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先日塔ノ峰の現場で、親方が山仕事を始めたばかりの、若かりし頃のお話をしてくれました。 枝打ちをする親方。 親方は東北出身。 農家の長男ですが20代の頃は水道屋に勤めたり、横浜の日産に出稼ぎに行ったりしていたそうです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30才の時、決心して山仕事に入った。 嫁の父親が親方をしていたからね。 娘婿がすぐ辞めたらみっともないと思って、歯を食いしばって頑張ったよ。 最初の仕事は山火事現場の「地ごしらえ」で、立っている木はみんな焼け焦げて、葉っぱが付いていないの。 それを刈り払い機で「受け」入れて、「追い口」入れて、カッポーン、カッポーンと倒すんだ。 横に倒して所々に杭打って積んで、植林のための空間をつくるんだ。 凍った急斜面で歩くのだけでも大変だった。 周りはその道のプロで、凄い奴ばかりだったから、務まるかどうか本当に自信無かった。 身体もそんなに強くなかったから。 最初の一日は、おっかなびっくり。 あぁ1時間たった。2時間たった。半日たった。1日たったと、時間ばかり気になった。 3日たち1週間たちするけど、毎日が本当に長かった。 ある日嫁が「カシキ」になって山に来た。 「カシキ」っていうのは賄い婦の事。 皆と仕事している俺を見て言ったんだ。 「ずっと見てたけど、お父さんが一番下手くそだった。」 がっくりきたよ・・・。 そこの現場には松の木もあった。 松は杉檜と違って枝が張っているから、倒すと何処に行くか分からないんだ。 たまたま切った木がゴローン、ゴローン、ゴローンと思わぬ方に転がって行って、仲間を直撃しそうになった。 あっ! とんでもない事しちゃった! と思った瞬間、その松が石にぶっかって、ポーンとその人の頭の上を飛んで行ったんだ。 も〜、本当にホッとしたよ。その人を殺さずに済んで・・・。 それで山では上下で作業をしちゃいけないんだと、身をもって知った。 その人は、機械を使っていると音が聞こえないから、頭の上を松が飛んで行った事は今だに知らない。 言えなかった・・・。 こうして1年山仕事を続けられた時には、本当に自信がついたね。 山仕事って言うのは誰にでも出来るってもんじゃない。 よっぽどの覚悟がなければできないんだ。 自分がそれほど根性があるなんて思ったこともないし、周りにもいつ辞めるかと思われていたよ。 でも水道屋を辞めた時は道具を全て処分して、決して戻れない所に自分を追い込んだ。 だからできたんだ。 (「背水の陣」ですね。)
背水の陣、まさにそうだった・・・・。 |
てんこ盛り良一の良一的山仕事
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いささか時季外れですが、むんむんする夏の草刈りのお話です。 草刈りは山仕事の中で最も過酷です。 今はなかなかまとまった面積の草刈りは少なくなりましたが、一昔前は死にそうな程だったとか・・・。 良一さんは超草刈り名人。小田原山盛の会会長で、山仕事30年の本職のきこりさんです。。 刈り払い機の鋸刃を研ぐ。切れる刃は仕事がはかどります。 問(野良こねこ);いつも涼しい顔をしていますが暑くないんですか? 答(てんこもり良一);あついよー。でも冬もだめ、夏もだめじゃなんだから、片方だけでもと思って涼しそうにしているの。 問;夏バテの経験は? 答;あるよー。秋田弁で言う「トッケトケー」となってくる。 翻訳すると「超むかつくー」ていう感じ。腹がむかつくんだよ。 くらくらなんて生易しいもんじゃなくて、貧血みたいに油汗が出て来て、立って歩けなくなる。這い這いしたくなる。山でそうなるの。熱中症だね。 1〜2回なってからは、危なくなる前に休むようになったけど。木の大きな隣の林に行くの。涼しい風が吹くから。 問;夏の暑さ対策は? 答;昼寝がやっぱり一番だね。 問;他には? 答;無いね。寝るのに一番良いのは特製のハンモックなの。折りたたみのスノコを作ってね、木に吊るすの。気持ち良く寝るにはやっぱりこだわりがあるんだー。 問;蜂に刺されても死なない自信がありますか。 答;ある。死ぬもんならとっくに死んでいるはず。何度刺されたか分らない。もしかしたらこれは幽霊かも…。 問;小田原の暑さを一言で表現したら? 答;気持ち良い暑さだな。 やっぱり小田原は穏やかだよ。小田原の人が良いからそう思うのかも。 そこんとこ大きく書いておいて、本当だよ。 (平成17年 てんこもり通信第11号より) 山仕事体験交流会で草刈りの指導。 戦後から昭和40年代は造林ブームで材木も高値でしたから、林業はとても良かったようです。 一転今は輸入材や生活様式の変化で国産材は低迷、新植地も少なく、林業関係者は夏は仕事日照り・・。 でも冬は休む暇もないくらい、枝うち間伐が集中しています。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 師走・・・。 年の瀬の区切りがあるため、何かと気忙しくなってきました。 野良こねこもやらねばならぬことが目白押し。 腱鞘炎もだいぶ良くなり、仕事量も増えてきました。
