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拝啓 おばちゃんです 夢よ明日へ 最終回になりました。 次回作品も宜しくお願い申し上げます。 さて・・おばちゃんの夢・・100歳までには「作家」と言っていただけるように 頑張ります!!(こりゃ〜長生きするばいた〜〜)お世話になります。 (4)最終回 305室は正美と裕太の二人だけになり、正美は素直に亜希の話を聞くようになった。 クラッカーも我慢して食べるようになり自習時間も学校の教科書を開くようになった。 夕方になると、主治医の回診始まる。 裕太と正美はベッドの上で、じゃれあっていた。回診にやって来た牧田先生は、「ようーし、二人一度に、もしもし致しましょうかね。」と笑った。 聴診器を持った牧田先生に、1歳の裕太は寝巻きをあげて「ぽんぽん」と幼児語の言葉を出し、自分からお腹を見せる行動をした。すると牧田先生は優しい目になり、「子どもはね、先生の顔を見て泣くときは病院にいなきゃならない、こんなふうに仲良くなれたときに、いよいよお別れだな。」と苦笑いで「さあ、裕太君は明日退院。もう来るなよ。病院と警察はあまり縁がないほうがいいところだよ。」と病気が完治したことを告げられた。 正美は目を潤ませ、裕太を何回も弟のように抱きしめた。そして小さい声で「ここではさようなら。」と言った。 翌朝、亜希は、裕太を抱き上げると公立病院の小児病棟305室を後にした。 季節は11月、落ち葉が見られるころだった。 それから しばらくして裕太の退院後の診察で再び病院へ訪れた日のこと、混雑している病院の受付で薬局の支払いをしていると、「おばちゃん!!」と声がした。それは正美だった。亜希には正美がなんとなく健康そうな顔に映った。正美は、自分が病院を退院できる事を知らせに来たのだ。亜希は正美の手を取って喜んだ。 正美は屈託のない笑顔で「学校へ行けるからね。ご飯も食べられるよ。」と言い、亜希と裕太に手を振ると、後ろ姿は人混みの中で見えなくなってしまった。 小児病棟の子ども達は、どの子も『友達と同じように学校へ行きたい』と話していた。ユキ子は、生きて『夢を、明日につなぎたい』と言っていた。 普通の生活ができることが一番幸せなことだと、亜希は実感した。 年が明けて1月 成人の日 振袖すがたの娘さんに町で沢山すれ違った。 晴れ着に袖も通すことなく、若干二十歳で短い一生を終えたユキ子ことを思い出した。 夢は叶えられることなく、明日へつなぐことはできなかったユキ子。 成人を迎えられた皆さんへ その健康、その命、生きていることの尊さ 価値ある人生でありますように 終わり |
読売・夢よ明日へ
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拝啓 おばちゃんです 夢よ明日へ いよいよ来月最終回になります。 原作はもっと長い文章でしたが4回にまとめて連載と致しました ご支援、有り難うございました 2月から新作品 第3作品となります ひきつづきお世話になります 【夢よ明日へ】その(3) 再び、小児病棟は夜をむかえた。子どもの泣く声が時々聞こえ、看護師から優しい言葉がかけられていた。急患が度々あって、看護師や先生が廊下を急ぐようなスリッパの音が響き、それが日常のように感じた。 そんな真夜中のこと、亜希の耳に暗闇の中でウーッとうめき声が聞こえた。 亜希は、暗い病室を見回した。それはユキ子のベッドだった。 半分身体を起こすようにベッドの上で、ユキ子は苦しんでいた。 亜希はユキ子の背中をさすって「先生を呼びましょうか」と、問いかけ、慌てた。 ユキ子は胸を両手で押さえ息苦しそうに、助けを求める仕草をした。 急いで枕もとのブザーを鳴らし、亜希はナースセンターへ走った。 廊下でスリッパの音が大きく響いた。 「ユキ子ちゃん!大丈夫かい!」と、駆けつけた医師や看護師が呼びかけ、意識を失ったユキ子はICU室へ移された。和歌子も正美も目を覚まし、驚きを隠せず、その様子を座って見ていた。ユキ子が305号室からベッドごと連れ出されると、305号室は、不安な雰囲気になり静まっていた。 その、不安な感情もいつの間にか眠り込んで、現実とも夢とも境がないような気分で、喜代子の声に起こされた。「ユキ子ちゃん亡くなったわよ。」と、最悪の事態を知らされた。 亜希は一瞬時間が止まった。 亜希はICU室の廊下へ駆けた。部屋の前にユキ子の家族が呆然と立っている姿を残念な気持ちで見ていると、「夕べはお宅にお世話になり」と、ユキ子の母は声を詰まらせるように挨拶をし、ハンカチをギューッと握りしめると娘への思いを語った。 「ユキ子は二十歳でした。元気なら成人式に晴れ着で出席するように思っていましたが、とうとう袖をとおさずじまいになりました。小さいときから入院退院を繰り返して、ほとんど学校へも行けませんでした。これでやっと自分の家に帰ることができます。」 その話を聞いた亜希は、ただ深く頭を下げ、言葉が見つからなかった。 それから、数日して、和歌子も待望の退院を迎えた。またベッドが一つ空いた。 305号室は、その日から正美と裕太の二人だけの病室になった。 |
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今日の読売新聞 地域情報紙 れいんぼう 11月1日発行 ・・熊本・・
