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太郎坊のそよ風
NPO法人 富士山測候所を活用する会 スタッフブログ

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講義風景

12月1日(土)東京都市大学・環境情報学部主催の市民講座「環境と情報のフロンティア」が横浜市内のキャンパスで開催さました。全5回の第4回目となった今回の市民講座では、土器屋理事が「富士山から見た環境問題」講義。

前半管理運営を中心に、後半には二酸化炭素の連続測定(国環研・野村先生)、オキシダント(首都大東京・加藤先生)、雲と霧(早稲田大・大河内先生)、雷と大気電気(東京学芸大・鴨川先生)など、それぞれの研究者からお借りしたスライドで説明。一般学生を含め70名近の方が熱心に受講しました。

「山頂の電源
問題はどうすればよいか」
「荷物はどうやって運ぶか」
「二酸化炭素が温室効果に本当に効いているのか」
「富士山の空気塊の図の作り方(後方流跡線についてその原理)」
・・・など質問がでて活発な講義になりました。

世話人の咸泳植(Ham Young Sik)先生が「富士山でのご活動や様々な研究の取り組みなど学生を含めて参加の皆様に興味を持ってもらうのに十分だったと思います」と言っておられましたが、このようにして富士山測候所を活用する会の活動を理解していただくことができたのは有意義でした。

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会場は70名近い聴講者で埋まりました。


事務局には、いろいろなところから富士山測候所または富士山に関しての問い合わせが飛び込んで来る。「富士山測候所」を冠しているのだから、ネットの検索でも上位に現れるのだろう。しかし、ほとんどの場合事務局ではわからないため、各方面の専門家を紹介しお願いしている。昨年は、「富士山測候所からスカイツリーは見えるでしょうか」というスカイツリー開業特別番組を制作中のNHKからの問い合わせに富士山写真家の小岩井大輔さんをご紹介し、番組にも登場していただいた。

先日は富士宮市環境森林課の方から「富士山の生物の絶滅危惧についてご存知でしょうか。中学生からの質問に答えなければならないのですが」という電話があり、迷うことなく、ヤマネの研究で2011年の夏期観測に参加された杉山昌典さん(
筑波大学八ヶ岳演習林)をご紹介した。

杉山さんはさらに動物研究学者の今泉忠明先生(日本動物科学研究所所長)をご紹介してくださった。環境森林課にその後確認したところ、件の中学生にはその今泉先生が直接電話でお話しされ、中学校の担任の先生からもお礼の電話があった」と感謝された。

こんなことがあって、杉山さんと久し振りにメールを交わし、近況を伺うことができた。
最近は
「富士山頂のヤマネ」以外に九州のヤマネに縁ができ、ヤマネのお宿(杉山さんが開発した塩ビ管巣箱)の実証試験として、佐賀・福岡県境にある脊振山系においてヤマネ生息調査に取り組んでおられるという。

まだまだ調査不足なヤマネですが、ヤマネ関係の知識・知見を多くのヤマネに関心がある皆様と共有し意見交換や交流することが私に出来るヤマネ保護活動と思い、富士山頂のヤマネ以外にも脊振山地においてのヤマネ巣箱調査やヤマネ生息分布図の作成にも取組んで行きたいと考えております。」


そして、「2011年の富士山頂のヤマネが余りにも準備不足で成果を収められなかったので、センサーカメラ等の機材手配や研究補助金等の外部資金を獲得できるように充電中であり、また準備万端フル充電できた暁には、研究計画書をしたため研究申請したい」とのうれしいしらせもいただいた。


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佐賀・福岡県境にある脊振山系におけるヤマネの生息調査。杉山さんが開発された塩ビ管巣箱「ヤマネのお宿」をとりつけている。ここは福岡県のレッドリスト改訂に伴い背振山の福岡県側でヤマネの巣箱調査が行われていた場所で、2009年から2011年までの巣箱調査では確認に至らず、絶滅危惧IB類とされた。


以下に杉山さんから届いたメールをご紹介させていただきました
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「富士山の動物の絶滅危機についての中学生の質問に回答したいのですが・・・」という問い合わせの際に富士宮市環境森林課の方にお伝えしましたのは、野生動物の調査はまだ十分に調査研究されていない現状で、「絶滅の危機」「人が動物を守らなければならない」等の少し人間の傲りの感がある表現が先行して広まっている様に思えます。
既にご存知かと思われますが環境省レッドリスト(*)でヤマネが準絶滅危惧種NTからランク外に変わり、レッドリストから削除されました。(*)
環境省報道発表 第4次レッドリストの公表について(平成24年8月28日)

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ヤマネは準絶滅危惧種NT(現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種)から新レッドリストで削除されたことを示しています。

