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太郎坊のそよ風
NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

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事務局には、いろいろなところから富士山測候所または富士山に関しての問い合わせが飛び込んで来る。「富士山測候所」を冠しているのだから、ネットの検索でも上位に現れるのだろう。しかし、ほとんどの場合事務局ではわからないため、各方面の専門家を紹介しお願いしている。昨年は、「富士山測候所からスカイツリーは見えるでしょうか」というスカイツリー開業特別番組を制作中のNHKからの問い合わせに富士山写真家の小岩井大輔さんをご紹介し、番組にも登場していただいた。

先日は富士宮市環境森林課の方から「富士山の生物の絶滅危惧についてご存知でしょうか。中学生からの質問に答えなければならないのですが」という電話があり、迷うことなく、ヤマネの研究で2011年の夏期観測に参加された杉山昌典さん(
筑波大学八ヶ岳演習林)をご紹介した。

杉山さんはさらに動物研究学者の今泉忠明先生(日本動物科学研究所所長)をご紹介してくださった。環境森林課にその後確認したところ、件の中学生にはその今泉先生が直接電話でお話しされ、中学校の担任の先生からもお礼の電話があった」と感謝された。

こんなことがあって、杉山さんと久し振りにメールを交わし、近況を伺うことができた。
最近は
「富士山頂のヤマネ」以外に九州のヤマネに縁ができ、ヤマネのお宿(杉山さんが開発した塩ビ管巣箱)の実証試験として、佐賀・福岡県境にある脊振山系においてヤマネ生息調査に取り組んでおられるという。

まだまだ調査不足なヤマネですが、ヤマネ関係の知識・知見を多くのヤマネに関心がある皆様と共有し意見交換や交流することが私に出来るヤマネ保護活動と思い、富士山頂のヤマネ以外にも脊振山地においてのヤマネ巣箱調査やヤマネ生息分布図の作成にも取組んで行きたいと考えております。」


そして、「2011年の富士山頂のヤマネが余りにも準備不足で成果を収められなかったので、センサーカメラ等の機材手配や研究補助金等の外部資金を獲得できるように充電中であり、また準備万端フル充電できた暁には、研究計画書をしたため研究申請したい」とのうれしいしらせもいただいた。


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佐賀・福岡県境にある脊振山系におけるヤマネの生息調査。杉山さんが開発された塩ビ管巣箱「ヤマネのお宿」をとりつけている。ここは福岡県のレッドリスト改訂に伴い背振山の福岡県側でヤマネの巣箱調査が行われていた場所で、2009年から2011年までの巣箱調査では確認に至らず、絶滅危惧IB類とされた。


以下に杉山さんから届いたメールをご紹介させていただきました
イメージ 4

「富士山の動物の絶滅危機についての中学生の質問に回答したいのですが・・・」という問い合わせの際に富士宮市環境森林課の方にお伝えしましたのは、野生動物の調査はまだ十分に調査研究されていない現状で、「絶滅の危機」「人が動物を守らなければならない」等の少し人間の傲りの感がある表現が先行して広まっている様に思えます。
既にご存知かと思われますが環境省レッドリスト(*)でヤマネが準絶滅危惧種NTからランク外に変わり、レッドリストから削除されました。(*)
環境省報道発表 第4次レッドリストの公表について(平成24年8月28日)

イメージ 1
ヤマネは準絶滅危惧種NT(現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種)から新レッドリストで削除されたことを示しています。

ヤマネがランク外になった理由としましては、「近年発表された全国的な生息確認調査より一部出現しない地域はあるが、概ね本州・九州・四国・隠岐にほぼ連続的に分布していることが明らかにされており、準絶滅危惧種(NT)には相当しないと判断されたため」だそうです。「近年発表された全国的な生息確認調査…?」の事を知りたくて環境省自然環境局野生生物課に問い合わせたところ、都府県のレッドデータと私の作成しているヤマネ分布図を参考にしたとのことでした。

