漫画家神原則夫のアホ日記

「西校ジャンバカ列伝かほりさん1,2巻]3巻が6月7日に出まっす。「ホテトル教師藤本正子エロせん」は面白いでっす。

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四日目の朝四時に目が覚めた。ベッドの上で覚醒と集中と朝勃ちが治まるのを静かに待つ。
着替えを済まし、左ポケットに300ドル入れ、右ポケットに700ドル入れる。

モー娘。パジャマにミキティおやすみハットをかぶって寝ている36才の尾上さんを起こさぬよう、
静かにドアを開けた。 すう〜っと息を吐く。長い廊下をすたすたとジューク更家ばりにウォーキング。
エレベーターでカシノの階へ降りる。

「ハウドゥユドゥ?」と乗合わしたアホでまぬけなアメリカ白人があいさつしてきた。
「アイファインサンキウ!」と俺は「3才から始める英語教室」に通ってるバカな子みたいに
めっちゃ大きな声で答えたら、白人はビックリしていた。
(こんな早朝からファンキーな奴だぜ・・・まったく・・黄色い猿が・・・)

エレベーターが開き、右側にある「靴磨き」のコーナーの黒人に手振りと笑顔であいさつを済まし、
正面を向くともう目の前にはカシノ。

スロットやビデオポーカーの機械がちかちかと光り、薄暗いホールを下から照らす。非日常空間の中に入る感じが俺の心臓を強く叩く。クラップスで盛り上がる卓をよそ目にBJ卓を目指す。

ミニバカラで熱くなってる中国人夫人。ポーカーでチップを積み上げているヤンキー。昼間はコールガールのチラシ配りで立ちっぱなしの移民系の男が必死にバカラの罫線を追っている。不機嫌そうに札を配る白人のおばちゃんディーラー。声を上げる黒人。席を立つ韓国系の男。混じりあった微笑ましい空間だ。

早朝の為か一卓まるまる開いていた。タイ人っぽいおやじが退屈そうにカードを羅紗の上に広げて立っていた。

一番左の席に座った。前日の早朝、尾上さんとやった時、ディーラーを負かすのに大切なこの席にアホなテキサス野郎が座っていた。ディーラーのフェースカードが6。ここは獲りたい所だ。幸い俺は先走ったのか6枚の五ドルチップを置いていた。

なおかつ俺のカードは4と7の11。躊躇なくダブルダウンという「一枚しかカードを引かない代わりに賭金を同じ量追加できる」作戦に出た。12枚の五ドルチップ。ささやかながら勝負所だった。

引いたカードは9。総計20。(勝てる、これは勝てる。)確信が宿った。後はテキサス野郎がステイと手を横に振れば、24枚の五ドルチップとなって俺の前に帰ってくるはずだった。

しかし、このテキサス野郎は何を思ったか13からヒットしやがる。1が来た。(もういい、ステイしろ!テキサス野郎!)俺の心配をよそに、テキサス野郎は少考しヒット。2が来て16。

(もういいやろ!ディーラーのフェースカードは6やぞ!)

この時俺は真剣に英語ができるようになりたい!っと思った。
「へいっ!てめーは目ん玉開いてんのかい!?親のカードは6だぜ!脳みそちゃんと動かせよ!」
これぐらいの事をぱっと言えるように。

テキサス野郎は単純にディーラーの数を上回りたかったのだろう。なおもヒット。また1を引いて17。満足気なテキサス野郎。 ディーラーがゆっくりカードをめくると7。6と7で13。テキサス野郎がステイしていれば1と2と1で17。俺の勝ちだった。

悪い予感がする。こんな予感はよく当たる。ディーラーが引くはずの無かったカードを引くと8だった。6と7と8で21。 しかし、負けた理由を他人のせいにしちゃいけないっという事を俺は高2からの競馬で学んでいた。そこに座った俺がアホだったのだ。だからこそ今日は俺が左端の席に座った。

タイ系ディーラーに200ドルを渡す。
「チェンジ、プリーズ」
25ドルチップ4枚、五ドルチップ20枚が俺の前にきた。

ブラックジャックにハマッた。「エロテロリスト、インリン先生よりハマッた〜」と言えば俺を知る人は「そんなにハマッたんかいな〜!?」と驚くだろう。

ただのトランプの数字の羅列だ。偶然の連続の中に必然のような目を出す。出来るだけ21に近づくように。ディーラーをバーストさすように。チップを「ここ!」と言う時に張る。一枚のカードの数字に一喜一憂するのだ。

が、ここで多少歪みが出た。俺と尾上さんに。結婚3年目の突然訪れた倦怠期のように。
俺がBJに傾倒すればする程。

連れパチのような難しさと言えばわかりやすいだろうか。俺と尾上さんの博打感の違い。
お金に対する感覚の違い。同じ卓でディーラーを前にし、チップが浮き沈みして行く中、
俺はその相違点をビーチク攻めされた時のように敏感に感じてしまった。

その相違点を簡単に言うと「ゲーミング」と「ギャンブリング」の違いだった。
尾上さんは「ゲーミング」として「BJ」を楽しんでいた。
そして観光や雰囲気、ショッピングなど含めて「ラスベガス」を愉しみに来ていたのだ。

俺は「ギャンブリング」したかった。「ラスベガス」にしても、ホテルの部屋とカシノの往復でよかった。1歩も外に出ずとも、空いた時間は読書をしていればそれで満足出来る。これは俺の異常な所なのだが、賭博以外の興味が非常に希薄なのだ。

昼間アウトレットモールにショッピングに行ったのだが、尾上さんは色んな物に興味を持ちつつ、
いろんな店を巡る。

俺は「フライングソーサ」というリモコンで、発砲スチロール製の円盤みたいなのを、円盤の中のファンが風を地面に送る事で空中に浮き上がるっちゅうおもちゃを29ドルで尾上さんが驚くぐらい速攻で買った後テンションは下がるばかりだった。

(もう店ええわ・・・早くBJしたいわ〜)と俺は思っていた。

しかし、実はこの問題は尾上さんが全面的に正しかった。それは後からわかる事なのだが、三日目が終わった時点で俺は「朝BJ勝負する時、一人で行きますわ」と宣言していた。

ラスベガスの華麗な夜景を見下ろすタワー型のストラトスフィアーホテルの一室で、
一匹の猿は明日のBJ勝負に備えて早めに就寝した。

窓からかなり低い位置にぽつんと浮かんだ下弦の月が見える。尾上さんはその時、
何を思っていたのだろうか。聞きたいような聞きたくないような・・・・

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