ヤマネがランク外になった理由としましては、「近年発表された全国的な生息確認調査より一部出現しない地域はあるが、概ね本州・九州・四国・隠岐にほぼ連続的に分布していることが明らかにされており、準絶滅危惧種(NT)には相当しないと判断されたため」だそうです。「近年発表された全国的な生息確認調査…?」の事を知りたくて環境省自然環境局野生生物課に問い合わせたところ、都府県のレッドデータと私の作成しているヤマネ分布図を参考にしたとのことでした。

私がヤマネ発見者の方の情報を取りまとめて生息分布図として公表していることは、過去にヤマネが生息していた地域で目撃情報が出てこない場合にどのような環境の変化があったのか等、調査研究のきっかけになると考え、またヤマネの生息域にお住まいの皆さんにヤマネの存在を身近に感じて頂く事がヤマネの誤捕殺等の減少につながると考え取りまとめて公表しているものです。まだまだデータ数が少ないのですが、レッドリストの編纂委員の先生が「概ね本州・九州・四国・隠岐にほぼ連続的に分布していることが明らかにされ」と判断されたことに不意を突かれた驚きがありました。

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環境省がレッドリスト判断の参考にしたというヤマネ生息分布の杉山さんのサイト

確かに昨今、無料ブログやSNS・ツイッター・フェイスブック等で、個人が広く情報発信を簡単にできる時代になり、偶然的に発見されたヤマネの目撃情報が2006年より急増しております。
1年の約半分は冬眠で姿を隠し、活動期でも夜行性で主に樹上にいる小さなヤマネは目に付きにくい動物(珍獣)の代表的な存在でもありますが、インターネットの画像検索を行いますと沢山の可愛らしいヤマネの写真が出てきます。意外とヤマネが目撃されているようで、登山される方や山小屋の管理者、別荘所有者・管理者、農林業関係者・里山近くに住む方の「普通にヤマネはいる」とのお言葉を裏付ける状況がわかりました。

しかしながら今回の環境省レッドリストからランク外になったヤマネは、地域個体群の生息状況を十分に把握・考慮していない感があります。
実際に森林総合研究所九州支所の安田先生は、九州のヤマネについて危惧されています。そうした意味で、佐賀・福岡県境にある脊振山系のヤマネ生息確認調査の機会に恵まれましたことは幸いですし、夢のようなことでもあります。

観測機器や通信機器の発達により、これまでよくわからなかった野生動物の分布・生態が少しづつ解明され始め、その分野に興味を持たれた方がインターネットやテレビ番組で最新の知識・知見を共有できる時代とも思えます。その中で、「富士山頂のヤマネ」は村上(祐資)さんが偶然にもセンセーショナルな写真撮影に成功され、一部の研究者の知見に留まっていた事実が「何故ここにヤマネ」と誰もが不思議に思え興味を抱くテーマとなったと思っており、必ずや調査体制を整えて再び「富士山頂のヤマネ」調査に取り組みたいと意を決しているところであります。
それでは今後ともどうぞよろしくお願いします。(杉山昌典)


哺乳類科学 Vol. 51 (2011) No. 2 P 287-296
絶滅のおそれのある九州のヤマネ
―過去の生息記録からみた分布と生態および保全上の課題―

安田 雅俊1), 坂田 拓司2) 3)
1) 森林総合研究所九州支所森林動物研究グループ 2) 熊本市立千原台高等学校 3) 熊本野生生物研究会
公開日 2012/01/21

九州において絶滅のおそれのあるヤマネGlirulus japonicusについて,過去の生息記録に基づき,分布や生態の特徴と保全上の課題を検討した.62件の文献資料からヤマネの生息記録54件が得られ,8ヵ所の主要な生息地が認められた.九州のヤマネは,低標高の照葉樹林から高標高の落葉広葉樹林まで垂直的に幅広く生息すること,少なくとも秋から冬にかけて3--5頭を出産すること,11月下旬から4月下旬に冬眠することが明らかとなった.英彦山地,九重山,多良岳および肝属山地の個体群については,地理的にも遺伝的にも孤立している可能性が高く,保全には特に配慮する必要がある.県境に位置する孤立個体群の保全には隣県が連携して取り組むことが不可欠である.



(参考)
杉山さんのブログ「ヤマネ生息調査」
富士山頂のミステリー 2011/7/30(土)



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12時前にはサイエンスアゴラ会場の日本科学未来館を後にして、ゆりかもめ新橋駅、JR田町駅から慶応大学三田キャンパスへ移動時間は同じ港区なので30分もかからない。

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13時からここで開催された酸性雨問題研究会シンポジウムで、「よみがえる富士山測候所2005-2012 ― NPOによる新しい研究施設の試み」をテーマに、富士山測候所における各分野の最新の研究成果を発表があった。

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酸性雨問題研究会は、地球規模の環境問題となってきた酸性雨に関して総合的な研究・検討を行い、一般市民を含めた研究者間の交流・情報交換を行うことを目的として、1993年8月に設立された日本化学会の研究組織。会では酸性雨問題の理解を深めるため、毎回テーマを決めて酸性雨問題研究会シンポジウムを開催している。

