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國際秩序と日本の改憲

安倍政權が改憲を目指してゐる事に對し、日本共産党やその他の左翼、或は「平和勢力」が反對の意見を表明してゐる。「安倍総理は日本を戦争ができる国にしようとしている」と云ふのだ。森友や加計の問題が絡んで、從來、自民党・安倍政權を支持してゐた多くの無黨派の人が自民党離れを起こしてゐるとの事。左翼のイメージ戰略がここにきて效力を發揮し始めてゐる。左翼諸氏にしてみれば滿足な事だらう。

だが、日本が「戦争ができる国」になる事の何が惡いのか。

私には、日本が「戦争ができる国」になるのはたいへん好ましい事のやうに思はれる。なぜなら、日本が「戦争ができる」やうになれば、日本は國際秩序の維持に貢獻できるやうになるからである。

改めて指摘するまでもなく、現代の地球に住む人類は、一つの國家の下に生きてゐるのではなく、多數の國家を作つて、國際社會を形成して、生活してゐる。國内の社會の秩序維持のためには警察と云ふ機關が存在し、法秩序を國民に強制してゐる。一方、國際社會の秩序維持のためには、統一された法秩序強制の機關は存在しない。
然るに、警察力によつて國民に法秩序を強制する國内法に對して、國際社會に參加する各國に法秩序を強制する國際法と云ふものが「ある」。ケルゼンによれば、法と云ふものは、違法行爲に對して制裁を課す、と云ふ事實を伴ふものである。

※ケルゼン『法と国家』(東京大学出版会)

ケルゼンは『法と国家』で國際法があり得るかと云ふ問題を論じて、國際法侵害の違法行爲に對する制裁のありやうについて檢討し、現實的に見て、戰爭に對しては戰爭で對抗するしかない、と指摘してゐる。「違法な戰爭」に對する「正しい戰爭」のありやなしやについては昔から議論になつてをり、現代の日本では「正しい戰爭なんてものは存在しない」と云ふのが社會的に「定説」化してゐるが、ケルゼンは結局、現代の國際社會が國際法の維持・實現の道具としての「正しい戰爭=正戰」を「認めてゐる」と述べてゐる。

今の時代、改めてケルゼンの議論は讀まれて良いものと思はれるので、閲覽された方々には同書を探し出してどうにかして讀んでいただきたいところだが、現在の國聯(國際聯合/UN)もケルゼンの言ふやうな「正戰」の考へ方を前提に安全保障體制を築いてゐるのであり、當然、アメリカもさうした考へ方に從つて國際社會の秩序維持のために動いてゐる。

中國は現在、南シナ海の大睦側から南方のはるか海上までの實效支配を目論み、「九段線」と稱するラインを設定してゐる。仲裁裁判所が「九段線」は無效だとの判決を下してゐるが、中國はその判決そのものを「違法かつ無效」と極附け、相變らず實效支配を續けてゐる。「国連海洋法条約は仲裁判決を強制執行する仕組みがない」(毎日新聞 2017年7月12日 https://mainichi.jp/articles/20170712/ddm/007/030/158000c 同志社大の坂元茂樹教授の指摘)

法の支配が國内法のみならず國際法にもあり得るか、と云ふのがケルゼンの論文でとりあげられた問題で、ケルゼンははつきり「正戦」を認めてゐるが、しかし今囘、國際社會の秩序を破つたのは、大國である中華人民共和國であつた。小國・力の弱い國が國際法の秩序を破つたのであれば、大國・多數の國が力で制裁を加へる事は容易である。が、中國と云ふ大きな國が、軍事力で、國際秩序を破つたのである。これに對してどのやうに制裁を課すべきかが問題になるが、どうにもやりやうがない。國際法の法秩序は破られたわけだ。
もちろん、斯うした事態――即ち、大國が實力を行使して國際法の秩序を破る事態――は想定されてをり、だからこそ國際法は法ではないと云ふ主張が強い説得力を持つてきた。

が、さうした「限界のある國際法」の下で、國際社會の秩序を維持していくには、やはり軍事力を用ゐる以外にない、と云ふのが現實なのである。現在は中國が軍事力で以て國際法破りをしてゐるが、これをアメリカは齒噛みしながら眺めてゐるのであり、齒噛みしてゐると言ふのは結局、苛立つてゐるのであつて、何かのきつかけがあればアメリカは中國相手でも「やる」のである。
さう云ふアメリカだからこそ、國際社會の秩序維持に、日本も力を貸せ、と言つてゐるのであつて、それゆゑ日本人が「憲法第九條」に固執して、平和主義の楯の後ろに隱れてゐる事は、齒痒い事でしかない。アメリカ人は「正戰」を信じてゐる國民であり、日本相手の戰爭も「正戰」であつたから戰つたのであつた。今その「正戰」で破つた相手國の日本が「正戰」の概念を否定してゐるのは、アメリカ人にとつては、憎むべき事であるとすら言つて良い。日本人平和主義者は無邪氣だから戰爭一般を否定してゐる「だけ」だと思つてゐるが、知らずしてアメリカ人を挑發してゐるのである。

自民党は昔から親米の立場をとり、アメリカべつたりの政策をとつてきた。改憲もまたアメリカからの要求に應へるものである。安倍政權は、私の見立てでは、さうしたアメリカ側からの要求にとことん應へる事を目指してをり、それによつて日本をアメリカから信頼される國にしようとしてゐる。
左翼が斯うした安倍政權のありやうに危機感を覺えてゐるのは、左翼がアメリカを「軍事大国」と見、アメリカを敵と看做してゐるからだ。反米的な左翼は、反米的な右翼とも結び附く。日本の社會の中に久しく存在する反米意識を背景に、安倍政權を「危險なファシスト」と極附け、レッテルを貼る戰術は、しかしそれだけでは效果を發揮しなかつた。そのためにマスコミやその他の活動家は連携して、森友やら加計やらの「スキャンダル」をでつち上げて、安倍總理下ろしの策動を進めたわけだ。

だが、たかだか學校程度の問題で以て、安倍政權を潰させるわけには行かない。日本を國際社會の秩序維持のために貢獻できる國にしようとしてゐる安倍政權を、さうさう安易に潰させてしまつては行けない。これで安倍政權が潰れて改憲がまた先延ばしされてしまつたら、それこそ日本國民の恥晒しである。


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