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京都、四条河原町。
ここは京都市の中でも、いや全京都の中でも、最も繁華な町といわれる。
タクシーやバスが幅広い車道を縦横無尽に走り回り、土産物屋・宝飾店・百貨店・飲食店などが、おしくら饅頭に歩道に軒を連ね、年中、修学旅行生がここらを走り回っていた。
三方を山に囲まれた盆地の京都市。
夏はどんよりと熱気がたまり、ここ四条河原町では、バスのディーゼル音や排気ガス、そしてタクシーのクラクションにパトカーのサイレン。
人ごみの喧騒が、連綿と続く軒下の歩道を覆いつくす。
その大通りを一歩中に入れば、キャバレーやスナックの小さな看板が数珠のようにつながった旗になり、寿司詰めの薄汚いビル群に貼り付いている。
午後5時。
西日の日差しが斜めに突き刺すこの街の縦貫道。
三条から四条に抜ける河原町通りを、延々と連なる車の渋滞が運転席のハンドルにもたれる僕をぐったりとさせていた。
すぐ目の前に小さな横断歩道があるが、青信号になっても一向に車が動き出す気配がない。
クーラーのつまみをひねってもほこりと温風しか出ず、ハンドル式のウィンドウを全開にしても、パチンコ店のジャンジャラ音や車の排気ガス、人の雑踏のやかましさしか入ってこない。
隣の祐子は、右足を反対方向に腕を組みながら外を眺めて黙っている。
渋滞が延々と続く自分の車の一番前は、四葉マークのヤサカタクシーであった。
その車の前にもヤサカのタクシーが止まっているが、それは三つ葉のマークである。
僕は、ベージュの細いハンドルにあごを乗せうつろな声で
「ラッキーやなあ・・・・・・。祐子見ろや、前の車・・・・・・」
そのまま彼女に横顔を向け
「今まで気づかんかった・・・・・・」
フロントガラスを通して、祐子はぎこちなく頬を緩める。
「へえ。・・・・・・私、初めて見た」
僕もフロントへ顔を戻しあごをハンドルへ乗せて笑う。
「俺も。・・・・・・このマークのタクシー。2000台のうち4台しかないんやろ?」
「そんだけしか、ないの? 」
思わず彼女はヘッドレストから頭を起こし、ダッシュボードに手をつき、四葉マークのタクシーのリアウィンドウの中を覗き込む。
「お客さん乗ってる? 」
「いや・・・・・・」
すると、祐子は後ろに放り投げていたバッグを取り出そうと助手席の後ろへ身体を曲げた。
僕は、慌てて首をおこし
「お、おまえどうすんねん? 」
僕のヘッドレストに左手を押さえつけ、運転席と助手席のせまい間に右腕を差し込みながら
「あの車に乗る」
僕は思わず笑い出し
「あかんあかんあかん! 何考えてんねや? ここ車道やど? 」
彼女はバッグを取り出し、ドアの取ってを左手で引っ張る。
「チャンスは逃さない!それにこの車より」
扉が開き
「ちょっと待て! 」
僕は、無謀な彼女の右腕を引っ張った。
「なにすんのよ! 」
突然の剣幕で祐子が半身を外に出そうともがきはじめた。
僕は緩んだシートベルトのまま、助手席へひきずられるように慌てる。
「大声出すな!みっともないやろ! 」
そして、ようやく彼女をシートへ引き戻した僕は歩道を眺めた後ほっとする。
「・・・・・・おまえだけ、ずるいわ」
祐子は、がくんと頭をレストにぶつけ
「あーあ来るんじゃなかった。なんでこんな暑い中、ヤキュウなんて見にいかないかんかったんやろ。また、竜ちゃんにだまされた」
僕は憤然と彼女をにらみ思わずハンドルの中央を叩いたから、軽い汽笛があがる。
驚き、焼けるように手を離した僕は、静かにたしなめた。
「またとちゃうやろ。それにおまえをだましたことなんかない。それより、正木をだますのはもうええ加減にせい。あいつ純情なんやから。祐子を紹介した俺の立場にもなってみろ」
祐子はふてくされヘッドレストに頭を何度もうちつけふくれる。
「あいつは俺にとっちゃ、おまえと同じくらいかけがえのない奴や。あいつは女性と付き合ったことがないんやから、少しでもちゃんとした付き合いをしたって欲しい・・・・・・」
すると、僕の声を聞いていたのかいないのか、祐子はヘッドレストから首を持ち上げ、ウィンドウごしに反対側車道の交差点で待つ人ごみを見つめる。
「あそこに侍が。ヨロイ着た侍が立ってる・・・・・・まーくんにそっくり」
僕はむかつきあごをつきあげ
「なあにがまーくんや!正木の話しとるのにちゃんと話聞け! 」
彼女のぼうっとなった横顔から、その左手をひらひらと僕のほうへ呼び
「違う違う。ほら、その正木君が。・・・・・・正木君、あそこに立ってる」
僕は、うんざり顔で祐子の視線の先へと送った。
「そんなはずないやろ、西京極からここまでどれくらい」
手前の赤信号の横断歩道で待つ人の中に、真っ赤なヨロイカブトを来た一人の侍が立っていた。
背中に旗指物を指し、確かにそのヨロイの顔は正木にそっくりであった。
僕は声を失い、その男の姿から目を離すことができなかった。
「野球終わって、ロケか? なんでや?」
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???うぅん???なんだろ?次はどんな展開が……にしても竜ちゃん。ずるいってアナタ……( ̄∀ ̄;)