ターボをかけてもブログの楽しみはお預けの日が・・・。 |
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今日は山の作業道つくりのお話です。 良一さんは径路づくりもお手の物、小田原山盛の会会長で、山仕事30年の本職のきこりさんです。。 Q;(野良こねこ) 今までに何本の経路を開きましたか? A;(てんこ盛り良一) 山を始めてかれこれ30年になるけど、道作りは小田原に来てからで12本くらいかな。 道作りは面白いよー。監督には「汗かかないで登れる道」って言われるし、皆が歩き易い道作りたくて。 Q; 先日も明星ヶ岳直下に作られましたが、ご苦労の程は? A; 面白いから苦労とは思わないけど、ルート探すのも大変だし、笹薮や、岩があったり、木の大きな所は根っこ切ると、風が吹いた時倒れるからね。橋や階段、土留めも間伐材で造るしね。 Q; 今回の道作りの難易度をA・B・C(楽・中・難)で言ったら? A; やっぱりCの方じゃないか。皆が喜びそうな広葉樹のところや岩場が見どころかな。 Q; 高村光太郎の「道程」、「僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる…」はお好きですか? A; 大好きだよー。道作りだけでなく、いつもいつも思い浮かべているよ。 余り人のやらない事を開拓したいと思ってるからね。 「牛はのろのろ歩く…」っていう詩もよく思い出すよ。 仕事のはかがいかない時や、仲間を無事山から帰す事を思っている時。 で、何か間違った時は、相田みつをの「人間だもの」になるの。 自分の都合のいいように出来てるんだな。 野良こねこ; なかなか詩人ですねー。ありがとうございました。 (てんこ盛り通信第12号より抜粋 平成17年11月) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『道程』 高村光太郎
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る ああ、自然よ 父よ 僕を一人立ちにさせた広大な父よ 僕から目を離さないで守る事をせよ 常に父の気魄を僕に充たせよ この遠い道程のため この遠い道程のため 高村光太郎の『道程』や『千恵子抄』は私も青春時代愛読書でした。
『道程』は高村光太郎の31才頃の作品です。 若き日、芸術に邁進している様子があらわれていますね。 千恵子さんは同じ芸術家同士の結婚で辛かっただろうな〜、と想像します。 精神病を病んでから始めた切り紙絵で、やっと表現の自由を獲得したのではないでしょか? |
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てんこ盛り良一さんは小田原山盛の会会長で、その道30年の本職のきこりさんです。 今回は材出しのお話を伺います。 Q(野良こねこ) 材出しや大径木の伐倒の際活躍するのがひっぱりだこ(:牽引機)ですが、良一さんとやっていていつも思うのは、次はあそこかなとセッティングしょうとすると、予想がはずれることが多いのですが、それは何故でしょう。 A(てんこ盛り良一) 材を出す山の場合はいつも出し方を考えてやっているから。ここはワイヤーが届かないからこっちにしょうとか、何処にどれ位あるか分かっているから、その中で一番効率の良い所にセットする訳で。一回のセットでどれだけ効率良く集められるかを考えるし、またそれを考えながら伐倒しているからね。 引っ張りダコ。 Q 全体を把握しているし、効率が違う訳ですね、失礼しました。(笑) ひっぱりだこを使う際工夫していることはありますか? A 伐倒の時、台付けワイヤーを4メートル位に長めにして、引っ張る力が足りなければすぐ滑車をダブルにできるようにしている。 Q 最近は県等から間伐材の材出しが奨励され補助金も出ているようですが。 A 補助金の対象は30年生までが枝打ち間伐、30年から35年生までが間伐、その上は伐出のみで1立米1万円の補助金。末口25センチの4メートル物で1立米が約4本。末口50センチで一本、10センチ(0.1×0.1×4mが一本の材積)で25本だ。それを伐採から積み出しまでだからね。合うもんじゃないよ。昨冬やった林業センターの丸棒の伐出なんか、土留め現場の箱根まで持ってって一本300円だったからな。ほとんどボランティアだね。
