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兼業のススメ

1.土に触れる機会
農村に移住して4年間が経過し、「農との関わり方」について感じることがある。
水田地帯なので、兼業農家として米づくりを行っている家は多いものの、家庭菜園をしているのは高齢者ばかり。3世代で暮らしている家では、日常的に土に触れている60歳未満の方を見かることは稀だ。

自家用の野菜づくりに携わることが、年寄りの道楽、あるいは手を出してはいけないアンタッチャブルな存在との認識にあるようである。

都市部における市民農園の利用者層もおおよそ50〜60歳代が多いことを踏まえると、農村部だけではなく全国的な傾向なのかもしれない。


つまり、定年までは仕事一筋、時間に余裕のできた定年後に農に関わるというスタイルが定着しているのだろう。

平均寿命が80歳を超えた現代にあって、土に触れるのは人生の1/4、終焉までの20年弱というのは少々寂しい現実。

関わりたいのに関われないのか、そもそも関わるのは定年後で十分と考えているのか、個々人の価値観なのだろうから、とやかくは言えない。

ただ、思うのは、生きもので自分で獲物を捕らなくても済むのは人間と人間に関わる生きものだけ。日がな一日、食べることだけを考えなくてもよくなった「システム」があるからこそ今がある。

その「システム」のおかげで働いていれば飢えることがない。食べることに対する要求は多岐に広がったけど、その分、本質的な食に対する危機管理能力は低下しているように思う。

これって幸せなことなのかな?と考えることが時折ある。



2.スペシャリスト?それともゼネラリスト?
さて、日本の農業、そして農村の衰退(と言って差し支えないと思うが)に歯止めをかけるべく、様々な施策が展開されている。特に農業に関しては今に至るまで多少のズレはあるかもしれないが、その方向性は「効率化」の一言で進んでいるように感じる。専業かつ大規模化による少数精鋭のスペシャリストを育成するという考え方。新規就農者への支援も当然専業。
一方で、農村に対しては、皆で守るという流れが主流だ。

この2つに矛盾を感じる。

農地の集約化・大規模化は図れても、農村のサイズ、暮らしそのものは変わらない(※1)。
集落環境を維持するには人が住み続け、週末に朝から晩まで草刈をしたり、山や川、水路や道路の管理はしなければならない。

そして、今の施策が発揮できる効果はせいぜい現状維持が精一杯で、農地の適正な利用が増えたり里山に手を入れるなど、現在抱えている問題の解決にはちっともなっていないことは数値が示している(※2)。

農業の衰退に歯止めをかけるべき進められているはずの施策が、農業と一体であるはずの農村の存続リスクを高めているように感じてならない。

集落全体で環境を維持し易い、専業でなくても「農業」に関わる意義、価値観を示さない限り、現状の流れが続くのではないか。



3.消極的存在から積極的存在へ
ここからようやく本題。
ポイントになるのは、兼業農家の存在だと思っている。

多くの問題を解決するには、兼業農家における農業・農村への消極的な関わりから積極的な関わりへと根本的なパラダイムシフトが必要なのではないか。

従来、兼業農家(旧分類の2種農家)と言えば、農地を荒らさないためにやっていると本人たちも思っているし、施策からも取り残された消極的な存在。
その反面、農家が少なくなったとは言え、まだまだ兼業農家が農地を支えている。

新規就農者を増やすことも大切だが、跡継ぎの意識を変えることに何故力を注がないのか不思議だ。

優良農地の耕作放棄地化を防ぐことではなく(※3)、すでに放棄地された農地の解消に力を入れ、農業離れを止めるのではなく新規就農を支援する。注ぐエネルギーを大きくしようとしているのではないかとさえ勘ぐりたくなる。


解決策は、「兼業のススメ」である。
兼業の存在を積極的に認めることである。

60歳を超えてから農に回帰するのを待つのではなく、この年齢層を極力下げる支援を行うのである。

4.体験の中に次へのステップがあるはず!
根本的に価値観を変える必要があるが、その価値観を変えるのは「体験」しかない、と思う。

体験したことのないことはハードルが高いが、簡単に言えば、農村版のキッザニアのようなもの。最近は大人版の「仕事旅行」というものもあるようだが、一度体験すれば改善・工夫することができる。

体験を人生のできるだけ早い段階で行える、つまり「体験を促す仕組み」を支援すればよい。

スタートは、農業で「もうける」を前提にするのではなく、農産物を「つくり、売る」を体験するまでを支援する。
まあ、コミュニティビジネス養成講座的なイメージかもしれない。

とにかく農に関わることを要件に、兼業への取り組みは個々人ではなく地域が主体となって行う。

多様な関わりを許容できる受け皿があれば参加を促し易いし、根底にあるのは「農村環境を守るための農業」という考え方だから。


結果として完全な新規就農を求めるよりも、こうしたアプローチから地域農業に就く道筋をつける方が垣根が低く、副次的に「生業」が生まれる可能性も高いのではないだろうか。



※1:「撤退の農村計画」の議論があるように、計画的に規模を縮小できれば別だがそうした手続きが進んでいないのが現実。
※2:耕作放棄地の復活は幾分進んでいる一方で、農地全体は減少が続いている。現在の農地を耕作放棄地にしない施策なら分かるが、耕作放棄地を復活させることに労力をつぎ込む現在の施策には疑問を感じるが、この議論は別の機会に。
※3:※2と同様、施策はあっても有効ではない。


(伊藤 浩正)

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