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土器屋先生(NPO)の「NPOによる設営の経緯と現状」から始まり、佐々木先生(東海大)、加藤先生(首都大東京)、緒方先生(早稲田大)、上田先生(東京理科大)、野村先生(国環研)、それに最後鴨川先生(東京学芸大)それぞれの専門の研究について発表された。

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酸性雨問題研究会のメンバーのほか、東京農工大の学生も多数聴講。発表ごとに活発に質疑応答が交わされとても充実していた。発表時間に余裕があったことで一般向けにかなりかみくだいてじっくり話してくれたことや、発表者と聴講者の距離が短い会場の構成も話しやすい雰囲気を助けていたと思う。

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富士山測候所に関する学会発表は年々増加傾向にあり、同じ日に都内の別々の場所で富士山測候所の観測成果が発表されたもあながち偶然とも言えない。こうして研究成果の露出機会を増やしていくことが、富士山測候所研究の場としての有用性を訴えるうえでは何より大事なことであろ



今日から2日間、お台場では日本科学未来館などでサイエンスアゴラ2012が開催。サイエンスを楽しむ実験教室やサイエンスショー、ワークショップやシンポジウムなどさまざまなイベントが目白押し。
富士山測候所の夏期観測に参加された気象実験クラブも、「富士山頂実験室」のテーマで昨年に引き続き出展し、富士山頂で行った実験や観測、および関連する実験などを展示・実演していた。


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準備中の気象実験クラブのブース。気象予報士の方々は代表の佐藤元さんを中心にして、まとまりの良さにはいつも感心させられる。

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ブースには富士山頂で水を沸騰させている動画を正面に大きく投影し目を引く。富士山で観測した気温などのデータの速報グラフも展示されている。佐藤元さんの話では「1月の成果報告会までにはさらに分析して発表する予定」とのことで楽しみだ。


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会場は全部は回りきれないほど多数のブースが出展。注目したのは、汚水をろ過して飲料水にする浄水器のデモ。自転車をこぐエネルギーで4本のろ過器を通してきれいな水にする実演をしていた。世界で活躍しているそうだ。富士山頂でも水の確保は大きな問題と話したら、来年の夏には使っていない装置を貸しますよ、とのこと。

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12時前にはサイエンスアゴラ会場の日本科学未来館を後にして、ゆりかもめ新橋駅、JR田町駅から慶応大学三田キャンパスへ移動時間は同じ港区なので30分もかからない。
氏 名: 坂本強 Sakamoto Tsuyoshi
所 属: 日本スペースガード協会 Japan Spaceguard Association

共同研究者:

浦川聖太郎 Urakawa Seitarou 日本スペースガード協会 Japan Spaceguard Association  
吉川  真 Yoshikawa Makoto   宇宙航空研究開発機構 Japan Aerospace Exploration Agency
   
研究テーマ:  富士山測候所のスカイコンディション調査
Night sky at Mt. Fuji Weather Station

研究結果:
富士山山頂は高度3700mと高所にあるので、地球大気による星の光の吸収や散乱は低いと期待される。しかし、夜間の晴天率は未だ不明であり、天体観測として適したサイトであるか否か不明であった。本研究では、約1ヶ月間全天の雲を監視するカメラを山頂に設置し、夜間の晴天率を調査した。プレリミナリーな結果であるが、天頂付近の晴天率は30%程度であることがわかった。これは同時期の日本国内の天文台における典型的な晴天率よりも高い。 


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写真 1号庁舎屋根に取り付けたスカイモニタ(左)とシステム構成(右)

英語表記:
Mt. Fuji has an altitude of 3776 meters, and at its top the scattering and absorption by the earth atmosphere is expected to be low. However, the investigation on the sky condition has not yet been performed. We present the sky condition of the top of Mt. Fuji, based on the all-sky camera that monitors the clouds. The number of the photometric nights at the zenith are 30% in the nights with available datasets, although it is the preliminary result.

研究成果の公表:
「太陽系小天体への再挑戦」研究会で発表する。来年度以降の結果と合わせて論文にまとめたい。

(参考)プロジェクト計画:
富士山測候所のスカイコンディション調査
天体(恒星や銀河)の構造やこれらの形成進化、さらに天文現象を理解するためには、様々な波長域においていろいろな観測量の時間変化を追跡することが基本である。近年、サイト調査が実施され、マウナケア(ハワイ)やアタカマ(チリ)など、低地では閉じられた大気の窓での観測でさえ可能な場所が発見されてきた。しかし、これらのサイトは特定の地域に集中しており、特定の天体を連続的に観測することは不可能である。特に、ハワイの次に夜がくるのは日本であるにもかかわらず、日本では観測困難な波長域がある。富士山山頂は超高所であるので、低湿度かつ青い光の散乱の少ない地域である。そこで我々は本年度、富士山山頂のサイト調査を行い、現場を見て可視赤外線域での観測を実施するための準備を行いたい。



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