農楽(NOUGAKU) B-SIDE

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1.取組背景とビジョン
言うまでもなく日本の農村の多くは中山間地域に位置する。然るに、乱暴を承知で言うならば、「大規模化、集約、合理的、効率的」をキーワードとした取り組みを邁進してきた結果、至る所で弊害が生じ、限界集落と言われるような地域を生み出すことになった。
このこと自体は功罪あり、一言では断じることはできないが、現状をみるならば今以上に変化を求められている時期はないのではないだろうか。
その変化の方向とは、「流域」である。ここでは、「食」と「農」を切り口に、これからの農業と中山間集落に訪れるであろう変化と方向性を考えてみたい。
 
1-1これからの農業と中山間集落に訪れる変化と問題意識
1)水源集落の衰退
中山間地域で活動を展開できている地域とできていない地域で大きな差が生じ、特に水源集落から衰退が激化する。
メディアを賑わしているのはごく一部の氷山の一角に過ぎない。活動をしない地域が悪いと言うは易し。だが、果たしてこうした地域を切り捨てることが日本にとってプラスとなるのだろうか。
2)顔の見えない関係の広がりと直売所間の連携
今後、全国あるいは世界規模で農業ビジネスを展開しなければならず、ターゲットが不特定となっていく。さらに常に競争する社会構造にあり、地域の不安定度が増す一方、疲弊していく負のスパイラルに落ち込む。また、商品の安全性は数値に置き換えられ、顔の見えない関係が広がっていく。
全てと言わずとも多くの地域が、この流れに乗ることができるだろうか。享受できるのは一部だけではないか。
一方、「対面」の関係である直売所が著しく増加している。地域の顔が見える、重要な拠点であり、今後もその重要性は変わらないが、「地域」という単位のみでは持続性を担保できない。結果として、ある一定の直売所同士の「連携」という流れが見えてくる。
3)環境と農業の関係性の増加
フードマイレージ、バーチャルウォーター、カーボンフットプリントなど環境と農業の関係性の認識は高まるが、現在の市場経済の流れの中では、具体的な「環境」が消費者には伝わらない。
国民が求めている環境に対する欲求は、「地球」のどこかで自分たちの行動が貢献しているだろうという不明確さ。
目に見えない、確かめることのできない蜃気楼を、今後も追い続けることができるだろうか。
 
1-2流域をベースとしたむらづくりへのパラダイムシフト
中山間地域の中でも、最も奥地に位置する水源集落は、現在、「全国水源の里連絡協議会」が設立されるなど、全国レベルでその重要性が認知され始めている。
その一方で、こうした動きは全国レベルでの問題、あるいは水源集落の横のつながりの強化であり、下流域の住民にとって「自分たちの生活圏域での問題」という意識には直結しないと思われる。
何が不足しているのか。
その答えとして、「流域」で地域を守るという考え方がある。例えば、国土形成計画による「定住自立圏」や、一ノ瀬友博先生が提案されている、定住自立圏を一歩進めた「流域居住圏」(※1)などがある。流域居住圏の考え方には大いに賛同したい。
ただ、その出発点はやはり「食」と「農」であるべきだと考えている。
 
今年1月から伊賀市の水源集落で取組んでいるプロジェクトがめざす最終ビジョンは、この集落だけの取組で終わることなく、淀川流域の水源地域と、その上〜下流域住民が相互に助け合う現代の新たな「結(ゆい)」を作り出すことにある。
これまで我々の行動規範となっていた、目に見えない「行政界」を単位にするのではなく、自然界によって決められた「流域」を単位として括り直すことは、次のような観点に基づいている。

①「水の世紀」と言われ、世界中で水がキーワードとなり、また環境問題が地球規模に広がりを見せる昨今、国土(里山・農地保全や治水等)や食料の自給も含めて、足元の環境を感じることのできる「流域」が主体となるべき。
②流域で取り組むことにより、一過性の消費者と生産者という関係から、「地域」と全国、「地域」と個人といった結びつきと異なる、より安定した顔の見える関係を作り出すことが可能。
③これまでの「日本のどこかの問題」という意識から、環境(農業・農村)を自分たちで守るという主体性の醸成につなげることが可能。

最終的には「流域住民」という意識付けを行い、淀川流域の各支流の水源地域がつながり、さらに下流域とともに食料や里地・里山、治水といった流域問題を解決していく組織へと深化し、組紐のごとく様々な個性が寄り合い、強固な関係を作り上げていくことをめざしている。
 
2.淀川流域ノラおこしプロジェクト
2-1ノラおこしプロジェクトによる3つのイノベーション
1)「地域」から「流域」へ
これまでの「個別の地域が頑張る」という流れでは、キーパーソンのいない多くの水源集落あるいは限界集落を維持していくことはできない。
そうした流れを変革していくために行政界を飛び越えた、積極的な「流域」での交流というつながりで支えていく。この流れの中から、「移住」へと展開する。
2)「競争」から「協争」へ
現在の市場経済の中で、それぞれの地域が競争原理に基づき切磋琢磨している一方、その波に乗れず疲弊していく地域もまた存在する。
ノラおこしプロジェクトでは、「流域」の水源集落と下流域をつなぐことにより、全国、あるいは世界との過当競争を抜け出し、自分たちの歩みの中で協力し合いながら競争する「協争」へと進化していく。
3)「不特定」から「特定」へ
直売所は、「顔の見える」関係づくりとして有効である。一方、地域ブランド化による大市場ベースでは、個々の顔や数値化した安全性をアピールすることができても双方向の関係性構築は容易ではない。
ノラおこしプロジェクトでは、双方の優れた点を取り入れ、より安定した「特定(消費者から地域のファンへ)」の関係性の強化を誘発する。
 
2-2流域でつながる持続可能な交流と移住の促進
1)単なる「消費者」から「参加者」への脱皮による流域住民づくり
「地域」から「流域」への変革を実現するにあたり、相互の交流機会の増大を図る。その実践活動の過程において、単なる「消費者」から「参加者」へと変化し、自分たちとつながりのある「流域住民」であることを意識づける。
2)水源地域の「個別」から「連携」による持続的なつながりづくり
今行っている取組をパイロット事業として位置づけ、実際の交流のあり方や流域ネットワークのあり方をとりまとめ、他の水源地域に対する情報発信を実施し、連携への道筋を模索していく。
3)「補助」体質からの「自立」体制づくり
現在の農村では、農業あるいは地域活動の点においても、「補助を受ける」ことが前提という体質にある。これを打破するには、流域住民とのつながり強化を促進し、自分たちも地域環境を守る一員として認識できるように生産物販売の一部をファンド(基金)として準備することで、人(交流・移住)・地域資源・資金等の循環を構築する。

イメージとしては、対面(現地での活動含む)と通販のどちらも不可欠となるが、流域としてつながりのある市場形成が必要だと考えている。
 
まだ、駆けだしたところではあるが、淀川流域を手始めにこうした取り組みが広がることを楽しみにしている。
 
(※1)一ノ瀬友博「農村イノベーション」2010.3、イマジン出版
 
 (伊藤 浩正)

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