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四日目の朝四時に目が覚めた。ベッドの上で覚醒と集中と朝勃ちが治まるのを静かに待つ。
着替えを済まし、左ポケットに300ドル入れ、右ポケットに700ドル入れる。
モー娘。パジャマにミキティおやすみハットをかぶって寝ている36才の尾上さんを起こさぬよう、
静かにドアを開けた。 すう〜っと息を吐く。長い廊下をすたすたとジューク更家ばりにウォーキング。
エレベーターでカシノの階へ降りる。
「ハウドゥユドゥ?」と乗合わしたアホでまぬけなアメリカ白人があいさつしてきた。
「アイファインサンキウ!」と俺は「3才から始める英語教室」に通ってるバカな子みたいに
めっちゃ大きな声で答えたら、白人はビックリしていた。
(こんな早朝からファンキーな奴だぜ・・・まったく・・黄色い猿が・・・)
エレベーターが開き、右側にある「靴磨き」のコーナーの黒人に手振りと笑顔であいさつを済まし、
正面を向くともう目の前にはカシノ。
スロットやビデオポーカーの機械がちかちかと光り、薄暗いホールを下から照らす。非日常空間の中に入る感じが俺の心臓を強く叩く。クラップスで盛り上がる卓をよそ目にBJ卓を目指す。
ミニバカラで熱くなってる中国人夫人。ポーカーでチップを積み上げているヤンキー。昼間はコールガールのチラシ配りで立ちっぱなしの移民系の男が必死にバカラの罫線を追っている。不機嫌そうに札を配る白人のおばちゃんディーラー。声を上げる黒人。席を立つ韓国系の男。混じりあった微笑ましい空間だ。
早朝の為か一卓まるまる開いていた。タイ人っぽいおやじが退屈そうにカードを羅紗の上に広げて立っていた。
一番左の席に座った。前日の早朝、尾上さんとやった時、ディーラーを負かすのに大切なこの席にアホなテキサス野郎が座っていた。ディーラーのフェースカードが6。ここは獲りたい所だ。幸い俺は先走ったのか6枚の五ドルチップを置いていた。
なおかつ俺のカードは4と7の11。躊躇なくダブルダウンという「一枚しかカードを引かない代わりに賭金を同じ量追加できる」作戦に出た。12枚の五ドルチップ。ささやかながら勝負所だった。
引いたカードは9。総計20。(勝てる、これは勝てる。)確信が宿った。後はテキサス野郎がステイと手を横に振れば、24枚の五ドルチップとなって俺の前に帰ってくるはずだった。
しかし、このテキサス野郎は何を思ったか13からヒットしやがる。1が来た。(もういい、ステイしろ!テキサス野郎!)俺の心配をよそに、テキサス野郎は少考しヒット。2が来て16。
(もういいやろ!ディーラーのフェースカードは6やぞ!)
この時俺は真剣に英語ができるようになりたい!っと思った。
「へいっ!てめーは目ん玉開いてんのかい!?親のカードは6だぜ!脳みそちゃんと動かせよ!」
これぐらいの事をぱっと言えるように。
テキサス野郎は単純にディーラーの数を上回りたかったのだろう。なおもヒット。また1を引いて17。満足気なテキサス野郎。 ディーラーがゆっくりカードをめくると7。6と7で13。テキサス野郎がステイしていれば1と2と1で17。俺の勝ちだった。
悪い予感がする。こんな予感はよく当たる。ディーラーが引くはずの無かったカードを引くと8だった。6と7と8で21。 しかし、負けた理由を他人のせいにしちゃいけないっという事を俺は高2からの競馬で学んでいた。そこに座った俺がアホだったのだ。だからこそ今日は俺が左端の席に座った。
タイ系ディーラーに200ドルを渡す。
「チェンジ、プリーズ」
25ドルチップ4枚、五ドルチップ20枚が俺の前にきた。
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