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大切なもの全てと引き換えに、私だけが生き残った。
悲しみと、罪悪感と、一丁の小銃だけが、私のすべて。
【木菟】the snowy day
雪が降っていた。
空を見上げれば、無数の雪が風に吹かれながらふわりふわりと落ちてきて、それはまるで舞い上がった灰のようにも見えた。
実際、この街のあちらこちらでは雪の代わりに灰が降っている地域がある。攻撃を受けて火に包まれた建物から巻き上げられた、恐怖を纏った灰……家を失った人々が囲むドラム缶の中にわずかに残った炎が舞い上げる、儚い灰……
そして、戦闘で死亡した者たちを焼却処分したときに舞い上がる、悲しみと憎しみをまとった、吐き気のする青白い灰。
しかし今は、灰ではなく正真正銘の雪が降っていた。真っ白で、穢れることを知らない、ふんわりとした雪。それは、大気中の微粒子を核とした氷晶と呼ばれる氷の結晶が、融けずに地上に到達しただけの単なる自然現象であり、比較的寒い地域では冬になればどこでも見られる、ありふれた風景だというのに……
涙が零れた。
その水滴は、カサカサに乾いて冷たい頬を滑り落ち、血と泥で汚れた戦闘服の上に落ちて弾ける。
気づけば、しゃくりあげて泣くのを抑えることが出来なかった。もう涸れたと思っていた涙が、とめどなく溢れてくる。のどから嗚咽が漏れ、顔中が涙で濡れていく。
もうこの雪を、みんなで見ることは出来ないんだ…
そんな実感が急に湧いてきて――山内真緒(やまうち まお)は、ただひたすら泣いた。涙と一緒に、過去の記憶も思い出も、悲しみさえも押し流してしまおうとしているかのように。
建御雷神(たけみかづち)作戦によってつくられた、戦禍から解き放たれた人々でにぎわう解放区の片隅で、真緒は一人で泣いていた。
12月31日……今年最後の日。彼女だけが、生き残った。
今からおよそ1ヶ月前の12月5日深夜――秋田県男鹿半島、その先端に位置する男鹿原子力発電所で、メルトダウンが起きた。
翌日、世界は戦慄する。そのメルトダウンにより、その辺りに生息していたダンゴムシと呼ばれる小さな生き物の異常繁殖を引き起こしたのだ。
それがただの異常繁殖であれば、殺虫剤をまけば何とかなるだろう。大体、メルトダウンが起きたのは12月……普通のダンゴムシは、寒さに負けて死んでしまう。
だが、男鹿半島を一晩で埋め尽くしたそのダンゴムシは、突然変異種だった。2、3階建ての建物と同じくらいの背丈で、やけに硬い外殻で身を守り、長い触角を振り回して都市を破壊し人を殺しはじめた。もちろん、吹雪程度で凍えはしない。
いち早く行動したのは、軍だった。昨年発足した「国連軍制度」により、自衛隊は日本国軍と改称、その性格さえも即応力の高い軍隊的なものへと作り変えていた。軍はこの巨大化したダンゴムシを「ネオフィン」と名付け、全軍を挙げてこれを排除することを決定。
「対生物戦争」と銘打たれたこの戦争に、多くの犠牲と労力が注ぎ込まれることとなる。
だが、異常な数と強さを持つネオフィンの前に、日本軍は苦戦。ネオフィンは軍の即席で構築した防衛ラインを押し流すかのように一気に南下し、男鹿市はたった1日で陥落。ほぼ1週間で、ネオフィンは秋田市のほぼ全域を完全に支配下に置いた。
原子炉が2つフッ飛んだにもかかわらず、その地域一体では放射線が全くといっていいほど検知されないことや、メルトダウン後の大気の変化によってレーダーが急に使えたり使えなくなったりすること、上空の大気の組成がおかしくなり、航空機が一切飛行できないなど、怪奇現象とも言える環境の変化に、日本軍側は翻弄された、という側面もあった。
そこで力を発揮したのが、人型機動装甲兵器「WASP」である。
強力な火器、分厚い装甲、それらを積載してなお軽快な機動性……日本が世界に誇る人口筋肉研究とロボット産業の賜物といわれたこの兵器は、戦線に投入されて間もなく戦況を日本軍側に有利に進めていった。
それでも、日本軍の被害は大きかった。ネオフィンの激しい抵抗に晒されて、兵士も戦車もWASPも次々と失っていく日本軍がとった苦肉の策は――
志願兵を、募ることである。
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移植乙
ガチホモ死ぬシーンまだ?
2009/9/28(月) 午後 11:12 [ 牛乳原理主義 ]