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ラスベガスでの恐怖体験を書くのを忘れていた。それは治安の悪いダウンタウン郊外に夜中、
無防備に黄色い猿二匹が突撃した事から始まった・・・わけでは無く、
「ビバ、ラスベガス」という無料ショーでの出来事だった。
尾上さんのマメな動きによって獲得された二枚のチケットを手に、「ビバ、ラスベガス」のダサダサショーのゆるい世界へ突撃した。 まずはレビューで殿方のハートを鷲掴みよ!ってな感じで一人のやせ型のおばはんが「ビバ〜ラ〜スベガスッ〜」と美声を披露しながら登場。その後ろに四人のおばはんがレオタードで登場。
ラインダンスのように足を上げるが年のせいか中途半端にしか上がらない。それにもめげず、頭の上で手をひらひらさせながらくるくる回るおばはん達。「イエ〜!!」っと喜んでるのは70ぐらいのよぼよぼのじじいだけ。
後ろになんのセットも置かず、ぶどう色のカーテンだけっちゅう、さすが無料ショーならではの切ない始まりだった。 おばはん達がわらわらと舞台袖に消えると、布施明似の甘いマスクのおっさんがスタンダップコメディーを披露するが、英語のわからん俺はチンプンカンプン。「イエ〜!」とやたら言ってる70ぐらいのじじいのリアクションの方が面白かった。
その後無視する犬とマジシャンの掛け合いがあり、いよいよ「ビッグジョン」という名の190センチぐらいの太った大男が登場した。専攻はこいつもスタンダップコメディーなのだが、こいつが恐ろしい事に「客いじり」をするのだ。
「ヘイ!何なら俺とヤルのか!」てな感じで叫びながら、自分の胸板をバンバン叩き客を威嚇したり、いい笑顔で緩急をつけながら笑いをとっていた。
「ビックジョン」はステージを降り、観客のじじいを執拗にいじめる。目についたシンガポール人もいじる。俺は震えていた。「ビックジョン」がこちらを睨む度に俺はテーブルの下に潜りたい気分になった。
(こっちくんなよ〜。あんなでかいおっさんにいじられたら・・・英語もわからんし〜、そや!こっち来たら尾上さんに全て任せて俺は逃げよ〜)
俺がそう思っていた時、尾上さんも(こっち来んなああ〜)とキリストに祈っていたそうだ。
かなりの時間「ビックジョン」は客席をうろつき、やがてステージに戻っていった。心底ホッとした。「なまはげ」に泣かされてる子供の気持ちがよくわかった。
最後全員集合し観客に挨拶しショーは終わった。俺と尾上さんも隣のじじいを見習って「イエ〜!」っと叫び両手を突き出した。その手の平は恐怖の汗でべっとりしていた。
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