私がヤマネ発見者の方の情報を取りまとめて生息分布図として公表していることは、過去にヤマネが生息していた地域で目撃情報が出てこない場合にどのような環境の変化があったのか等、調査研究のきっかけになると考え、またヤマネの生息域にお住まいの皆さんにヤマネの存在を身近に感じて頂く事がヤマネの誤捕殺等の減少につながると考え取りまとめて公表しているものです。まだまだデータ数が少ないのですが、レッドリストの編纂委員の先生が「概ね本州・九州・四国・隠岐にほぼ連続的に分布していることが明らかにされ」と判断されたことに不意を突かれた驚きがありました。

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環境省がレッドリスト判断の参考にしたというヤマネ生息分布の杉山さんのサイト

確かに昨今、無料ブログやSNS・ツイッター・フェイスブック等で、個人が広く情報発信を簡単にできる時代になり、偶然的に発見されたヤマネの目撃情報が2006年より急増しております。
1年の約半分は冬眠で姿を隠し、活動期でも夜行性で主に樹上にいる小さなヤマネは目に付きにくい動物(珍獣)の代表的な存在でもありますが、インターネットの画像検索を行いますと沢山の可愛らしいヤマネの写真が出てきます。意外とヤマネが目撃されているようで、登山される方や山小屋の管理者、別荘所有者・管理者、農林業関係者・里山近くに住む方の「普通にヤマネはいる」とのお言葉を裏付ける状況がわかりました。

しかしながら今回の環境省レッドリストからランク外になったヤマネは、地域個体群の生息状況を十分に把握・考慮していない感があります。
実際に森林総合研究所九州支所の安田先生は、九州のヤマネについて危惧されています。そうした意味で、佐賀・福岡県境にある脊振山系のヤマネ生息確認調査の機会に恵まれましたことは幸いですし、夢のようなことでもあります。

観測機器や通信機器の発達により、これまでよくわからなかった野生動物の分布・生態が少しづつ解明され始め、その分野に興味を持たれた方がインターネットやテレビ番組で最新の知識・知見を共有できる時代とも思えます。その中で、「富士山頂のヤマネ」は村上(祐資)さんが偶然にもセンセーショナルな写真撮影に成功され、一部の研究者の知見に留まっていた事実が「何故ここにヤマネ」と誰もが不思議に思え興味を抱くテーマとなったと思っており、必ずや調査体制を整えて再び「富士山頂のヤマネ」調査に取り組みたいと意を決しているところであります。
それでは今後ともどうぞよろしくお願いします。(杉山昌典)


哺乳類科学 Vol. 51 (2011) No. 2 P 287-296
絶滅のおそれのある九州のヤマネ
―過去の生息記録からみた分布と生態および保全上の課題―

安田 雅俊1), 坂田 拓司2) 3)
1) 森林総合研究所九州支所森林動物研究グループ 2) 熊本市立千原台高等学校 3) 熊本野生生物研究会
公開日 2012/01/21

九州において絶滅のおそれのあるヤマネGlirulus japonicusについて,過去の生息記録に基づき,分布や生態の特徴と保全上の課題を検討した.62件の文献資料からヤマネの生息記録54件が得られ,8ヵ所の主要な生息地が認められた.九州のヤマネは,低標高の照葉樹林から高標高の落葉広葉樹林まで垂直的に幅広く生息すること,少なくとも秋から冬にかけて3--5頭を出産すること,11月下旬から4月下旬に冬眠することが明らかとなった.英彦山地,九重山,多良岳および肝属山地の個体群については,地理的にも遺伝的にも孤立している可能性が高く,保全には特に配慮する必要がある.県境に位置する孤立個体群の保全には隣県が連携して取り組むことが不可欠である.



(参考)
杉山さんのブログ「ヤマネ生息調査」
富士山頂のミステリー 2011/7/30(土)



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