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サイズなき人生
この小説はフィクションです。
実在とは何ら関係ありません。
著書 坂井 希衣
母ちゃん、靴、靴、靴がない!
次郎から電話がかかってきた
仕事で次郎は洪水の地域を視察し、現場の復興設計を依頼されたと言って、あわてたように電話をしてきた。青年次郎22才だった。
身体は健康、体力もあった、しかし、なぜか、足だけは小さかった
靴を探すのに苦労するサイズだった、本人自ら、足だけはサイズ無き人生と思っていたやさき、思い出したのだ。靴・・、現場出動に不服はないが、どんな靴でいくか、大変だ、すぐにあるサイズではない、24㎝の現場靴がいるのが、すぐ見つからない、簡単には揃えられないだろう。
俺だけ、長靴履いて行くのを許可してもらうか、仕事場の上司に話すべきか、そんなことを思い悩み、次郎は母ちゃんに電話したのだった。
勘違いして、最初は、母ちゃんは「被災現場にいこごつなかてや!」と、次郎が、被災現場に行きたくないと思いこみ怒鳴っていたが、真実を知ると、血相をかえた、靴、靴、靴、と口走り、ありとあらゆる行動をし、靴を扱っているところへ電話をしまくったりした。
母ちゃんは、半泣きで、次郎の足が小さいのは、自分のDNAが原因だと責任を感じていたらしい。母ちゃんは靴屋を何軒も電話をかけまくった。
今はインターネットの時代だと言って、パソコンにもしがみついた、さすがネットだけあって全国どこでもさがすことができる、あれこれ探し、やっと1件みつかった、現場靴24㎝取り扱いの店だった。それは四国にあることがわかった。さっそく連絡すると、到着まで1週間かかると言われた。
「しょうがねーな!」と母ちゃんは紛糾した。
そんな時、母ちゃんは、昔から隣りにある下駄屋さんも聞くことにした。
当然無理だと思った。昔から、何もおいていない寂れた下駄屋さんだったから。ダメなら、次郎には長靴で現場に行けと母ちゃんは話すことにした。
被災は予期せぬことだから、無理もなかった。母ちゃんは無理を承知で、隣りを訪ねることにしたと、靴が手に入らないことを次郎に電話で説明すると、次郎は「やりぱりね」と穏やかな声が聞こえ「長靴でいいよ、お隣で長靴を買っておいくれない、お世話になってきた下駄屋さんだしね、僕には似合うよ」と優しい声で言ってくれた。そんな訳で、母ちゃんは隣の下駄屋さんへ行ってみた。店にはゲンさんとういお爺さんが店番をしていて、母ちゃんは悩みながら「たぶんないと思うけど」と言って、現場靴の24㎝が次郎にいるけど、ないなら長靴でもいいからあるかしらと聞いた。ところが、ゲンさんはニッコリとして相づちをうつと、そこへ黒色の靴を手に持って見せた。「これかな」そう言うゲンさんが持っていたのは24㎝の現場の安全靴だった。母ちゃんはびっくりした、あったのだ。母ちゃんは大喜びで「いくら?」と財布を出すと言った。ゲンさんは横に手を振ると「これ履きなよ」と母ちゃんの手に渡したのだ。ゲンさんは「次郎に気持ちだよ。」と笑顔を浮かべた。
ゲンさんは「次郎の足は、本当に特別サイズだった、子どものときからだ。次郎は、そうだった。次郎のことは何でもかんでも知っているさ、隣りに住んでいれば何でもわかる。この町の子どもで育ったんだからな」と、又笑った。
ゲンさんは、次郎の就職先が決まったことを聞いたときから、これはきっと、いつか使うだろうと思って、特別に取り寄せていたんだと、母ちゃんに話すと今度は大声で笑った。
「お金なんていらんよ」ゲンさんはそう言うと、また笑顔で
「次郎には、この靴を履いて、被災地の多くの人が助かる良い仕事してくれと」話し、母ちゃんに24㎝の安全靴を渡した。母ちゃんは涙をうかべた。
翌日すぐ、その靴は次郎に届けられ、ゲンさんの言葉が母ちゃんから伝えられた。次郎は、嬉しそうに涙を浮かべ「はい。」と、すがすがしい返事かえしてくれて、安全靴のひもを強く締め、被災地へ出かけた。
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