[ 一有 ]
2006/10/11(水) 午前 9:47
カズブームさん♪この長い物語の大きな大きなポイントなんですが、全然説明しておりませんので、わかりずらく申し訳ございません。かの鎧男が 主人公らを過去の世界へと追いやる存在です。やっぱり四葉印のタクシーは一度は乗ってみたいです。私は現物を一度もおめにかかったことはございません。ああ、ほんとに乗りたい♪誰か乗った人いないかなあ。
2006/10/11(水) 午後 9:42
え〜っ? 戦国自衛隊ですか?? おっとっと、この展開びっくりしました! 四葉のタクシー、そんなのがあるのですねw 今度京都行ったら探してみます(^^*) 「ロケか?」なんて有り得ないですよね、この状況で。でもそう言いたくなる気持ちがすごくよく分かります。多分私でもそうツッこむだろーなぁ、と想像してしまいましたw
[ - ]
2006/10/12(木) 午後 10:23
かよすけさん♪戦国自衛隊は映画化が過去2本されてますね♪ドラマも今年の2月に反町君が主演で2週連続放映されてました。四葉のタクシーは京都によく来ていた私でもなかなかお目にかかれません。乗車したら幸運の名刺かなにか記念をくれるらしいです。この四条河原町で戦国時代の大ロケやったらおもしろいなあ♪って昔から思ってました。主人公だけではなくみなさんが乗りたくなるタクシーですね♪
2006/10/13(金) 午前 6:22
四葉印のタクシーは四台しかないのですか。それはお目にかかっただけで、有難いしろものですね(笑) えっ、ヨロイカブトですか。さすが京都って感じですけど、そうじゃない? 戦国自衛隊のノリ? かっ、角川ですね。薬師丸ひろ子の武者姿が印象にあります。最近では、福井晴敏が原作書いてた、あれですか。これまた、凄い展開になりそうです。
[ 藤中 ]
2006/12/6(水) 午前 7:45
藤中さん♪はい、そうらしいんです。実際も。私は大阪住まいで京都の大学に毎日通っていたのですが、それでもめったにお目にかかれない代物。幸運にも乗ったら、運転手さんから記念品をもらえるそうです。どんなものか忘れましたが。そうそうそう(笑)戦国自衛隊のノリ、おおあたりです。私は撮影所によくアルバイトしていましたが、この河原町はないみたいですね。「亡国のイージス」見ましたが、そうかも。凄い展開ご期待くださりませ。
2006/12/6(水) 午後 9:11
野球の試合中のまーくんがなぜ?車の中の「クーラーのつまみをひねってもほこりと温風しか出ず...」とか光景が目に浮かびます。で、勝ったのかなあ。丁度高校野球始まりましたね。
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2007/3/25(日) 午後 9:02
WJさん♪こんばんわ。そうなんです。何故、今西京極でマウンドに立っている正木が、場違いの場所でこれまたへんな格好をして立っている。そこが不思議なんですが、最終的に何故このようなことが起きているのか説明したいと思います。でも、なかなか進みません(笑。記事投稿に脱線が多すぎて(爆。はい、勝負は近々わかりますよ。おお、春の選抜ですね。 必死な球児の華麗な姿をTVで見ますが、最近は賭けの対象かも(爆。
2007/3/25(日) 午後 9:51
四葉印のタクシーはそれ程貴重なのですか。私にはよく分かりません。山田さん。無茶し過ぎですよ。気持ちは分からないでもないですが。この現在の世に鎧武者ですか。しかも正木さんに良く似た方。今後の展開が気になりますね。
[ - ]
2007/5/3(木) 午後 5:47
あーさん♪そうなんです。私はみかけたこともございません。だいぶ前にTVで特集をしていたのですが、ほんとこのタクシーに乗るのはラッキーの証らしいですね。わはは、確かに無茶かもしれません。現代に忽然と姿を現す鎧武者。果たして何を訴えているのか。考えてみるのもおもしろいのかもしれません。
2007/5/5(土) 午前 5:41
こんばんわ〜☆↑の方のコメントにもありがしたが、四葉のタクシーなんて、存在するのですね^^ぜひ、見つけて、乗ってみたいものです。ノベルワンデイさんは、背景を描くのが、すごく上手いと思いましたぁ♪祐子さんのイライラが伝わってきます。
侍がいきなり、見えるのぉ?さてさて、どんな展開が待ってるのでしょうか?楽しみです☆少しずつ、読ませていただきますね^^
[ HANAKO ]
2008/12/9(火) 午前 1:09
HANAKOさん♪うん、今もまだあるだろうね。乗車したら、幸福の乗車券くれるらしいですよ。ラッキーカードみたい。八坂タクシーの超ベテランの方が、運転しながらたいへん親切に色んな旧跡を説明してもらえるそうです。この四葉タクシーの運転手になることが、一種のステータスなんでしょうね。
え、、ほんとですか。ありがとうございます。もっと細かく描写していけど、必要最小限しか書く時間がなかったんでしょう、この時は(笑 自分でも侍登場させてますね。なんで登場させたのか、過去の記憶をたどりつつ。。ほんとにありがとね!超暇なときにでも覗いてやってくださいませ。
2008/12/10(水) 午後 7:42