんだけどな…」と言う生徒がいたとしても,もう1人が「3番か5番で迷って5番にしちゃった…」などと発言すれば,解答の良し悪しを論理的に検討する前にグループとしての解答を3番にしてしまうという方向に流されてしまうのです。

 しかし上記の問題が正答率の低い問題であったとすると,じつは3番ではなく2番が正答である可能性が高いはずです。

 そういう正答率の低い難しい問題を多数決で決めてしまえば,グループとしては確実に不正解の方向に流されて行くわけです。

 結果的に,個人としては満点を取れている生徒がいたとしても,グループの話し合いを経て解答をまとめると,すべてのグループが満点を取れなくなってしまうのです。

伝えたかったこと

 45分1本勝負の授業でしたから,上記の授業のダイジェストをやった形で,問題演習としては中途半端なものになってしまったのですが,伝えたかったメッセージは単純です。

 「難しい課題に直面した時に,周囲の空気を読むことばかりを考え,単純な多数決で事を進めると,間違った道に進んでしまうリスクが増える」ということです。

 私たちは,空気を読み,多数派の意見に従えばだいたいうまく行くいうことを経験的に知ってしまうと,そういう行動原理と異なる選択をすることがだんだんできなくなっていきます。

 やがて,理屈で考えることをやめて,空気を読み,多数派の意見が何であるかを見極めることが,正しい意見にたどり着く方法であるという間違った認識を刷り込まれていきます。

 もちろん多数決で決めてしまっても正解にたどり着ける問題もあるのでしょうけれど,いつもうまく行くとは限りません。

 社会や組織が危機的な状況に陥るような,今まで経験したことがないような困難に直面したときには,正しい道をつかみ取っている人は少数派であることの方が多いはずです。

 その少数の正しい意見に耳を傾け,数の論理で圧殺することなく,集団としてのよりよい合意を得るためにはどうすればよいのでしょうか。

 札幌聖心女子学院の高校生たちに問いかけた問題は,年齢的には“立派なオトナ”である私自身の課題でもあります。



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 紹介したのはあくまでも“概要”です。実際に授業を進めていくためには,朗読時の配慮や解答用紙の作り方,グループワークの進め方などに関してこまごまとしたノウハウがあります。業界関係者の方で興味を持って下さった方は,内緒カキコやメッセージなどでお知らせ下さい。ブログでは書き切れなかった部分も喜んでお伝え申し上げます。

転載元転載元: BUNGAKU@モダン日本

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傑作ボタンがなくなってしまったので,「ケッサク(?)の殿堂」という書庫を続けることができなくなってしまったのですが,記憶ではこの記事の元記事,傑作ポチをたくさんもらっていました。そこで,最後の殿堂入り記事ということにします。

札幌聖心女子の夏のセミナーは今年で3年目。今年は8/26〜27に開催されます。私も出張授業をする予定です。

今年はどういう授業をするか,これから考えます。

2012/8/7(火) 午後 10:39 NONAJUN


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