小児病棟の子ども達のメッセージ 是非ご覧ください よろしくお願い致します。 【読売新聞 れいんぼう 連載 夢よ明日へ 坂井希衣 】 (2) 305号室に電灯がつき、また夜がくると、小学3年生の研一には退院の許可が出され、家族と帰って行った。ベッドが一つ空いた。嬉しいような、寂しいような、それが残された者の気持ちだった。亜希は、ここへ来て小児病棟の子ども達が抱える辛さを見たような気がした。 ふと、気がつくと廊下で主治医の牧田先生が叱りつけている声がしていた。 牧田先生は血相を変え「おかあさん、治療中にこんなことをどうしてするんですか!」と言っていた。食事制限のユキ子に母親が差し入れをしたのが分かったらしい。 そう言えば、数日前に家族に囲まれて嬉しそうなユキ子の様子があった。 母親が置いて帰った重箱をユキ子は嬉しげに抱いていた。 「かあさんの味がする。かあさんの心が入っている」と独り言のように言っていた。 主治医の牧田先生はカンカンの表情で「命がかかっていますよ。」と激怒し、ユキ子の母は手で顔を覆っていた。それは切実な声で「本人の願いです。」と聞こえ、しばらく沈黙のあと「あと、どれくらいしょうか。」とおそるおそる尋ねるユキ子の母の声が、静かすぎる廊下で漏れるように伝わってきて、亜希は胸がキューンとして身体が震えた。 ユキ子の母親は、自分がしたことを主治医に謝りながら、もう助からないのなら本人の願いを叶えてやりたかったと訴えた。主治医の牧田先生は無言になり目に光る物が見えた。 廊下の声は聞こえなくなり一夜が開けた。 裕太も入院生活に慣れ可愛いしぐさを見せるようになり和歌子や正美に可愛がられた。ユキ子も裕太に優しい言葉をかけ、絵本を読んでくれた。 ユキ子は、裕太の小さな手をとり「ゆうちゃん、可愛いね。」と言って笑顔を浮かべた。そして「私も早く病気を治したい。可愛い子どものお母さんになるのは夢です。」と話し、窓のカーテンを少し開けて、窓から差す光をまぶしそうに見上げた。 「明日があるなら沢山やりたいことがあります。」と、ユキ子は、自分の将来の夢を話した。(もし、私に明日があるなら・・)旅行をしたい、町を歩きたい、家族のいる家で暮らしたいと、時を忘れて語った。 普通の人が普通にやっていることが、ユキ子の夢だった。 夢を明日へつないでいきたいと、ユキ子は熱く語った。 そのあとユキ子は、食事をとる時間になっても起きず、長く眠り続けた。次号へつづく |
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拝啓 おばちゃんです 今日から新作品です お世話になります。 子育てシリーズ・・小児病棟の子ども達・・ 坂井希衣 【読売新聞・・夢よ明日へ・・れいんぼう連載小説・・(1)】 亜希がこの病室へ来たのは3日前のこと。 1歳になる息子の裕太がひどい発熱で入院し、いつまでかかるかわからない病状だと言われた。病棟の夜は子どもの泣き声が聞こえる。泣いているのは小学校5年生の和歌子。入院と退院を繰り返していた。305号室には長く入院している子ども達がいる。なかでも一番長く入院生活をしているのはユキ子、年は今年二十歳。彼女は子どもの時から長い治療を余儀なくされ、小児病棟では一番の年長者になってしまった。この病室の入院は、ユキ子と和歌子の他に、小学4年の正美。小学3年生の研一がいた。 点滴が落ちる雫をながめて、早く元気になりたいと子ども達は頑張っているが、夜になると家が恋しくなり、泣き出す子どもの声が聞こえる。 小児病棟に夜がくると、急患の子どもが運びこまれ、処置室へ走る看護師の足音だけが響く。 そんなことが繰りかえされ朝を迎える。 子ども達の顔がほころぶのは食事だった。 しかし、その日の朝から4年生の正美が沈んだ顔になった。正美のお膳にはクラッカーが1箱あるだけだった。「検査の結果だったのかな。」正美はうなだれた。厳しい食事制限が子ども達の重い課題だった。研一も和歌子も自分の食事の箸をとめて正美を励ました。お姉さんのようなユキ子もベッドから半分起きあがると「普通の生活がしたいね。」と言い慰めた。 その時、病室の入口から「もうすぐですよ、頑張って。」と声をかけたのは、和歌子の母親で喜代子だった。喜代子は、毎朝、仕事へ行く前に病院へ寄って、和歌子の顔を見てから出かけていた。喜代子は新入りの裕太を見ると、「裕太くんはいいよ。学校へ行っていないからね。」とため息をついた。子どもが普通の生活へ復帰することの大変さを喜代子はもらし、気を取り直したように「夕方来るからね」と笑顔で仕事へ出かけた。 一方、正美の機嫌が治らなかった。病棟の10時は、勉強の自習時間にあてられ、研一も和歌子も学習帳を開いているが、正美のベッドは無人。勉強の自習時間はまずいない。 亜希が裕太をつれ廊下を歩いていると、正美は窓にしがみつくように外を見ていた。 そして、その日の昼食も正美はクラッカーが数枚だった。我慢の限界がきれたように「もう、クラッカーばかりイヤダ!」と、壁にクラッカーを投げつけ泣くように部屋を出て行った。 主治医の牧田先生は腕組みをしてカルテをながめていた。どうしようもない空気が病室に漂った。次号へつづく 来月も宜しくお願いします。 追伸 子育てサポート・リーダー研修が開かれます。行ってきます〜♪
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