材出し用の林内作業車。
Q そういう小径木の場合は、実際ボランティアが技術を身につけてやったほうが良いかもしれませんね。A 出来る人が付いていればね。大径木の場合はとても無理だね。こんだけ労働してきた足だから木をかつげるんだよ。役所の指導でできるだけ出そうという機運はあるけど、採算が合うのは山主さんが自分で出すか、ボランティアかもしれないね。 今も50年生の伐出をやっているけど山主さんが熱心な人で時々一緒にやってくれているよ。 Q 山盛の会の場合はお陰さまで非常に出来る人が付いてますね。(笑) A でもそんな仕事ばっかり来たら商売上がったりだよ。勘弁してよ。(笑) Q でも問題はいかに大径木をたくさん買ってもらうかですね。 最近は間伐はするけどなかなか新植にはつながらなくて、夏の仕事がなくて、陰ながら心配しています。 A 外材の輸入を止めて国産材が回転し出せばいいんだけどね。 この仕事を始めた当初はまだ機械が出始めで、手刈りの単価で機械でやって、何倍も稼いだ時期がある。良い時もあれば悪い時もある、仕方ないね。業者を甘やかしてもよくないよ。(笑) Q 今は製材屋さんがどんどん無くなって、明るい話題があまりないですが、お陰で私のような者でも山にお邪魔するチャンスが出て来ました。(笑)山に入った時の楽しさ、気持ち良さは格別ですね。 A 俺の場合は機械が好きだから。 手で一時間で出来ることを、機械で十分でやるために、前日一日かけて機械を整備するような所があるからね。 Q このあいだは檜の材で選木用のテープ巻き機を作っていましたね。節のある木の使い方が天才的(笑)だと思いました。 A こういうのやっている時が一番幸せなの。 Q いろいろ手間暇かけて仕事してますね。 A 山主さんが想像するより、少しでも良い仕事をしたいと思っているからね。そんなんで随分ボランティアしているよ。ボランティアの為のボランティアもしているしね。(すみませんねえ。)(笑) (てんこ盛り通信第14号より抜粋 平成18年10月)
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てんこ盛り良一さんは小田原山盛の会会長で、経験約30年の本職のきこりさんです。 会報「てんこ盛り通信第15号」(平成18年11月)より製材のお話を掲載します。 これは天竜の原木市場の製材を待つ材木。 野良こねこ 以下Q) 何時も楽しそうに製材しておられますが、製材にはどんな楽しみがありますか? てんこ盛り良一 以下A) 造林の結果が分かるからね。間伐で玉切る時も、枝打った所で切って中がどうなっているか観察するの。 枝打ちの後何年で巻き込んでいるかとか、虫害は無いか、変色は無いかってね。 製材する時もね。 虫害っていうのは主にスギノアカネトラカミキリなんだけど、枯れ枝に卵を産み付け、幼虫が中に侵入して食い荒らすの。 だから枝が枯れる前に適期に枝打ちをすれば良いんだけど、こちらは仕事を出す側じゃないからね。 でも最近はせめてもと思って結果を報告したり、研究サンプルを提供したりしているよ。 Q どういう風に引くと良い材が取れるか、経験から学んだ事はありますか? A 芯に近づくにつれ悪い部分が出て来るから、むやみに小さく取らない方がいいね。 間伐材なら一杯一杯に取った方が良い物が取れるな。 製材は自分にとっては趣味みたいなもんだから、その道のプロにはかなわないけどね。 良い材を取る為を考えると、今までの育林で良かったと思う部分と、悪かったと思う部分があるよ。 今少し後悔しているのは、植え付けや下刈りが丁寧過ぎて過保護だったんじゃないかって事。 育ちが良過ぎてバク目になっちゃうからね。 Q やっぱり目の詰まった材が良い訳ですね。 A でも、使い道次第で合板なんかには柔らかい木が良いかも。適材適所で、一本の中で何種類か取る場合もあるな。 Q 良一さんはチェーンソーを固定して製材もしていますが、どの様に作ったんですか? A 今は無いけど昔カナダ産のアタッチメントがあって、それをチェーンソーに付けて、木に定規を打ち付けてその上を走らせて切るの。 もう手に入らなくなったから言うけど、これ面白いと思って買ったんだよ。 Q お陰で簡易製材機に入らない曲がり材の製材や、丸太の椅子の上下を水平に切ったり、とても役立っていますね。 最後にもし夢がかなうとしたら、どの様な機械でどの様な仕事をしますか? A 将来高性能の枝打ちロボットが出たら、のんびり山に座って一日何百本もだーっと打てたら良い山が出来るだろうね。 Q すると安く早く枝打ちができますね。 A 安くはだめ、たまには儲けさせてよ〜。(笑) |
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