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久々にゴルフの打ちっぱなしへ行った。ドライバーとアイアン2本を布製のキャディバッグに入れ、肩に担ぎチャリに飛び乗った。もちろん立ち漕ぎだ。ふらふら、キコキコ3キロ離れたエグザゴルフ練習場まで、チャリを漕ぐのだ。
プリペイドカードを入れ、ゴルフボール150個を出す。
二階席の真中の打席を確保する。軽く柔軟し、まずはサンドウェッジを握る。
スイングはリズムだ。
「チャー、シュー、メンッ!」と言いながらスイングする漫画もあったが、それは相当古い。
俺はそんなダサいリズムは恥ずかしくて言えない。男なら、
「フィリ、ピー、ナッ!」と力強く発するべきだろう。
「フィリ」と言いながら、ゆっくりとバックスイングを開始し
「ピー」の所で腰を切り返しダウンスイングをし、
「ナッ!」の所でインパクト。
放たれたボールは高く真っ直ぐ上がり80ヤードの所へ、
ポトリと落ちる。狙った場所へ行った時は気持ちがいい。
俺のナイスショットに二階で打ってたおっさん達が一斉に、
「フィリ、ピー、ナッ!」と叫びながら打ち出した。
ナイスショットの連発だった。
「ロシ、アン、パブッ!」と玉を打ってたおっさんはミスショット連発で、終いには手首と腰を痛めて帰っていった。
感心した一人のおっさんが、
「兄ちゃん、フィリピーナ言いながら打ったらスライスが治ったわ。」と話しかけてきた。
俺は汗を拭きながら、
「フィリピーナの掛け声は常識ですよ。あのウッズもここ一番のドライバー打つときは、フィリ、ピー、ナアア!って言ってますよ。」とミニ情報を言ってあげた。
「あのウッズも?」とおっさんは驚いた。そしてこれから一生フィリピーナと言い続けようと心に決めたようだ。
「この前、8年ぶりに優勝した加瀬秀樹もスランプ脱出する
きっかけはフィリピーナのリズムですよ。
女子プロでは、宮里藍ちゃんが有名ですね。もっとも最近は
イメージダウンにつながると、テレビ局から自粛要請があって
心の中で言ってるようです。」と俺は調子にのってペラペラと
ゴルフツアーの裏側を話した。
おっさんは「兄ちゃん、すごいな。なんでも知ってる。」
と俺を尊敬のまなざしで見るので困った。全部嘘だからだ。
途中で気がついた大半の人達は、普通に各自で黙々とボールを打ち出したのだが、このおっさんだけはいつまでも、
「フィリ、ピー、ナッ!」と叫んで打っている。
俺はいたたまれなくなり、その場を後にした。
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